第22話:ナダルテ王国到着とアレクサンドラに忍び寄る企み
ようやくナタルデ王国の王都に着いたルクセブルたち一行。すぐに王城の謁見の間に通された。
「良くぞ参られた。ご協力感謝します。今夜はひとまず休んで明日の朝、魔物退治の為の作戦会議と致しましょう。食事の席もご用意しております。どうぞごゆっくりおくつろぎ下さい。」
「ありがとうございます。お言葉に甘えて今夜はゆっくりさせて頂きます。」
グラナスはナタルデ国王にそう答えた。
一行は丁寧におもてなしを受ける。宮廷侍女たちはルクセブルを見て皆みとれていた。
「おいルク!皆お前ばかり見てるぞ?俺の方がいい男なのになっ」
小声でニコルが話かけてきた。
「そうかい?僕は気にならないよ。アレンしか興味無い。」
「は~~~~~~っ!お前はっ!」
ふたりのやり取りを聞いて周りはルクセブルに〝ヒューヒュー〟と囃し立てていた。
「だ~~~~~~っ!皆も一緒になってんじゃねぇよぉ!」
「ニコル、顔が良くてもお前には品がない!」
誰が横槍を入れてきた。
ドッと笑いが沸き起こる!
「お前らなぁ~~~!」
口調は怒ってはいるが楽しそうだ。
そう、ニコルはメンバーの中の盛り上げ役なのだ。わざと横柄に振舞っては笑いをとる。彼らしいモチベーションのあげ方だ。
緊張が良い意味で解けていく。
「ニコル様と仰るのですか?私はニコル様を推しますよ?ふふ。」
そっと傍にいた侍女がそう言った。
「おお~~~!わかってるじゃん!」
侍女はぺこりと頭を下げて退出した。
「物好きもいるもんだ。」などという言葉が飛び交った。
宴は良い雰囲気の中終了した。各自割り当てられた部屋へと行く。
〝もう秋だからか、肌寒いな。〟ルクセブルは窓から外を眺めてそう呟いた。
今夜は満月だ。月を眺めながら思った。
〝アレンと離れてたったの1日しか経っていないというのに、もう何日も会ってないかのようだ。もう会いたくてたまらないよ、アレン。あなたの声が聞きたい。笑顔が見たい、何よりも抱きしめて沢山キスしたい。〟
アレクサンドラとの距離が近くなった分、離れるとその寂しさや愛しさが大きくなって感じるのだった。
しばらくは窓際で「アレン、アレン」と呟いていたのだった。
コンコンコン! と、ノックされた。
「はい、まだ起きてます。」
ルクセブルは返事をした。ドアを開けて入ってきたのは父グラナスだった。
「父上…?」
「んー、まあ、その……。」
何やら歯切れが悪い。どうしたのかと思っていたら
「この部屋の隣なんだな、私の部屋は。コホン。」
「………?」
コホン!
「…………!!」
そう、ルクセブルがアレンの名前を連呼していたのを聞いてしまったのだ。それに気付いたルクセブルは顔が一瞬で真っ赤になったのだった。
「私もあの子を気に入ってるんだ。絶対に無事共に戻ろう!」
「はい、父上。」
そうしてその夜は少し父と話をしてから眠ったのでした。
◆ ◆ ◆
翌朝、朝食後にアルクレゼ侯爵家騎士団の主要メンバーと王室騎士団の主要メンバーとで魔物退治の為の打ち合わせが始まった。
まず、今出没している魔物の居場所、被害状況、今後現れて被害が出そうな予測地域などの情報共有、そしてボスを捕獲するための作戦会議だ。
ボスさえ捕獲すれば魔物たちは大人しく魔物の里に帰っていくことも考えられる。
最悪の場合、ボスを倒し、統制が取れなくなった魔物たちを一気に退治しなくてはならない。
魔物はボスを倒すとその瞬間にボすぐに新しいボスが生まれるため、1番リスクが低いのは捕獲して操ることだ。
ボスの額に魔石を埋め込めば操る事が可能となる。その為に捕獲が1番なのだ。
その為にはまずボスの居場所を探さねばならない。ボスは他の魔物たちといつも一生懸命にいる訳ではなく離れた場所でいることもよくあるのだ。
