第20話:突然の王命
ルクセブルも正式に騎士称号を得て今は王室騎士団第3部隊騎士となっていた。
自領を引き継ぐまでは各家門の子息は王室勤務になることが多く、騎士家系は騎士団へ。それ以外の家系は文官などに着く。
アルクレゼ侯爵家は騎士家系で王国を守る四ッ柱の1つなのだ。
ちなみに子爵家と男爵家は王室勤務にはならず所属する領地の領主に仕える。ルクセブルの幼なじみのニコルがそのパターンだ。
そんなある日のこと、王室勤務から帰宅したルクセブルは当主である父グラナスの書斎に真っ直ぐに向かった。
「父上、ご報告があります!」
息を切らしてルクセブルがやってきた。
「どうした?ルクセブル。そんな慌てて。」
「王室命令が下りました。」
「………!! 王室命令?!」
報告を受けたグラナスは驚いて持っていた本を落としてしまった。
「はい、南側の隣国、ナダルテ王国へ魔物退治に協力する為に遠征に出るようにと…。こちらが陛下からの命令状です。」
ルクセブルは陛下からの書状をグラナスに渡した。
そこにはアルクレゼ侯爵家の騎士団で南側隣国のナダルテ王国へ魔物退治の協力の為の遠征に行くよう記載されていた。
「魔物…。」
「そのようです。王都を空にする訳にはいかないためにナダルテ王国に近い我が家門が対象となったようです。僕もそこに加わるようにとのことです。」
「わかった。陛下に急ぎ準備して出立する旨伝えてくれぬか。」
「わかりました。」
「それから、アレクサンドラ嬢にも挨拶してくるといい。」
「はい、父上。では、明日王国へ参り報告したのち、寄って来ます。」
「ああ…。長く会えなくなるからな。」
「やはり魔物は強敵ですか?」
「私もお前くらいの頃に1度経験したが魔物はボスを中心に統制が取られる性質がある。だからボスを探して捕まえるか退治する事になるだろう。しかしそのボスが中々姿を現さないから日数がかかるのだ。」
「では、比較的安全なのですね。」
「絶対だとは言いきれんがな。」
「わかりました。覚悟は決めておかなくてはなりませんね。母上には…。」
「私から言おう。2人して出征なのだからな。」
「そうですね。母上は2人見送るのですね、さぞお辛いでしょう。」
「馬鹿者!絶対戻ってくるのだから何を辛気臭いこと言ってるんだ!」
そう言ってグラナスはルクセブルの背中をバーン!と叩いた。
〝そうだ、戻ってこなければアレンのためにも…!〟
ルクセブルは初めての遠征に弱気になってしまっていた自分を奮い立たせた。
◆ ◆ ◆
「えっ?」
アレクサンドラはたった今、発言したルクセブルの言葉が信じられなかった…。
あの王室命令が出た翌日、ルクセブルは陛下に報告したのち、アレクサンドラに会いにフレシアテ伯爵家へ来ていた。
「ルク様…….?今、なんて仰ったの?」
アレクサンドラは恐る恐るルクセブルに今の発言をもう一度確認した。
「アレン、僕も大変辛いんだ。」
ルクセブルも言葉に詰まっている様子だ。
「聞き…間違い…じゃ……ない、ですよね?」
ルクセブルにそう問いかけるアレクサンドラの手は震えていた…。
「ああ…。間違いじゃない。王命だから仕方ないんだ。」
「ああ……!!」
アレクサンドラはその場にしゃがみ込んでしまった。
「アレン!そんなに心配しないで!確実に大丈夫とまでは言えないが、僕は絶対にあなたの元に戻ってくるから!」
「でも…!保証がないのでしょう?もし、もし…!!」
アレクサンドラは顔を手で覆って声を振り絞って不安を口にしていた。
ルクセブルもアレクサンドラの傍に跪いて彼女を抱きしめる!
「それでも!それでも僕は必ず戻ってきます!!」
とうとう泣き出してしまうアレクサンドラ。
その涙を手で拭って優しく諭すルクセブル。
「あなたを独りにしない。必ず戻ってくる。僕には幸せと安寧を約束された聖剣があるから、必ず戻ってきます!!」
ルクセブルの必死の慰めにアレクサンドラも〝1番不安なのはルク様なのに泣いて困らせてしまってはいけないわね…。〟そう思って必死に泣きやもうとしていた。
「アレン!アレン!!」
より一層強く抱きしめるルクセブル。
ふたりはしばらく抱きしめあってお互いを大事に感じていた。
どれだけ時間が過ぎたのだろあか…。
しばらく抱き合って段々落ち着いてきたふたり。
「それ…で…ルク…様、い…つ………立たれ…る…のです……か…?」
必死で涙を堪えるアレクサンドラ。
「今…急ぎで準備をさせているんだ…。それが整い次第…出立となる…。」
「そ…そんなに…?早く…。」
「ああ、魔物が出始めているんだ、早くしないと被害が増えるかもしれないからね。僕らはとにかくボスを見つけてそいつを退治するのが第一の目的なんだ。」
「正面から向かうよりは危険ではないのでしょうか…?」
「比較的安全ではあるが、チームワークと念入りな計画が必要となるからね。油断は出来ない。ナダルテの騎士団と連携を取って必ずやり遂げてアレンの元に1日でも早く戻るよ。」
「わかりました。無事をお祈りしてお帰りをお待ちしております。」
「ああ…。必ず!」
そしてもう一度ふたりはしっかりと抱きしめあった…。
ルクセブルが帰宅した時には出立のための荷車がどんどん準備されていた。
〝僕も準備しなければ…!!〟
部屋に戻ると母ラモニアが待っていた。
「母上…!?」
「お帰りなさい、ルクセブル。」
「どうなさったのですか?」
「あなたの準備をしておりました。アレクサンドラにはちゃんと話あえましたか?」
「はい…。かなり泣かせてしまいました。」
しょぼくれるルクセブル。
「仕方ありません。騎士の家門はいつかはその思いを経験します。早くにしなければならないのは気の毒ではありますが、彼女ももう我が家門の人間だと私たちは思っていますから…。」
「はい、母上。」
「さあ、父上が夜明け前に出立すると言ってました。少しだけ仮眠しておきなさい。長くなるでしょう…。私が声を掛けに来ます。」
「ありがとうございます。」
そうしてソファになだれ込み仮眠をとることにした。ルクセブルはその時間を作ってくれた母に感謝した。
ご覧下さりありがとうございます。
平穏な日々が続いていたのに突然の悲しい王命により、ふたりは離れ離れに…。
初めてのライトノベルですが完結しておりますので今後もご覧下さると嬉しいです。




