表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

117/117

◇117 ポイント特典





「えっと、【ポイントカード】」


 目覚めてすぐにそう念じてみると、ポン、と手の中に厚紙でできたポイントカードが現れた。ううむ、やはり夢じゃなかったか。

 琥珀さん印のスタンプが星印のある一つ目のマスに押されている。次の星印は十マス目だ。とりあえず一つは貰えるってことだよね?

 なにが貰えるんだろ? 完全ランダムって言ってたから本当にガチャだよね……。

 まあ、神様から貰えるものなんだから、なんでもありがたいものなんだろうけど……。

 その日、お土産を買いたいというルカ、ティファ、リーシャ、エルティリアちゃんたちのために、五つの店舗を開放した。

 パティスリー『ラヴィアンローズ』、キッチンカー『リトルウイング』、リカーショップ『TAKEDA』、駄菓子屋『十文字』、おにぎり屋『むすびまる』の五店舗だ。スタンプ欲しくて無理しちまったぜ……。

 ルカたちはみんな時間停止する収容箱を持ってきてはいたが、その収納箱だって限界はある。

 そのため、なにを買っていくかでかなり時間をかけて吟味しているようだ。

 それを横目に、私は店の外で一人、押されたスタンプを見てにんまりしていた。よし、二つ目のスタンプ。次の特典まであと八スタンプか。

 とりあえずすでに埋まっている一つ目の特典ってのが欲しいんだけど……。特典ってどうやって貰うんだろ……?


「えーっと、特典下さい……?」


 ポイントカードを手に挟み、九女神様に祈ってみる。

 すると、ポイントカードから光の玉が飛び出して、ポンッ、とある形になって落ちてきた。これは……。


「……ねこみみ?」


 え? どういうこと? なんか猫耳カチューシャが落ちてきたんだが!? 特典ってこれ!?

 私は桜色の猫耳カチューシャを拾うと、とりあえず頭につけてみた。

 特になんの変哲もない猫耳カチューシャだけど……。えー……特典ってコスプレグッズなの?

 ガチャがハズレたってことかしら……?


「……ん?」


 え? これって……。

 私の耳に、店内にいるみんなの声が聞こえてくる。いろんな声がワイワイガヤガヤと聞こえていたが、集中すると一人の声に絞れたりする。

 この猫耳カチューシャって、魔導具なの!?

 すごい。遠くの音を聞くことができる魔導具なんだ。これは使える……使える、か?

 盗み聞きにはもってこいのアイテムだけども。正直私には使いどころが難しいな……。

 なんなら律の配下である七音ななねの一族の誰かに貸した方が、情報収集に活用してもらえるかもだけど、神様から貰ったものを、ほいっと渡すわけにもいかないかなあ……。女神様たちは気にしなさそうだけど……。


「サクラリエル様、ここにいたんですか……っ、ぐふぅ!?」


 背後から声をかけてきたエステルの方に振り向いたら、突然彼女が胸を押さえてよろけた。なにごと!?


「なんという破壊力……! 獣人化したサクラリエル様がこんなにも可愛らしいとは……! なんですか、その素敵グッズは!?」

「え、えーっと、新店舗のおまけみたいなもの?」


 九女神様から貰ったとも言えないし、私はそんな感じに誤魔化した。


「なるほど! ぬいぐるみのような可愛さを出すアイテムということですね! あっ、ビアンカさん、律さん! こっち来て下さい!」

「なんだエステル。そんなに慌てて……っ、ぐむぅ!?」

「どうしたんですか、二人とも……っ、ふわぁ!?」


 エステルに呼ばれてやってきたビアンカと律も同じように胸を押さえてよろめく。だから、なんなん!?


「なんたる可愛いさ……! こ、これは危険だ……!」

「危なかった……! 危うく父上のところへ逝ってしまうかと……!」

「ですよね! ですよね!」


 なんか知らんが三人して盛り上がっている。仲間外れにしないでよー。

 そのうちお母様とユリア先生もやってきて、はしゃぎつつも猫耳カチューシャをつけた私をいろんな角度から眺め、二人して『これは売れる』と呟いた。え? 売る気です?


「ぬいぐるみ屋さんにぬいぐるみキット、ファッションセンターにカチューシャがあったわよね? あれを流用すれば、似たようなものを作れるわ」

「ついでに腰のベルトに引っ掛けられる尻尾も作りましょうか。より可愛い感じになると思います」

「いいわね! まずはフィルハーモニー領とユーフォニアム領で試作して売ってみましょう!」


 なんか知らんが、新商品のプロジェクトが始動したようだ。商魂逞しいなあ……。

 お母様は元々辺境伯の娘だから、考え方が柔軟で行動力がある。会社の上司なら頼れるタイプだ。

 うーむ、まさかこんな展開になるとは。まあ【ポイントカード】がどういうものかわかったからよしとするか。

 次まではあと八スタンプ、四十回召喚しないといけない。うーむ、まあ無理して召喚せず、ポイントが貯まるのを楽しみにしとくとしよう。


 

          ◇ ◇ ◇



 秋涼会が終わったということは、これから社交シーズンが始まる。

 こもりがちになる冬になると、各家で毎日のようにパーティーが開かれるらしい。

 もちろん、パーティーが被ってしまうと招待した客も分散してしまうので、同じ派閥などでは事前に被らないように日程を調整したりする。

 お父様の話によると、わざと敵対派閥と開催日を被らせて、中立貴族がどちら寄りなのか確認するようなこともするらしい。参加したらこっち寄り、と河岸がわかってしまうので、中立を保ちたい貴族は辞退の理由を考えるのが大変そうだ。

