13.誰よりも、君を愛しているよ
よろしくお願いします。ストーリーに少し矛盾があるかもしれませんが、お目溢しください。
部屋には静かな夜の気配が満ちていた。
薄く開けた窓から春の匂いが入り、カーテンをふわりと揺らしている。
クラウスはアンネリーゼのベッドのそばに腰を下ろしていた。
娘は枕元で毛布に包まり、まぶたの奥に眠気をためながら、まだ目を閉じていなかった。
クラウスは「明日の朝、早いな。早く寝ないとダメだぞ。」と呟き、
アンネリーゼは「大丈夫。準備できてるよ」と微笑んだ。
部屋は整然としていた。いつも通り。
それが逆に、胸の奥にひっかかる。
「アンネ……ひとつ、訊いてもいいか?」
クラウスは言いづらそうに頭を少しかいて、目をそらした。
「なあに?」
「……おまえ、服……嫌だったんじゃないか?」
迷った。けれど、言葉が口をついて出た。
彼女は一瞬きょとんとした顔をした。
「……服って、いつも着てるワンピース?」
「そう。白と緑の……ちょっと古風な……ほら、リボンのやつとか……」
「ふふ、それ、カートさんが“フランス人形みたいだ”って言ってた」
クラウスは苦笑した。
「俺、……押し付けてたよな。そうだ。……勝手に仕立てて、着せて……おまえが欲しがったこと、一度もなかったのに……」
アンネリーゼは静かに首を振った。
「パパが選んだ服、全部きれいだったよ」
「……でも、動きにくかったろ」
「うん。ちょっとだけね」
また、ふわっと笑った。
笑顔に、恨みも皮肉もない。
「でも、それでよかったの。だって、パパが選んでくれた服だもの。」
「……」
クラウスは何も言えなかった。
それは彼女の優しさだった。
許しでも、拒絶でもなく。
ただ、“知っていた”という、受容だった。
クラウスは、何かを言いかけて、
何も言わず、娘の髪に手を伸ばした。
「パパ、大好き」
「……俺もだよ。リーセ。誰よりも、君を愛しているよ」
「知ってるよ。私はパパの世界一可愛いお人形さんだもの」
クラウスの視界が滲んだ。
何かを言おうとして、けれど、それ以上は何も言えなかった。
ただ、頷いた。
何度も、何度も。
それで、全てが伝わる気がした。




