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◇107 ガールズトーク





「ちかれた……」


 ルカたちの待つ席に戻ってきて、私はバタンとテーブルに突っ伏した。


「サクラリエル様、その御姿はちょっと……」


 さすがに見かねたのか、護衛であるビアンカが口を挟む。わかってるよ、公爵令嬢としてあるまじき姿だってんでしょ? わかってるけど、ちょっとだけ許してよ……。

 ここのガゼボは周りから少し高くなっていて、周りには低木も植えてあるから、外からは近づいて覗こうとするか、木の上からオペラグラスで覗こうとかしない限り、そう簡単には見えないはずだから……。

 ここの面子メンツが黙っていてくれればOKよ。ルカとティファのお付きの人たちもいるけど、二人が信頼している人たちだろうし、たぶん大丈夫……だと思う。


「だいぶお疲れのようじゃな」

「さ、サクラリエル様、大丈夫ですか?」


 そっとエステルが背中を撫でるふりをして、回復魔法をかけてくれた。うぁー……癒されるぅ……。二重の意味で……。


「いやー……今回だけならまだしも、また半年後に同じようなことをするのかと思うと、気が遠くなっちゃって……」

「ふむ。そうか、半年後にまたサクラリエルたちに会えるのだな。そう考えると次も楽しみになってきたのう」

「ん。半年後にまた会える」


 いや、まあ私も二人に会えるのは嬉しいけどさぁ。毎回この調子だとキツいものがある。

 何回かやれば慣れてはくるんだろうけど……。次にドナテラ嬢と会う時は、嫌味を言われてもスルーして次にいく方がいい気がする。精神的にもいろんな意味でもね。

 ドナテラ嬢だけじゃなく、その他にも私と合わないなあ、と思える人が何人かいたからさあ。そんな人らと表面だけはニコニコと会話するのって、すっごいストレス。めんどい……。貴族社会めんどい……。


「そういえばサクラリエルのことを母上に話したら、大層気に入ったようだったぞ。いつか会いたいと言っていたな」

「あ、ウチも。お父様とお兄が会ってみたいって」

「ええー……」


 【聖剣】絡みでの噂で気になり、会ってみたいってことなんだろうけどさ。

 ティファの方はまだしも、ルカの方はなあ……。『2』の攻略対象であるお兄様に確実にエンカウントするからさ……。

 どのみち『学院』で会うことになるんだろうけど……予想もつかない出会いよりは、そっちの方がまだマシかな……。

 ゲーム本編に入ってしまえば、ある程度攻略対象たちの動きを予想することができるが、十年後だからねえ……。

 さらに言うと、サクラリエル自身は初等部から入学していたから、十歳……あと四年もすれば学院に入学することになる。

 まあ私が『行きたくない』っていったら、お父様たちは許してくれるだろうけど、さすがに公爵令嬢としてそれはね……。

 エステルもゲームでは貧乏男爵家だったから、高等部からの途中入学だけれども、今回は初等部から入学することができそうなんだよね。

 それが攻略対象や悪役令嬢にどう影響を及ぼすか、さっぱりわからないからなあ……。


「二人も『学院』には初等部から入学するのよね?」

「一応、そういう予定ではあるな」

「私も。たぶんそうなる」


 『学院』は、初等部、中等部、高等部に分かれ、それぞれ三年ずつ通うことになる。

 ちなみに義務教育ではないので、入学しなくても何も問題はない。ただ学院での人間関係は、そのまま領地や国を跨いだ貴族同士の付き合いに後々まで影響するので、貴族としては行っておいた方がよいことは確かである。

 家の状況によって、中等部や高等部から通う者もそれなりにいる。特に平民での入学生徒はほぼ高等部からだ。それなりにお金がかかるからね。大富豪の家の子なんかだと初等部から通うこともあるらしいけど。

 平民でもこの『学院』を卒業すると、自国で『準貴族』の扱いをされる。貴族ではなく、普通の平民より少しだけ貴族寄りの扱いをされるってだけだけど、騎士と同じ位だから、王宮や城に勤めることも可能になるのだ。

 ティファやルカのような王族は、ほぼ初等部から通う。他国の王族と知己になっておいた方がいいし、嫁取り、婿取りにも都合がいいからね。


「そういや、二人とも婚約者っているの……?」

 