そのボスの捜索隊に6割、出没時対応と被害地救済に4割に分担された。
ボス発見後に伝令にて被害地救済組から半分がボス捕獲に向かう。
アルクレゼ侯爵家騎士団と王室騎士団の一部が捜索隊として王都から離れた海に近いナダラ山脈に向かった。ここは魔物の住処だ。
「皆の者、これよりナダラ山脈に突入する!ここは魔物の住処だから今以上に慎重に行動するように!ボスを見つけても倒さずにまずは報告するように!」
「はいっ!」
「そしてボス以外の魔物は退治してかまわない。慎重に!」
「はいっ!」
皆に緊張が走る………。
もちろん、ルクセブルも生唾を飲んだ。
山脈に入ると勾配が厳しく、騎士団の体力が削がれていく。こんな状況で集団の魔物に出くわすとまともに戦えないかもしれない。
なだらかな土地に出るまで魔物が出ないように祈りながら進行していく。
◆ ◆ ◆
その頃、ポルモア王国ではトカチナ国からの貴賓持て成し兼マナー交流会の為に3人の令嬢が王宮の王妃応接間に呼び出されていた。
ナハム・トロファ侯爵令嬢
ミルマ・ノトロフ侯爵令嬢
アレクサンドラ・フレシアテ伯爵令嬢
の3人だ。
それぞれ呼び出された理由は知らされていない。王妃宮で顔を合わせた途端、2人の侯爵令嬢はアレクサンドラに対して敵意をむき出しにしていた。
2人の侯爵令嬢に付き添っていた侯爵夫人はたちは別室にて待機するようにと部屋に案内された。そうして3人で待っていると王妃が侍女を連れて部屋にやって来た。
「急に呼び出してごめんなさいね。」
「とんでもない事でございます、王妃殿下。」
3人がそれぞれ王妃に向かってカーテシーを行う。
「ふむ。皆、楽にすると良いわ。」
「恐れ入ります。」
〝ステファニが絶賛するだけあってあの娘が1番自然で美しいカーテシーだ。〟
王妃はそう思った。
「さて、先に本題から話そう。」
3人は何事かとドキドキしながら王妃の話を待つ。
「東方隣国のトカチナ国は知っておるな。」
「はい、シタレン公爵家管轄領の東隣の国ですね。」
意気揚々とナハムが答えた。
「ああ、そうだ。その国からマナー交流会の打診があったのだ。そなたたち、引き受けてはくれまいか?」
「………!!」
3人は顔を見合わせた!
「わ、私たちでよろしいのでしょうか?」
ミルマが発言した。
〝ミルマ様、そのお応えはタブーでは…〟
アレクサンドラは内心焦りました。
「そなたはノトロフか。そなたは我が選んだ事に問題があるとでも申すのか?」
王妃は苛立ちを見せた。
「い、いえ、決してそのような意図があったわけではございません。申し訳ございません、王妃殿下。」
「………………。まあ、いいでしょう。まだ若い故今回は許します。」
「あ、ありがとうございます。殿下のお心遣いに感謝致します。」
「ふむ。それでは詳しく話しましょう。」
「はい、王妃殿下。」
3人は声を揃えて返答した。
「ひと月後にトカチナ国の王女2人とあちらの上位貴族令嬢3人が来る。10日間滞在し、2日目に我が国がトカチナ国貴賓をもてなす茶会を開くのだが、それをそちら3人で行うこと。5日目には向こうが我が国に対して茶会を開いてくれるそうだ。飾り付けや茶菓子などの準備も分担して行うように。」
「はい、王妃殿下。」
「それから、我が国では立食式が主流だが、今回はテーブル式で行っておくれ。必要な物は全て手配さすので、この私専属侍女のフランヌに言うが良い。」
「はい、殿下。」
「6日目以降は来賓に案内などしてそなたらも他国交流を楽しむと良いだろう。」
「はい、殿下。ありがとうございます。」
「うむ、では下がってよろしい。」
3人は立ち上がり王妃にカーテシーを披露してその場を後にした。
王妃の執務室からかなり離れた場所に来た時に突然ナハムとミルマは歩みを止めた。
〝…?〟アレクサンドラは驚いて自分も歩みを止めた。
