第33話:親子対決!ルクセブルが父から学ぶものは…
アルクセレゼ侯爵、グラナスは自身の対戦に備えて準備運動をしていた。そこにルクセブルが歩み寄り声をかけた。
「父上、次は僕たちですね。」
運動を続けながらグラナスは答える。
「ああ。お前がどれだけ強くなったか見てみたかったからな。楽しみだ。」
「はい、お手合わせお願いします。」
そうして準備運動を終えて皆が待つ対戦場へと向かった。
2人の姿を見て全員がざわめきだした。
「団長~~~!」
「小侯爵様!」
2人とも団員には慕われているのだからその声は物凄いものとなった。
〝パン!パン!〟
「静かにっ!皆、静かにしろ!」
手を叩いて皆に掛け声をしたのはこの場を仕切るテルだ。
「あまり大きな音を出すと魔物たちに気付かれてしまうかもしれない!必要最低限で頼む!」
〝シーン……〟
すぐにその場は静まった。
「コホン!それでは今より団長とルクセブル様の対戦を行う。両者準備はよいですか?」
「ああ。」
2人ともそう返事して頷く。
「では、始めっ!」
ニコルだとこのタイミングで切り込んでいた。しかしルクセブルはそうはしない。
ジリジリと相手を見て隙を探す。
が、団長でもあり、ポルモア王国四柱の剣と言われてる父だ、そうそう隙などあるわけがない。
〝やっぱり父上は手強いな。隙が全くない。〟
「ルクセブルよ、いつまでも間合いを取ろうとしても無駄だぞ?」
「ええ、どうやらそのようですね父上。参ります!」
そう返事をしてルクセブルは父グラナスに立ち向かった!
「はあーっ!!」
父に向けた剣…。父は簡単に身体を逸らした。
「なるほど、剣を交わすまでもない、と、言うことですね、父上!?」
「戦闘時に無駄に動き回る方が体力を奪われるからな。交わせるものは交わすさ。」
「まったく!余裕あり過ぎですよ?!」
「ハハハ…!」
そうしてもう一度父に向かって剣を振りかざす。
「お前の中で私を父だと認識している間は私に一太刀も出来やしないぞ?」
グラナスのその言葉にルクセブルは〝ハッ〟とした。
〝そうだ。父上の言う通りで、僕が相手を父と思っている限りどうしても遠慮や感情が付き纏う。そんな感情を持ったままで勝てるわけがない!〟
流石ルクセブルだ。父の一言でその事に気付いた。しかし頭で理解したとしても心はそうはいかない。
相手を憎しみでもしない限り、父は父なのだ。
「仰る通りです、父上。しかし、そう簡単に貴方を父以外には思えない…!」
「ルクセブルよ、魔物には幻覚を操ったり、時には乗り移ったりするような奴もいる。そんな時、私にソイツが乗り移ったらお前はどうするのだ?倒さねばお前が殺られるぞ?それにお前の大事な仲間たちに被害が及ぶんだ。その事を今後も考えて心の訓練も必要だな。」
父グラナスの言う事は的確だった。
「………………。」
ルクセブルは自身の剣を置いた。
周りは突然の事でザワついている….。
「父上。今の僕は貴方に挑むまでの資格がない。もっと父上の言うように心の訓練もして強くなったら再び貴方に挑みたい!」
そう言ってルクセブルは父をしっかりと見つめ、その瞳からは意思の硬さが感じられた。
「ふむ、よかろう。自ら負けを認めた。それも自身の実力を把握して故の行動。潔いな、またお前と手合わせ出来る日を楽しみにしているぞ。」
「ありがとうございます!父上!」
「わ──────!」
パチパチパチ………パチパチパチ…………!!
周りから拍手が沸き起こった!
潔く身を引いたルクセブルの漢気にも皆は感心したのだ。そしていつかまた再びこの2人の対戦を心待ちに…。
「よし!皆の者!決勝戦はこのワシと団長になったぞ!今日はここまでにして各自で体力作りを実施だ!明日ワシらの決勝戦を行おうではないか!」
トーナメントを仕切るテルがそう言った。そして団長であるグラナスに振り向いて
「それでよろしいでしょうか?団長。」
ニマっと笑いながらテルが問う。
「………。」
〝俺に聞くまでもなかろうに〟そう思いながら〝ふむ〟とグラナスは頷いた。
「団長と副団長の試合が見れるなんてな!」
「そうだ、何年ぶりだ?」
「俺、こっそり時々ふたりで手合わせしてるのを知ってるぜ?」
「なんだとー?!この、羨ましいヤツめ!!」
あちこちで明日の決勝戦を楽しみにしている声が聞こえくる。
その様子を見ていたルクセブル。
そんなルクセブルに声を掛ける人物がいた。
「ルクセブル殿。」
明らかにニコルではない。声も話しかけ方もニコルにはない上品さがある。
ルクセブルが声の方に視線をやるとそこにはスアン騎士団長がいた。
「スアン殿…、」
「よくあの場で降りることを決断されましたね。」
「騎士の立場としてはあってはならい行動でしたよね。」
「いえ。英断だったと思います。今の貴方では勝てません。私もあのお方には勝てないでしょう。無意味な戦いを挑むよりも修行を、訓練を行う方が今は重要だと私も考えます。」
「そうか、貴殿がそう言ってくれると僕も安心するよ。」
「ふっ、貴方はきっと実際の場でも英断を下せる判断力の持ち主だと思います。私は未来永劫貴方とは剣を交えたくない。」
「僕もあなた方と剣を交えたくないな。僕らはもう仲間だからね。」
「ふっ。そうですね。ですが、貴方は人が良すぎる。簡単に信頼しないことだ。いつ、誰に裏切られるかわからない。少しは用心した方がいい。」
ルクセブルはスアンの顔をまじまじと見て
「それは…、ご自身の経験からですか?」
スアンもルクセブルの方に一瞬視線を向けて
「ああ。情けないがな。」
そう言ってその場を去ってしまった。
ルクセブルはその場に立ち止まったまま、スアンの言った言葉を考えていた。
〝ご自身の経験からですか?〟〝ああ。情けないがな。〟
つまり、自分を警戒しろという意味ではなく経験から親切に教えてくれたのだろう。それだけスアンは自身に警戒心を解いているということだ。
もちろん、ルクセブルは、共に戦い、寝食を共にしているのだから既に仲間意識は芽生えていたが、よくよく考えてみると今は平和協定を結んでいるから互いにそれで良いが、いつか開戦したら敵同士になるのだ。
改めてルクセブルはこの二国間がこのまま平和であるように願った。
そして自身も己の心を鍛えるためにはどうしたら良いが考えることにした。
そして剣の師匠であるテルの元に向かったのだ。
「師匠!お話があります!」
「んぁ?!おおー、ルク様。ワシに何用か?」
「寛いでるところ、申し訳ない。さっきの父上との対戦で学んだ事で相談があります。」
「わかった。ちょっと場所を移動しよう。この洞窟の奥に泉があるのをご存知か?」
ルクセブルはコクンと頷いた。
「今の時間帯なら誰も居ないだろうし、ワシらがその方面に向かえば誰も尋ねてこんだろう。」
「感謝します。」
そう言ってペコリとお辞儀をした。
そして2人は洞窟の奥の泉まで歩いて行った。
ご覧下さりありがとうございます。
ルクセブルと父グラナスの親子対決です。
ニコルとは違う戦い方を披露するルクセブルでした。
このお話は完結済みですので今後もご覧下さると嬉しいです。




