11 いざ出発!
玄関の扉をはね開けて、アンナとニックは外へ駆けだした。
たちまち、ゴォオオという風のうなりとともに、滝のような雨が襲いかかってくる。
たたきつける雨粒で、目をあけていられない。
アンナはなんとかその場にふんばって、腕で顔をおおった。
夜の漆黒にしずんだ風景は、まるでまったく知らない世界へ迷いこんでしまったかのようだった。
暴風にさらされた樹木の影が、巨大な怪物のように、枝葉をちらしてふたりの前にたちはだかっている。
アンナとニックは、ちらり、と横目で視線をかわした。
「怖かったら、お留守番しててもいいのよ?」
「まさか! 最高の冒険日和だね!」
そういって強気な笑みをうかべると、ふたりは吹きあれる嵐のなかへと飛びだした。
強風であおられそうになる体を低くかがめ、ランタンであたりを照らしながら、暗い枝道をつきすすんでいく。
ちいさなふたごは、たちどころにびしょぬれになった。
昼間の時とはうってかわって、足もとの枝道はほとんどが川のようになり、革靴が水をすって、あっというまに重くなっていく。
「ねぇ、ニック!」
「なにさ!」
激しい風の音にまけないように、アンナは声をはりあげた。
「ところで、その背中の荷物はなんなの?」
パンパンにふくらんだリュックサックを指さすと、ニックもまた大声でこたえた。
「冒険グッズだよ!」
「冒険グッズ?」
「このさき、なにがあるかわからないだろ? だからいろいろ持ってきたんだ! 昼間つかったロープに、火打石、防水マント、保存食、それからそれから……」
「……ねぇ、それ、重くない?」
「めちゃくちゃ重い!」
ニックが真顔でうなずくものだから、アンナはたまらず、ぷっ、とふきだした。
こんな大嵐のなか、わざわざ重たい荷物を背おっていくなんて、用心深いニックらしい。
「そういうアンナこそ、なにも持ってこなかったの?」
「冒険には身軽さが大事だからね!」
その言葉どおり、彼女はほとんど手ぶらだ。
持ち物といえば、愛用のオカリナと、さきほど見つけたおとうさんのナイフだけ。
「……アンナって、ほんと度胸あるよなぁ」
「それって、ほめてる?」
「……半分ね」