2人はアレクサンドラの方へ振り向って言った。
「あなたねぇ、私たちの足を引っ張らないでもらうから。」
「そうよ、私たちが場を作るからあなたは何もしなくてもいいわよ?」
「ですが!ナハム様、ミルマ様!!3人でと王妃殿下のご命令で…!」
「黙ってればわからないわよ。」
2人はニヤリと笑う。
「そ…んな…!!流石にいけませんわ!!」
「私たちに口答えする気?下級貴族のくせに!とにかく!私たちはあなたとなんて一緒に出来ないわ!当日も指を咥えて見てたらいいわね!あはは!」
「ねぇー、あはは!」
そう2人は言って高笑いした。
アレクサンドラは何を言っても2人がかりで拒絶されてしまう。このままでいいわけがないが、自身の身分からはこれ以上は諭す言葉をかけられない。侮辱したと言われてしまいかねないからだ。
そんな時、女性の声がした。
「あら…?珍しい組み合わせね。何かあったのかしら?」
振り向くとそこにはレルロアがいた。
「レルロア様!」
2人はすぐさまご機嫌取りに近付いた。
「何やら笑い声が聞こえてましたけど?」
「あ、いえ。王妃殿下のご命令について話をしていて私たち、意気投合したのですよ。ね、ナハム。」
「ええ、そうですわ。レルロア様。」
レルロアは視線をアレクサンドラに向ける。
アレクサンドラの視界には3人の令嬢たちが映っている。
レルロアの視線と2人の睨む目だ。
ここでレルロアに本当の事を言うべきか、言ったとして困らせてしまった上に2人に更にヤッカミを受けるかになるだろう…。
ここで返事を合わせておくのも1つ貸しを作ったようなもの。そう捉えてアレクサンドラは2人に合わせた。
「そうですの、レルロア様。経験があるお二人にお話を伺っていたのですわ。」
「……………。」
〝レルロア様は気付いているはず。私が誤魔化したのをどう思われたかしら…。失望されたかしら。〟
アレクサンドラは不安に思った。
「そうでしたの。それは良かったわ。」
「それでは私たちはこれで…。」
2人はレルロアにカーテシーを披露した。
「ああ、アレクサンドラ嬢、ラモニア様から言伝があるからお話したいことがありますの。一緒に来て下さるかしら?」
「……?はい、レルロア様。」
「まあ、それでしたら仕方ありませんわね、アレクサンドラ嬢、私たちは失礼するわ。」
「はい、ナハム様、ミルマ様。失礼します。」
そうして2人にカーテシーを披露する。
2人はそのまま自身の母達が待機している部屋まで向かって行った。
アレクサンドラはレルロアに付いて行き、皇太子殿下の執務室まで案内された。
「タナジー、入るわよ。」
〝え?レルロア様、呼び捨てなんですね?〟
アレクサンドラは2人の仲がそれ程親しいのかと考えた。
「ふふ。何を驚いてるの?私たち幼なじみでもあるのよ?」
レルロアはアレクサンドラに向いて言った。
「わかりました?私、そんなに顔に出てますか?」
「さあ?皆同じような感じですもの。ふふ。」
そして扉を開けると
「やあ、レルロア。おや?これは珍しいお客さんだね。」
「ええ。そこで会いましてね、あなたを含めてお話したいと思いましたの。」
「やれやれ、何を企んでいるんだい?君は本当に面白いね。」
「ふふふ。企むだなんて…、ね?アレクサンドラ嬢。」
アレクサンドラは返答に困っていた。
〝え?用件はラモニア様からの言伝ではなかったの?〟
戸惑うアレクサンドラ。
ご覧下さりありがとうございます。
無事アルクレゼ侯爵家騎士団は南隣国ナダルテ王国へと到着し、歓迎を受ける。
そしてアレクサンドラは王命を受けて登城するが、そこにはナハムとミルマもいて彼女らはアレクサンドラを仲間はずれにして自分達だけでやろうというのだった。
このお話は初めてのライトノベルですが完結しておりますので今後もご覧下さると嬉しいです。




