第13話:レルロアの気持ちとダナジーの想い
「さあ、そろそろ会場に戻ろう!間もなくダンスパーティーの開始時間だ。」
王太子ダナジーがそう言う。そしてレルロアの手を取って部屋を出て行く。
「あら?ボードゲームは?」
「ああ…。探しに行ったけどなかったんだ。」
「まあ、残念ですわ。またいつかしたいですわね。」
「今度うちに来た時にしようか。僕らも行こう、アレン。」
「ええ。」
そうして4人はダンスが行われる中央ホールに向かった。
ダンスパーティーの開始は王太子とその婚約者が開始のためのダンスを披露してからだ。
「レルロア!今日も皆に君の素敵なダンスをお披露目してやろう!」
「ダナジー様こそ華麗なステップをお見せになるのでしょう?」
「ああ!僕らは最高のパートナーだからね!」
そう言うダナジーの顔は嬉しそうにしていた。
その顔とは反面にレルロアは変わらず冷静だった。
〝レルロア様は本当に淑女の鑑ね。いつだって冷静であまり感情をお見せにならないわ。流石ね。でも…。〟
この国では女性は家族以外には感情を無闇に現さないのが美徳とされている。
今の未婚者の中ではレルロアが最高の淑女として讃えられている。流石は王太子の婚約者だと王国一の評判だ。
アレクサンドラの周りには近い年頃の女の子が侍女しかいなかったのでレルロアと接する度に貴族令嬢であることの意味をひしひしと感じるのであった。
そうこうしているうちにダンスパーティー開始の鐘が鳴った。
自然とホールの真ん中が開けて、代わりに王太子とレルロアか登場した。
2人が中央に到着すると〝シーン〟と場は静まった。
皆、演奏が始まるのを待っていた。
そして次の瞬間、音楽が流れ始め、2人は踊り出した。
さっきレルロアが言った通りに王太子のステップは軽やかで華麗だ。そしてそれにも劣らず見事にそのステップについていくように華麗なダンスを披露してその場に蝶のように舞うレルロア。
「おおー!」と周りから感嘆の声が漏れ響く。
〝素敵ですわ!流石レルロア様!〟アレクサンドラもその中の1人だった。
レルロアたちのダンスを見入っているとルクセブルがアレクサンドラの耳にコソッと話しかける。
「アレン、用意はいい?この曲が終わったら皆もダンスをするよ。もちろん僕らもね。」
不意打ちの行動にドキッとするアレクサンドラ。
〝そ…そうだわ、ルク様と初めてのダンスでしたわ。〟
突然思い出してドキドキが一層増したアレクサンドラだった。
目の前では変わらず華麗に舞うレルロア。
あれだけ大胆に踊っているにも関わらずに、どうやら2人には会話をするだけの余裕があるようで、時折レルロアの表情が一瞬だけ崩れて赤みを増す。何を話してるのか興味がわく。
〝あのレルロア様の表情を変えさすなんて!〟
アレクサンドラは気付いていたが、ほかの人たちはそれにすら気付いていない様子だった。
音楽が終わりダンスが終了し2人はお互いに礼をした。
その瞬間、周りから自然と拍手が贈られた!
2人は周りに対してもお辞儀をした。
そして次の曲が流れてきた。
「さあ、アレン。僕と踊って下さい。」
ルクセブルがアレクサンドラに手を差し伸べる。
「喜んで。」
ニッコリと笑ってその手をとるアレクサンドラ。
曲に合わせてふたりは初めてのダンスを踊り始めた。
〝沢山マナーの一環としてタンスも練習してきたけど凄く緊張するわ!〟
アレクサンドラの心の中は不安でいっぱいだった。
そんな時、クィッとルクセブルに手を軽く引っ張られた。
「アレン、何も考えないで僕だけを見て下さい。僕がカバーしますからアレンは安心して僕とのダンスを楽しんで下さい。」
笑顔のルクセブル。
周りからはドヨドヨとどよめき声が聞こえてくる。
それもそのはず。
ルクセブルは今まで女性のエスコートをした事もなければ声を掛けられても営業スマイルでさり気なくスルー。それなのに砕けた柔らかい視線と笑顔を一人の女性に向けているのだから…。
〝あぁ…、視線が痛い。〟緊張よりもそっちが気になってくるアレクサンドラ。
「アレン?ちゃんと僕を見て!僕だけを見て!」
「ふぁ…、はい、ルク様。」
こんな整った顔立ちの素敵な男性に〝僕だけを見て〟なんて言われたら平常心ではいられないだろう。アレクサンドラもそのようで返事がキチンと出来なかった。
「ハハハ!素敵だよ、アレン!」
「もうッ!ルク様ったら!」
そうして2人はダンスを楽しんだ。
そんな2人を遠くから眺めていたのは先にダンスを披露した王太子とレルロアだった。
王太子はふたりの和やかな様子を温かく見守っている。そしてレルロアは冷ややかな気持ちで見ていた。
アレクサンドラが悪いわけではない。ただ本来ならそこに自分がいたはずだと思うとやるせない気持ちになるのだった。
そしてその様子を密かに横目で王太子ダナジーは見ていた。
彼は知っていたのだ。レルロアは本当は自分よりもルクセブルに心があることを。それでもレルロアが好きなので彼女を手に入れるために王室の権力を使って婚約を申し入れたのだ。
いつかは自分を見てくれる日がくればそれでいいと。
国王も穏やかな性格だが王太子も国王譲りの穏やかな性格なのだ。
しかしダナジー本人はそうは思っていなさそうだ。
いつかレルロアが自分を思うようになればそれでいい。だけどその事で彼女を苦しめているのではないか、そんな彼女を自由にしてあげた方がいいのではないか、そう思うこともあって複雑な気持ちも持ち合わせていた。
〝僕が君を好きになったことが罪なのか…
君の気持ちを知りながら僕は
権力を盾に君を手に入れた。
君はまだアイツのことが好きなのか?
アイツは僕にとっても大切な友人だ。
これ以上君を悲しませたくないし
悩んでる君を見ているのは辛い 。
でも… それでも僕は
君を手放すことが出来ない臆病者だ〟
これこそがダナジー・デ・ポルモアなのだ。
ご覧下さりありがとうございます。
レルロアにとって複雑な気持ちが露呈しました。王太子ダナジーとも幼なじみだからこその間柄ではあるものの…。
初めてのライトノベルですが完結しております。
今後もご覧下さると嬉しいです。




