モノローグ「青い夢」
これは一筋の光に照らされる小さな世界の話。
そしてまだ夢を語れない少年のモノローグ。
ーー俺...浮いてるのか?
ぷかぷかするような浮遊感を全身で感じる。意識が曖昧だからか、辺りは真っ白ではっきりとしない。両腕を左右に目一杯広げ、改めて周囲を見回す。
すると真っ白だった世界は鮮やかに染まり始めた。上を見れば雲ひとつない青空。下を見れば街が広がっていた。
ーー俺!飛んでる!
背中に翼が生えていることを実感する。全身で風を浴びているのを感じる。そして、とても気分がいい。
下から笑い声が聞こえてきたので、何気なく覗き込む。そこに見えた街の人達は指を差して誰かを笑っていた。
大勢に指を差されているのは、ひとりの男だ。彼は惨めに叫んでいた。
この街の日常風景だ。内容までは聞こえてこなかったが、大体想像がつく。
ーー馬鹿馬鹿しい.....
自身が上空にいるという事を再確認し、ふと考えが浮かんだ。
ーーもしかして今なら...壁の向こうに..…!
淡い期待を抱いた途端、瞬きの高揚感は地に落ちるように覚めてしまう。
ーーうわぁ!落ちる!
落下している感覚、身体が空を切る感覚。それらの感覚が心の臓を優しく握っている。それはとても不快で、落下の速度に比例して、段々と強くなる。
反射的に閉じてしまっていた目を再び開くと、こちらに迫ってくる地面と目が合ってしまう。
ーーぶつかる!
ドンッという音を聞き、目を開ける。
「なんだ...夢か...」
カーテンの隙間からは青空と共に朝日が差し込んでいる。
「今日も清々しいまでの晴天だな」
と、ひとりボソッと呟く。
モノローグ「青い夢」