14.出発
よろしくお願いします。ストーリーに少し矛盾があるかもしれませんが、お目溢しください。
朝焼けがオフィスの壁を、淡くオレンジに染めていた。
移民局のロビーに、小さな足音が響く。
振り返った係員たちが、息を飲んだ。
ワンピース姿の少女――アンネリーゼが、静かに一人で立っていた。
真っ白の布地に、陽光が差し込み、ところどころ織り込まれた銀糸がキラキラと輝く。
リボンで結ばれた金髪がきらきらと揺れる。
「……ようこそ。当局へ」
誰よりも先に口を開いたのは、カートだった。
「……クラウスさんは?」
アンネリーゼは一歩だけ前に出て、そっと言った。
「パパは……しばらく起きないと思う。
しばらく夜、眠れなかったみたいで……。今朝も、目を覚まさなかったの。
だから置いてきちゃった!」
誰も、問い返せなかった。
それが嘘か本当かではなく、あまりに優しい嘘だったから。
控室で、アンネリーゼは書類に目を通し、淡々と手続きを進めていた。
周囲の職員たちは、その“機械的な冷静さ”に驚きながらも、
彼女の小さな背中を見つめる視線は、どこか――祈りにも似ていた。
「神さまは、何を選んでるんだろうな……」
誰かがつぶやいた。
カートは、彼女の前にしゃがみこんで、顔を合わせた。
「……リーセちゃん、本当にいいのか?」
アンネリーゼは、にこっと笑った。
「うん。パパのこと、よろしくお願いします」
カートは、胸の奥で何かが軋むのを感じながら、うなずいた。
「……ああ。僕が……見てるから」
その後、アンネリーゼは静かに部屋を出て、光の方へと向かっていった。
歩き出す彼女の姿は、どこまでも真っ直ぐで、どこまでも美しかった。




