第21話:ルクセブル出立!その時アレクサンドラにも王命が…
ルクセブルがソファでウトウトしていると何やら外が騒がしくなってきた。
それによって母がやってくる前にルクセブルは目が覚めた。しかし頭はまだぼぉーっとしている。
時計を確認すると3時半だった。
〝父上が確か夜明け前と言ってたな。〟
ソファから身体を起こして顔を洗ってしっかりと目を覚まさせた。
コンコンコン!
〝母上だ!〟
「母上、どうぞお入りください。起きております。」
ドアを開けて母ラモニアが入ってきた。
「少しは眠れた?」
「はい、お気遣いありがとうございます。」
「では、皆のところに合流しましょうか。用意はよろしくて?」
「はい!母上!」
「…………。」
ラモニアはルクセブルをじっとみつめた。
そしてルクセブルを抱きしめて
「どうか無事で帰ってきて………。」
愛する息子の初めての出陣だ。心配しないわけがない。今まで気丈に振舞っていたのだろう。ルクセブルを抱きしめる腕や肩が震えていた。
それを感じたルクセブルは母に心配させないように
「ご安心ください!必ず父上や皆と共に戻って参ります!」
「ええ、そうね。待ってるわ。」
深く抱きしめてからルクセブルから離れて大きく深呼吸をした。
「さあ!行くわよ!」
「はい!母上!」
母ラモニアは侯爵家騎士団長の妻らしくすぐに気丈に振舞った。そして皆が待つ邸宅内の広場へと向かう。
馬車が何台も待機している。中は道中必要になる最低限の物を積んでいる。補充はナダルテ王国の方で用意してくれるからだ。
皆の集まる場所に着いたルクセブルは父と合流した。
「父上、お待たせしました。」
「うむ。それでは出立しようか。」
コクンと頷く。すると父グラナスは大きな声で皆に向かって掛け声をする。
「皆の者、よいか、必ず全員でもう1度この地に戻ってくるのだ。」
すると皆から〝おー!〟と歓声が上がる。そしてルクセブルも皆に声を掛ける。
「皆さん、僕は正式に騎士になったばかりですが皆さんの足を引っばらないように頑張ります。共にもう一度ここに戻ってきましょう!」
「ルクセブル様!」
皆がルクセブルの気持ちに応えた。
「よお、ルク!」
そう声をかけてくるのはニコルだ。
「ニコル!」
「ハハハ!大丈夫だ!お前なら皆の足を引っ張るようなことにはならんさ!」
「そうなるようにするだけさ。」
「しかし、災難だったなぁ、やっと婚約式済んだというのに…。お相手さん、大丈夫だったか?」
「………。泣かせてしまったよ。」
「まあ、そりゃ仕方ないわな。騎士の家門に産まれたら避けられないからなあ。」
「うん、それも理解してくれて僕を心配させないように一生懸命に泣きやもうとしてくれた。」
「なんだよ、それ。可愛すぎん?」
「……?泣くだろ?普通…。」
「いやいやいや、俺んとこ笑ってやがったぞ?」
「え?笑ってた?」
「あんた何悪さしたんだ!?って!」
「ははっ!ニコルだからじゃないか!」
「なんで俺だからなんだよ?!」
「その言葉遣いとか、…態度とか?」
「俺にとっては普通だし、婚約する前から変わらんけど?」
「うん、お互いによく知ってるから言えるのかもね。今頃きっと泣いてるよ。」
「まあな、あいつとは物心付いた時から知ってるからな。けど、泣かん泣かん、あいつだぞ?」
〝フラン・ルルソー子爵令嬢は僕には普通に礼儀正しいけどな。ニコルの前だけ態度が違うんだよなぁ。何か悔しいから教えなくていいか。〟
こえして2人は馬に乗りながらしばらく話をしていた。
まず目指すはナダルテ王国だ。そこまでは魔物も出ないので安心だ。
国境付近手前の山頂に着く頃には陽が登り始めていた。
「おおー!夜明けだ!こんなに綺麗なんだな。」
アルクレゼ侯爵家騎士団は皆、口々に夜が開けていく様を楽しんだ。
「よし、このまま国境を越えて明日の夜までにはナダルテ王国の王都に着くぞ!皆、行くぞ!」
皆小休憩を取っていたが、グラナスの声で再び体制を整えて歩き出した。
〝アレン、戻ったらこの景色をあなたに見せてあげたい〟
ルクセブルの胸は熱くなった。
◆ ◆ ◆
その頃、フレシアテ家にはアルクレゼ侯爵一行が夜明け前に隣国救済の為に出立したと知らせが入った。
