表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大樹の冒険  作者: 天川藍
11/22

11 いざ出発!


玄関の扉をはね開けて、アンナとニックは外へ駆けだした。


たちまち、ゴォオオという風のうなりとともに、滝のような雨が襲いかかってくる。

たたきつける雨粒で、目をあけていられない。


アンナはなんとかその場にふんばって、腕で顔をおおった。


夜の漆黒(しっこく)にしずんだ風景は、まるでまったく知らない世界へ迷いこんでしまったかのようだった。

暴風にさらされた樹木の影が、巨大な怪物のように、枝葉をちらしてふたりの前にたちはだかっている。


アンナとニックは、ちらり、と横目で視線をかわした。


「怖かったら、お留守番しててもいいのよ?」

「まさか! 最高の冒険日和(びより)だね!」


そういって強気な笑みをうかべると、ふたりは吹きあれる嵐のなかへと飛びだした。


強風であおられそうになる体を低くかがめ、ランタンであたりを照らしながら、暗い枝道(えだみち)をつきすすんでいく。

ちいさなふたごは、たちどころにびしょぬれになった。


昼間の時とはうってかわって、足もとの枝道はほとんどが川のようになり、革靴(かわぐつ)が水をすって、あっというまに重くなっていく。


「ねぇ、ニック!」

「なにさ!」


激しい風の音にまけないように、アンナは声をはりあげた。


「ところで、その背中の荷物はなんなの?」


パンパンにふくらんだリュックサックを指さすと、ニックもまた大声でこたえた。


「冒険グッズだよ!」

「冒険グッズ?」


「このさき、なにがあるかわからないだろ? だからいろいろ持ってきたんだ! 昼間つかったロープに、火打石(ひうちいし)、防水マント、保存食、それからそれから……」


「……ねぇ、それ、重くない?」

「めちゃくちゃ重い!」


ニックが真顔でうなずくものだから、アンナはたまらず、ぷっ、とふきだした。

こんな大嵐のなか、わざわざ重たい荷物を背おっていくなんて、用心深いニックらしい。


「そういうアンナこそ、なにも持ってこなかったの?」

「冒険には身軽さが大事だからね!」


その言葉どおり、彼女はほとんど手ぶらだ。

持ち物といえば、愛用のオカリナと、さきほど見つけたおとうさんのナイフだけ。


「……アンナって、ほんと度胸あるよなぁ」

「それって、ほめてる?」

「……半分ね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