仮面の魔王、知らない場所にいます
───朝起きたら、青空が視界に広がっていた。
我は、魔を統べ、畏怖させ、城に住み敵を陥れるもの。偉大なる魔王である。
顔には華美な装飾があつらわれた仮面。見るものには分かる、あらゆるものを跳ね返すアーティファクト。これが我のアイデンティティである。嘘である。ただの本体である。これがないと、この仮の体である魔素で出来た人間体を維持すらできないのだ。
我は、最初はただの「仮面に住むもの」だったが、イタズラしていくうちにだんだん、城から人が去り、魔物が現れ、家が魔城になり、我の頭には禍々しい冠が乗っていた。
傍らには漆黒の羽を持つ、狂気の塊のような美しい鳥。我と同じような影にとける衣を纏い、背中には大きな翼を携えていた。部下も多く、人間のもつ国と同程度の力を魔王として有していた。
しかし、偉大なる魔王と日々拝まれつつも、我の本質といえばただの引きこもりである。
美声と雷を放つ美しい飼い鳥……の反対側の手にはゲーム機器があり、部下をゲームに誘い、専ら城と城下町の中の安全を確保する代わりに、様々なものを貢がせていた。それぐらいの力が我にあった。力というのは、土地に属した契約のスキル『魔王城EX』である。EXというのは等級であり、我の生来持つスキルを極めてしまったってことらしい。人生は仮面の中から始まったが、今では魔王城とその城下町までを守ることができるようになっていた。
だから、我はいつの間にか育っていたこの『魔王城EX』の能力をもって、外部からの勇者とか冒険者というやつをつま弾いては中の城を育成していた。ときどき反乱も起こりそうになるが、ゲームの中で学習したスキルを使って穏便に収めたりもする。
最近流行っているような魔法を検索し、応用し、ゲーム開発にも勤しんだ。主人公がハレムを作るため女も男もデーモンも落とすゲームだ。側近たちのウケは良かったのだが、スチルを除いて登場キャラが全員、序盤に登場するスライムになるバグを患って治せなくなってからは頓挫してしまってお蔵入りしている。スライムは可愛いが、スライムハレムを作ってもいいが、いややっぱりそのままでいいや……スライムって可愛いよね。
違う、そうじゃない。