 本当に、ほんとぉぉぉぉぉぉぉに不本意だが、私もパーティー、というかお茶会を開かなくてはならないらしい。

 すっごい面倒……。まあ、お母様の話だと、仲良くなりたい家の子だけを呼んで、楽しくおしゃべりや美味しいものを食べたりするだけでいいってんで、渋々受け入れたが。

 この秋涼会で、少なくとも『合わないな』という子はわかったからね。たとえ同派閥の家の子でも、ちゃんとしたパーティーならまだしも、未成年の、それもお友達を呼んでのお茶会程度なら呼ばなくたって問題はない。

 とはいえ、しばらくは御免被りたいところだ。

 実際すでにいくつかの家から招待状が届いているのだが、『しばらく忙しくて参加できません。冬になったらまた誘ってね』的なお返事でお茶を濁している。

 ティファやルカ、リーシャやエルティリアちゃんなど、まだ滞在している国賓の方々が我が家に頻繁に訪れているので、忙しいってのは嘘じゃないしね。


「いやまあ、いいんだけど。いいんだけどね。でもあんたらほとんど毎日来てない? 他のところのパーティーとか出ないでいいの?」


 お決まりになったパティスリー『ラヴィアンローズ』に集まった、ルカ、ティファ、リーシャ、エステル、エルティリアちゃんにエリオット、ジーン、リオンの面々を見ながらため息をひとつ漏らす。

 ここにいるのは子供たちだけだ。いや、王族たちの護衛や私の護衛であるターニャさんらはいるが。ちなみにビアンカと律もいる。

 リーシャの護衛の騎士も、あのやる気の無さそうな怠慢騎士ではなく、レティシア皇女の信頼する女性騎士に変わったようだ。あれ以降、リーシャの周りから第二皇子派の連中は一掃され、とても快適に暮らしているらしい。よかったよかった。


「王族とはいえ、まだ未成年の子供を家のパーティーに招待する方がおかしな話じゃろ。子供同士のお茶会なら出てもかまわんが、わらわがこの国で仲のいい子供となると、サクラリエルとエステルしかおらんからの」

「私は招待した覚えはないんだけども」

「かかか。友達の家に遊びに来ただけじゃ。そしたらみんながいた。それだけのことよ」


 どう考えても屁理屈だが、まあ、おかしくはない。実際、示し合わせているわけではないようだし。というか、うちの店が目的で来ている気がするんだが。


「しかし、エリオット殿下とリーシャ殿下が婚約とはのう。意外や意外、驚いたわ。が、お似合いにも思えるの」

「ん。あらためて婚約おめでとう」

「おめでとうです!」

「本当におめでとうございます!」

「あ、ありがとうございます」


 ティファやルカ、エルティリアちゃんにエステルらのお祝いの言葉にリーシャがはにかみつつ、ぺこりと頭を下げる。

 エステルのはなんかやたらと熱がこもっていた気がするが……。

 

「だがこの後、間違いなく帝国で一悶着起こるの。其方を有するレティシア皇女が皇太子である第一皇子に肩入れするとなると……。帝国も我が国(メヌエット)にちょっかいをかける余裕も無くなるじゃろうて」


 ティファのところも帝国とは緊張感のあるお付き合いだったからね。それが緩和されるなら大歓迎なんだろう。

 帝国貴族に皇国との友好派がいるように、女王国との友好派もいる。大きな括りで言えば、外交推進派だ。

 その貴族たちは中立の立場を取ることはあっても、第二皇子派にはつくまい。

 あとはレティシア皇女が女王国と友好的な貴族を取り入れられるかだな。

 すでにリーシャは、ティファとルカとも仲良くなっているし、皇国皇太子の婚約者、【聖剣の姫君】である私、女王国と王国の王女であるティファ、ルカとも友達という帝国にとって最重要人物となった。

 第二皇子や皇帝からしたら、将棋で飛車角取られた感じ? 『覆水盆に返らず』ってやつだね。ちょっといい気味。

 リーシャを使い捨てにしようとした第二皇子なんぞ、徹底的に叩いて潰して欲しいところだ。

 ついでにその弟である、俺様皇子のあの性格を矯正してもらえれば言うことはない。

 『学院』に行ったら一応先輩だしな……。


「来てよかったの。半年後の春陽会も今から楽しみじゃ」

「うん。次はどんな新しいお店か楽しみ」

「いや、必ず増えるってわけじゃないんだけど……」


 ティファとルカが無責任に期待しているが、ゲーム内でのイベントをこなさないと、増えないみたいだからさ。

 イベントをこなす=攻略対象と近づくってことだから、あまりいいことじゃないんだよねぇ……。

 私は向こうのテーブルでワイワイと騒いでいる三馬鹿……もとい、エリオット、ジーン、リオンの攻略対象三人組に視線を向けた。

 エリオットたちのイベントもまだ残っているやつもある。だけど、そのほとんどが『学院』じゃないと難しいものだったりするからなあ……。

 入学したらパカパカ増やせるかな……。十歳から入学できるそうだから、あと四年か。

 それまでなんとか無事に生き残りたいもんだ。

 私は未来を憂いつつ、目の前のレモンケーキを口にした。酸っぱいわあ……。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