〝ルク様!もう立たれたのですね。本当に早かった…。〟
そう、あの泣いて抱きしめあったあの日からまだほんの数時間しか経っていないのだ。アレクサンドラはルクセブルが帰ったあとも泣いてばかりで夜も眠れていなかったのだ。
ルクセブルの無事を願いつつ、出来るだけいつもと変わらないように過ごそうと決意した。
それはルクセブルが絶対に無事帰ると信じることと、他の人に心配をかけまいと思ったからだ。
しかし、一晩中泣いて目が腫れてしまっている。侍女のリラが目の腫れ用に氷を用意してくれたので当てて過ごしていた。
今日は特に誰かと会う予定がなくてホッとしていた。
流石にそこまで気が回らなかったのだ。それだけ取り乱してしまったのだ。
母は何も言わなくても気付いており、優しくアレクサンドラに言う。
「アレン、今日は自分が思うように好きにして過ごしなさい。」
「お母様…。ありがとうございます。」
アレクサンドラは母の優しさにうるっときた。
〝まだ目の腫れが引かないから今日は外出しない方が良さげね。本を読んで過ごそうかしら。〟
こうしてアレクサンドラは本を読んで過ごすことにした。
その頃ルクセブルたち一行は、国境を越えて付近の街に辿り着いた。地図で確認すると「テトラ街」だ。ここまでくれば山を1つ越えれば王都に着く。最低限の食料しか積んでいないのでどこかで足止めを食らうとたちまち皆が空腹になる。ようやくナダルテ王国圏内に入った事で一行は安堵した。
街中を通り抜けていると住民はそれなりに豊かそうだ。衛生状態も悪くはなさそうだ。
子供たちは駆け回り元気だ。どうやらこの国の国王は良い君主のようだ。
〝なるほどな。だからわが国王と同盟関係を維持出来てるのだな。〟
グラナスは思った。
「父上、良き街ですね。人々がとても幸せそうだ。」
「気付いたか?我々も見習ってもっと自領民に幸せに暮らして貰えるようにしなければならないな。」
「そうですね、いい光景を見られました。」
「さあ、あの山を越えて王都に入るぞ!」
「はい!」皆が応じる。
その頃、ポルモア王国側では………
「今度トカチナ国から貴賓が来るのだ。わが王国の令嬢たちとマナー交流の場を設けたいとの事だ。」
国王がそう告げた。
「あら。どれだけの方がいらっしゃるの?」
王妃が尋ねた。
「王女2人を除いて上位貴族の未婚令嬢が3人来るらしい。こちら側も同じように3人用意してくれ。」
「まあ、それでは、王室関係者以外ということですのね?」
「ああ。」
「……ふむ…。」
王妃は黙り込む…。
今、王国には上位貴族の中で公爵令嬢はレルロアだけだ。他の令嬢は嫁いでいる。しかもレルロアは王室関係者なので王女待遇になる。するとあとは侯爵令嬢からとなるとナハム、ミルマの2人しかいない。少し格が落ちて伯爵家から1人選ばなくてはならない。
王妃は思いついた。アレクサンドラだ。伯爵家ではあるが、アルクレゼ侯爵家と婚約しているのだ。名目は立つだろう。しかもマナーに厳しいステファニ公爵夫人のお気に入りだ。
「わかりました。では使いの者をやりましょう。」
そう言って「王室命令」として3人に登城するように指示を出した。
ナハムのトロファ侯爵家とミルマのノトロフ侯爵家は大喜びで登城してきた。
が、まさかそこにアレクサンドラも呼ばれてるとは知らず、姿を見て怒りを露わにするのだった。
「何故お前のような者がここに?!」
「トロファ公爵夫人、王室命令で私も来るようにとありましたので…。」
「ふん!まあいいわ。どうせ下働きとして呼ばれたんでしょうし!」
アレクサンドラは侮辱されてもジッと耐えた。
ご覧下さりありがとうございます。
とうとうルクセブルは南隣国へとアルクレゼ侯爵家騎士団と共に出立しました。
アレクサンドラの元にも王命が届きます。ルクセブルがいない今、アレクサンドラは彼の無事の帰りを待つと共に自分の出来ることを最大限に頑張ろうと誓うのでした。
初めてのライトノベルですが完結しておりますので今後もご覧下さると嬉しいです。
※編集は後書きを間違って前書きに書いてしまってた為に訂正致しました。




