第23話:初めての魔物との遭遇!
今、アレクサンドラの目の前にはものすごく高貴な人物が2人いる。そのうち1人はとてもじゃないが、本来中々会って話をしたり出来ない人物だ。
その2人に今、ジリジリと迫られている。
「さて、アレクサンドラ嬢。私の目は誤魔化せないわよ?あなた自身、ご存知よね?」
「………、」
〝ですよね、レルロア様………。〟
心の中の方が正直だ。
「あなたが言いにくいのなら私から言いましょう。」
「……!!」
「あの二人に侮辱されましたのね?恐らく、あの2人はあなたと共にパーティーを企画する気はないでしょう。そうではなくて?」
「………っ!!」
「どうやら、そのようね。」
はぁ~~~、とレルロアは深くため息をついた。
マナーはよく出来ているアレクサンドラ。しかし、その上をいく人物からしたらその些細な仕草や動きで感情を読み取られてしまうのだ。
「王妃命令をも背く行為、許せませんね。なのに何故2人を庇ったのですか?」
「申し訳ございません、レルロア様。」
「あなたを責めているのではありません。彼女たちのこと、呆れております。侯爵令嬢でありながら…!」
「私も王妃様命令を口にしたのですが聞き入れてもらえず困っておりました。」
「やはり…。実はあなたがの声で〝3人でと王妃殿下の命令で〟と言ってたのを聞いてしまったのよ。聞き間違いかと思ったのだけれど………。困ったわね。」
〝あぁ…やはりレルロア様を困らせてしまったわ。〟
アレクサンドラは自分のせいで困らせてしまったと思った。が、レルロアは…。
「私が助言してしまえば早いのですが、そうすればあなたは更にあの2人に目をつけられるでしょう…。」
〝……!レルロア様は私を心配して…。〟
「…?なあに?そんなに驚かないで?あなただって私を思ってあの場はあの2人に合わせたのでしょ?」
「流石はレルロア様。全てお見通しでしたとは…。」
ふっ…、とレルロアは笑った。
「あの2人のことです。王妃殿下には〝アレクサンドラは自分たちの言うことを聞かず手伝わなかった〟とでも言うつもりなのでしょう。」
「そんな嘘までついて?」
「さあ?その可能性がない訳ではないわよ?どうするの?」
「それは…、困りましたわ。」
「そこは安心して。私がこの件を見ておりましたし、今話した事は私達だけの話ではなくてよ?…ね?ダナジー。」
「ハハハ!流石レルロア!しっかり僕まで巻き込んでいるね!」
「もっ…、申し訳ございません!殿下!!」
アレクサンドラはその時に王太子ダナジーもいた事を思い出した。そして慌てて巻き込んでいた事実に気付き、深くお辞儀をして謝罪した。
「ああ、いいよ、アレクサンドラ嬢。これは僕らの問題だから気にしないで!」
「で…、ですが…!!」
「ふふっ、そうでしてよ?私とダナジーの問題ですわ。」
「実はね、ルクセブルから君のことを頼まれてるからね、僕らは。安心して、いざとなったらしっかり僕らで守ってあげるよ。」
「………!!まあ、ルクセブル様から…。ありがとうございます、殿下。レルロア様。」
ダナジーとレルロアは2人で互いに視線を交わしながら目の前の弱い立場のアレクサンドラを守るという力強い共通認識を持った。
◆ ◆ ◆
その頃、ルクセブルたち一行はナダラ山脈に入っていた。ナダラ山脈はナダルテ王国の南側にあり、その山脈の更に南側には海がある。ナダルテ王国は東西に長く広いがナダル山脈付近には村も街もない。魔物が出るから山や何も無い平地しかないのだ。魔物たちが出てくる範囲外の安全地帯まで人々は住めないのである。
その安全地帯(トガ村領)ギリギリに捜索隊の物資を置いておき、捜索隊はそれぞれ最低限しか持たず、あとは山脈の中で獲物を確保してそれで過ごさねばならない。場所によっては鹿や猪が出るし清流もあるので魚を獲る事も可能だ。
山脈に詳しい王室騎士団が先頭に立ち、所々で食を確保して進んでいくのである。
ひたすら勾配を歩き続ける捜索隊。最初は体力も削がれるし、いつ魔物に出会すかと不安と緊張で更に体力が減っていたが、普段から身体を鍛えている騎士団員にとっては2週間も経てば流石に慣れてきたというもの。
狩も皆上手くなっていた。使った矢は回収だ。補給出来ないので武器は貴重だ。
暇を見つけては武器を作る者までいた。
ガサガサッ!
