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【完結】暑苦しい公爵子息から告白されました  作者: 桜海冬月
最終章

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共同作業

本格的な戦闘はフラベルの成人騎士の内、一隊のリーダーを任されているオリヴェールという人の隊が背後から斬りかかったことで始まった。


この際にわたしは魔力を一瞬放出して注意を向けさせることで援護した。魔石は食べられてしまうのでフェンリルの強化にも繋がってしまうが、放出された魔力は一瞬で拡散するので相手を消耗させる場合には持って来いなのだ。


そして、オリヴェールが一撃を入れたあとに入れ替わるようにしてブルーノ率いるお父様から差し向けられた騎士たちが一斉に飛びかかる。


フェンリルは寄せ手の攻撃が一転して本気のものになったと理解したようで、ブルーノ隊の攻撃を魔力障壁も活用しながら防ぐようになった。



「攻撃しているのはブルーノ率いる救援部隊だけのようですが他の部隊はどうしたのですか?」


わたしは戦場にアンリエット隊と最初の攻撃をしたオリヴェール隊がいなくなっていることを指摘した。


「私の推測ですが彼らは今までほとんど休みなく戦っていたので、救援が元気な内に休息の時間をとって万全の態勢を作ろうということではないでしょうか」

「私もリアーナに同意します。特にコルネリウス殿の話では上級騎士が複数名居るとのことですから、一旦任せて休息と作戦の共有を優先したと思います。此処から目視できないのは休息中にフェンリルに襲われることを避けるための作戦でしょう」

「それでは、戦闘区域をアンリエット達のいない方に動かした方がいいですね。リアーナ、魔術具と魔石の用意をお願いします。ハンス様はアンリエットの居場所が分かりますか?」


今はまだそれほどでもないが、ブルーノは魔法も得意でよく使用する騎士なので流れ弾が来ないようにすべくわたしは補助をすることにした。


「確定はできませんが居るのは東側か北側でしょう。なので、一度こちら側に引き付けてからブルーノ殿と協力して西側に動かすのがいいですね」

「ありがとうございます」


フェンリルから見ると西側にいるのがブルーノ隊の面々なので、西に魔石を投げれば踏まれたりして被害が生まれかねない。

となれば、此方に引き付ける一択なのだが何度も同じことを繰り返せばフェンリルに対応されかねないので少し趣向を変えた陽動をしたい。


「リアーナ、準備してもらったのに悪いですが魔石は必要ありません。魔石の代わりに弓矢を構えて、わたしが魔力を放出すると同時に矢を射てください」

「了解です。火焔の魔術具はパウリーナ様の正面に置きます。弓を撃ったら後ろに向けて引くのですか?」


わたしは頷いた。横に動くことも考えたが、ブルーノ隊が巻き添えを食らわないためにもそれが妥当な判断だろう。


「私から一言言わせてください。ブルーノ殿との連携とアンリエット達の合流時のことを考えても、最終的にはフェンリルを西に動かした方が効果的だと思います」

「ですが、それではブルーノ達がフェンリルの移動に巻き込まれる恐れがあります。それに、火焔の魔術具が無駄になります」


騎士達の手助けのためにしていることが騎士の総力を弱めることになれば元も子もない。

そしてもう1つ、火焔の魔術具を無駄にするのはあまりにも惜しい。

これは一度設置したら地点の移動ができない代わりに燃焼力と耐熱妨害性がとても強い。つまり、フェンリルの身を守っている毛の防御力を削ることができる。


わたしはそれもあって後方への戦線の移動を提案したがハンスには策があるらしく、ちょっぴり怖い笑みを浮かべながら策を披露する。


「安直に動けばどちらかの利点を捨てることになりますが、両点を折衷することで利益を総取りできます」

「折衷ですか?」


ハンスが頷く。

ハンスの折衷案とは大雑把に言えばこういうものだ。


最初はわたしの提案通りに事を運び、フェンリルを火焔の魔術具の下まで誘導して弱体化させる。

その際にわたしの案では後ろに逃げていたところを敢えて動かずに一人が残り、フェンリルが魔術具から解放される直前にわたしの魔力を込めた小魔石を置いて逃げる。

そして、前もって西に逃げていたわたしが今度は魔力を全力で解放して注目を最大まで引き付ける。

わたしの護衛にはハンスが付き、フェンリルが飛び込んできたところをリアーナとブルーノ隊が側面から刺突用の槍で一斉に叩く。というものだ。


「簡単ではありませんが成功すれば一気にフェンリルの体力を削減できますね」

「その後に休息を済ませたアンリエット達に合流させればそこで決着させられる可能性もあります」


わたしの案よりも危険度は若干上昇するが成功したときに得られる利益はより大きく確実性のあるものになっている。


「パウリーナ様、話は纏まりましたか?纏っているならばこの弓を引く手を離します」

「大丈夫です。タイミングはリアーナの裁量に任せますがブルーノ達に当てないようにしてください」


わたしが何時でもと許可を出した瞬間にリアーナは弓矢を引いていた手を離した。

あまりに早すぎる動きに戸惑いつつも、わたしは自分の役割をこなすべく、シュテルンを介して魔力を放出する。

魔力をただ解放するだけなら何も考えずに魔力を体外に排出すればいいが、フェンリルを火焔の魔術具に当てるというれっきとした目的を持っているので、動きを誘導するためにわたしに近づけば近づくほど魔力が濃くなるように調節しながらフェンリルに向けて一直線に放出した。


方向性を持たせた魔力はフェンリルに早く届いたようで先に放たれたはずのリアーナの矢が届く直前にフェンリルの動きが止まってわたしの方に視線を向けた。

弓矢の腕は学園トップクラスと持て囃されるリアーナにとってはいくら獰猛で強大な魔獣でも動作を止めれば練習用の的と同じだ。


矢はフェンリルの耳を貫いた。


並みの相手ならば耳を貫かれれば痛みに悶えて行動が大幅に鈍くなるものだが、そこは魔獣の上位種の一角を担うフェンリル。矢を受けた直後は生じていた混乱を一息の間に建て直すとわたしの魔力の道に沿って走ってきた。


「パウリーナ様、魔力を抑えてから西に向かってください。リアーナはパウリーナ様を守り抜くように!」

「了解しました。ハンス様も御自身の命を最優先に行動なさってください」


わたしとリアーナは作戦の通りに西方向に逃げる。

ハンスはその場に留まりながらもリアーナの忠告通りに、火焔の魔術具の効果範囲の外かつフェンリルが襲ってきても牙による攻撃が届かないよう距離をとる。


「リアーナ、魔術具を起動せよ!」


ハンスの合図があった直後にリアーナが火焔の魔術具の起動を行った。実行速度を一分でも上げるために返事すらも返さない。


「ハンス様!」


文字通りハンスの目の前までフェンリルが迫る。

わたしの魔力を込めた小魔石を保持しているハンスはフェンリルの牙の餌食になろうとしていた。


本当に危ないと感じて咄嗟に目を瞑りかけた瞬間に、フェンリルを呑み込むように青い炎が立ち上る。

これまでどのような攻撃を受けてもうめき声ひとつ上げなかったはずのフェンリルが叫ぶ。


ハンスはフェンリルが火焔の魔術具に巻き込まれたことを確認すると魔石を地面に置き捨ててわたしたちのいる西側に走った。


これでフェンリルの討伐完了成功の確率が飛躍的に向上しただろう。

もう一度わたしの出番もある。ただ魔力を投げればよかったさっきとは違って次は集中も必要だ。


わたしはフェンリル討伐がより簡単になるように精神を集中させるのだった。


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