 ゲームではいなかったはずだが、もはやそれは当てにならない可能性もあるので一応聞いてみた。


「おらんよ。我が国には気骨のある男子おのこがおらんからの。母上も『学院』で探せと言うておる」

「私もいない。というか、お父様とお兄が『まだ早い』って」


 ティファの方はまだしも、ルカの方はどうなんだろうな……。ゲーム内でもルカのお兄さんってシスコン気味だったからな……。


「エリオットとの話は皇国うちからいかなかったの?」

「まあそんな話もあったようじゃが、母上は時期尚早と返したようじゃぞ。今回のことでちょっと見直したがの」

「うちは完全にお断りしたみたい。私を国外に出すつもりはないって」


 ルカの方は破談で、ティファの方はまだ模索中ってところか。

 ティファがエリオットの奥さんになったら、完全に尻に敷かれそうだ。

 でもエリオットにはその方が合ってるような気もする。


「エルティリア殿はそういうお相手はおらんのかの?」

「はひ?」


 私たちの会話に参加せず、ひたすらケーキをパクついていたエルティリアちゃんがティファの呼びかけに顔を上げる。お茶会なんだから、ちょっとは参加しようよ……。


「エルフはあまり婚約者という相手は作りませんので。成人して好きな相手ができたら結婚するという感じです」

「なるほどの。大人になってからの自由恋愛というわけか」


 ティファがふむ、と頷いているが、その子、九十歳だからね? 成人するまでたぶんまだ百年くらいあるから、私たちが生きてる間に結婚はしないと思う……。


「サクラリエルはどうなの? 誰かお相手がいる?」

「いくつかそういった打診はあったみたいだけど、全部お父様が断ったみたい。まだ早いって」


 ルカの質問にそう答える。断るというか、二度とその話をするなと脅しに近い返信だったらしいけども。

 一応まだ私以外に公爵家を継ぐ者がいないからね。結婚するとなると、お婿さんに来てもらうって形になるからなあ。変な相手とは婚約なんかしたくない。

 というか、前世の記憶が邪魔をして、同年代の子らにはまったくときめかないのよね……。

 前世でも歳上が好みだったから、最低でも三十を超えていないと、対象相手として見れない。

 そして、この世界では三十オーバーの独身貴族はなにかしらの問題がある人物だったりするので、とても難しいのだ……。問題ない貴族ならさすがに三十までには結婚しているからね。

 まともなのは奥さんと死に別れた男やもめの貴族とかだが、お婿さんにもらう以上、向こうの家を潰すことになるからな……。爵位を預かることもできるけど、乗っ取りみたいでなんか嫌だ。


「まあ、婚約者なんてそんな相手を探す暇があったら、領地経営の勉強でもするよ。フィルハーモニー領をもっと発展させたいからね」

「ほほう、その意気や良し。わらわも将来領地をもらうかもしれんので、いろいろと勉強をしておるぞ」


 私の決意にティファも賛同してくれた。

 ティファは王女ではあるが、もしも彼女が他国へ嫁ぐことがない場合、メヌエットで王家直轄地と爵位をもらって、公爵家を立てることになるかもしれないわけか。

 うちのお父様と同じパターンだな。

 その後いろいろとたわいない話をしつつ、他の国の情報や、外から見えるうちの国の情報などを確認したりした。

 やっぱりというか、諸外国にも【聖剣の姫君】の噂は轟いているらしい。福音王国が『聖女』として迎え入れる予定などという話も飛び交っているそうだ。


「そっちは琥珀さんが断ってくれたからもうないわね」

「福音王国も神獣様に言われては引き下がるしかあるまいな。しかし国に迎えるのは諦めても【聖女】としては認識されるのではないか?」

「うん、神獣様を従えているなんて聞いたことないし」

「従わせているわけじゃないんだけど……」


 従わせてたらこんなにケーキをバクバク食べさせていない。琥珀さんさっきから食べ過ぎ! せっかく元に戻ったのに、また丸くなるよ!

 そもそもこの世界で神獣というものは神の使いであって、人に仕えるものではない。そっちは召喚獣とか護衛獣とか呼ばれたりする。

 福音王国にも神獣がいるって噂だけど、他国の人は誰も見たことがないらしいんだよね。

 福音王国は神様から直接お言葉を賜わる国だから、神の使いである神獣がいてもなにもおかしくはないんだけどさ。まあ、私も神様からお言葉をもらっているけど……。

 そう考えると私って間違いなく【聖女】なんだよなぁ……。どうしてこうなった……。


「【聖女】として福音王国に受け入れられれば、他国の王族でさえ軽々しく付き合うことはできんからな。わらわはサクラリエルが【聖女】にならなくてよかったと思うぞ」

「私も。それに【聖女】になったら修行や巡礼があるんでしょ? 遊べなくなる」


 それな。【聖女】になると神々の声を聞くための修行や、各地の神殿を周り、浄化や礼拝をしなきゃならないらしい。

 『ギフト』を授けるあの『天啓の車輪』。籤引きのガラガラのやつ。

 あれも【聖女】さんが、神様の力……神気を込めているんだってさ。神様パワーを【聖女】がチャージしてるわけだ。

 神気ってのは神々の加護を受けた【聖女】が持っている力で、魔力よりさらに上の力なんだとか。

 ……あれ? 


《……ねえ、琥珀さん。ひょっとして、私にも神気ってあるの?》


 私はちょっと気になったことを、足下でケーキをパクついていた琥珀さんに念話でこそっと聞いてみた。琥珀さんは一瞬呆れた顔をした後、またケーキを貪り始めた。


《なにを馬鹿なことを……》

 

 あ、そうだよね。そんなわけないか。私は福音王国に正式に【聖女】に認定されたわけじゃないしね。


《あるに決まってるではないか》

《は?》


 あんの!? じゃあ全く【聖女】そのまんまじゃん!?


《小さきあるじは、リンゼヴェール様、サクラクレリア様、リーンベルテ様から加護をいただいているのだぞ? その力は神々の力。神気によるものに決まっているではないか》


 えっ、あの【店内BGM】とか【営業延長】って、神気使ってたの……!? 私、無意識で使ってたってこと!?

 これってけっこうヤバいんじゃ……。バレるかもしれないから、福音王国関係者の前では加護の力は使わんとこ……。

 







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