全員身構えた!!
「……!!」
「キツネか…。」
アルクレゼ騎士団はホッとするが
「皆、構えよ!キツネの居る所に魔物が居ることが多いのだ!」
ナダルテ王国騎士団長、スアンがそう大声で告げた。
次の瞬間!!
ギエエエ……!! という魔物の声がした!
近い!!
皆の緊張が一気に走る!!
バッ!!!!!!
魔物が木々の間から現れた!!
「ガガールだ!」
体は黒い毛で覆われている。目が3つあってこちらを睨んでいる。
「3体だ!!
だが小さい!!
こちらは総勢60人!これなら勝てる!!」
1体につき、20人で対応する。
まずは3体を引き離さなければならない。
事前計画通りに捜索隊は3方向へそれぞれ別れることにした。
魔物を誘導する為にわざと少人数で魔物の目の前に出る。
ナダルテ王室騎士団はそれぞれ3部隊に別れた。万一の時に道案内役がなくなるのを避ける為だ。もちろん、アルクレゼ騎士団も3部隊に別れた。
アルクレゼ侯爵トーマス(団長)
シタラン子爵テル(副団長)
シタラン子爵子息ニコル(副団長補佐官)
の3部隊だ。
ルクセブルはテルの部隊に所属している。こちらも万一の時にアルクレゼの後継者と当主を分けて行動すべきだと判断したからだ。
皆、それぞれ〝またあとで会おう、無事で!〟とでも言うかのように視線を一瞬合わして頷いてから魔物に向かった。
上手く魔物が誘導されてそれぞれに別れていく。
今回現れたのは魔物の中でも小物で、体も小さければ動きも鈍い、更に攻撃力も低いので初めて面する者にとっては安心して取りかかれるのだった。しかもこちらは1体につき20人体制だ。
小物とはいえ、油断は禁物!隙を見せると仲間を呼ばれるから早く退治しなければならない。
テルが魔物に斬りかかる!続いて他の騎士も反対側から斬りかかる!トドメは王国騎士団副団長のラットだ。こうして魔物はあっという間に退治され、その場に倒れた!!
ルクセブルは出番なくただ見ているしかなかった。
〝こいつらが集団で来るとこうはいかないよな、流石に…。〟
至って冷静に状況を見ていた。
そしてさっきの場所へと戻ると父トーマスの部隊は既に戻っていた。
〝流石父上、早いな〟
そうこうしているうちにニコルの部隊も戻ってきた。
「皆無事で良かった。」
「任せて下さい!」ニコルはニカッと笑った。
「お前はまた!調子にのるでない!」
そうだ。テルはニコルの父親なのだ。皆の前で息子が羽目を外さないか心配でならないのだ。
「父さん、皆の前だよ、勘弁して!」
皆がドッと笑いだした。
この親子は2人して場を和ませる天然のようだ。
「ああ、今回は皆無事だったし、相手も少なくて小物だったから良かったが、いつもこうとは限らない。皆、油断しないでくれ。全員で家族の元に帰る!これが目標だ!」
「おー!!」
団長でもあるトーマスが皆にそう声を掛けると皆もそれに応えた。
〝とても団結力のある騎士団だ。〟
ナダルテ王国騎士団の騎士団長スアンはそう思った。
ご覧下さりありがとうございます。
今回はルクセブル達は魔物に遭遇します。
もっと戦うシーンを濃く書くべきなのですが、残虐なシーンは私自身苦手であるため、ソフトに表現しております。
本格的にそういうシーンを好まれる方には少し物足りないと思います。
また、主人公はあくまでルクセブルとアレクサンドラなので、舞台は双方のいる場所となります。視点の切り替えに気を付けて書いたつもりです。
初めてのライトノベルですが完結しておりますので今後もご覧下さると嬉しいです。




