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【完結】暑苦しい公爵子息から告白されました  作者: 桜海冬月
最終章

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伯爵令嬢、囮になる!

恋愛要素が消滅しましたが数話後に帰ってくるのでそれまで御容赦ください。

「もう一度言います。パウリーナ様、ここで下車して囮になってください」


処理が追い付かずに思考停止に陥っているわたしに対してアンリエットが諭すように繰り返した。


「しかし、パウリーナ様は騎士の講義も受けていて座学は中々優秀なようだが実技に関してはからっきしだ。俺も確認したことがあるが、フェンリルと対戦するにはあまりにも心許なさ過ぎる」


本当のことに間違いはないがそれを直接言われると傷つくというものだ。ハンスは気付かなかったようだがアンリエットはこちらを気遣わしげに見ている。


ただ、間違いではない。


わたしがフェンリルの前にたてば囮になるどころか忽ち魅力的な餌として食されるだろう。


「ですので、ハンス様にはパウリーナ様の護衛をお願いします。守りに徹するハンス様がいればフェンリルとて簡単にはパウリーナ様に手を出せないはず」

「そこでフェンリルが冷静に状況を見て、周囲を潰そうとすればパウリーナ様を逃がし、俺も加えた全員での一斉攻撃で仕留める。もし、フェンリルがパウリーナ様の魔力に惹かれて狙いを変えなくても、俺が守ることで生じる隙をついて損害を与えようということか?」


アンリエットが神妙な面持ちで頷く。

アンリエットの提案に従うかどうかは別として御者だけでも安全な村に逃がしてそこから詳しい状況を連絡してもらう必要があることは確かなので、取り敢えずわたしたちは馬車から降りた。


「ですがその場合、ハンス様が攻撃に参加できなくなりますよ。どうやってフェンリルを倒すのですか?」


わたしが上手く囮になれても、騎士達の中でもトップクラスの実力を持つハンスを欠いた状態で勝てるとは思えない。

フェンリルが逃げているわたしに意識を向けて、周囲の騎士への反撃をほとんどしていない今だって進行を抑えるだけで精一杯なのだ。


「真っ当に戦えばそうなるでしょう。ですので、パウリーナ様を囮として置いている前方に魔術具の罠を仕掛けて、引っ掛かったところを最大火力で叩きます。そうすれば·······」

「無理だな」


ハンスは作戦を力説していたアンリエットの言葉を途中で遮って不可能だといった。


わたしもそう思う。


一見この作戦は成功確率が高いようにも見えるが、よく考えると大きな落とし穴が数点ある。

1つ目はそもそもの前提条件としてフェンリルが罠に引っ掛かってくれるかどうかだ。

罠の魔術具は既に使われている分もあるので全方位に仕掛けることはできないが、となればフェンリルを一方向に誘導しないといけないがわたしに向かって直線に来るだろう。

そして、その際に飛び越えてくる可能性もあり罠を踏んでくれる確率は未知数だ。

二つ目に魔術具に掛かったとしてアンリエット達の最大火力攻撃までの時間を押さえられるかどうかだ。

これは制止がまともに効いていない今の状況を鑑みるに余程強い魔術具、それこそ領地の万一のために使われるようなものでなければ不可能だろう。

三つ目は上記の二つをクリアしたと仮定して、果たしてフェンリルを倒しきることができるかだ。

最大火力の攻撃を行う場合、魔術師の魔力が残らなくなるのはもちろんのこと、騎士の魔力も大きく削られるし攻撃後の反作用の力を受けて動けなくなる。

そこでフェンリルの脅威が完全に去れば良いが、もし一分でも脅威が残れば残りの脅威を削ぐ余力はない。

つまり、負けになる。

他にもまだいくつか思い付くがそれらはフェンリルの討伐というよりもわたしたち護衛対象の安全に係るものであるから割愛する。


「ですが、それ以外の方法は救援を待つしかありません。どれ程時間がかかるのか······」


既に救援信号は送られているようだが、反応がどのようなものになるのか、何人の救援が来るのかは不透明だ。


「どちらも望みが薄い作戦にしかなりませんね。森の中を逃げ回り続けることも出来はしますが森への被害などを考えると最後の手段に取っておきたいですね」


わたしたちは木々を吹っ飛ばしたりは出来よう筈もないので隙間を抜けていくだけだが、フェンリルはその大きな図体と脚力によって木々を薙ぎ倒しながら追いかけてくることになる。

森の中には木こり達の村が点在していることを考えてもなるべく避けたい。



三人で知恵を振り絞っていると、背中に急に悪寒がした様な気がして振り向いた。

するとそこには見覚えのある壮年の男性がいた。


「コルネリウス!どうしてここにいるのですか!?」


この男性はコルネリウスと言って、セブリアン伯爵家で執事をしている人だ。


「伯爵からパウリーナお嬢様を影から見守るようにとの御用命を受けまして、今日一日護衛をさせていただいていました。本来なら初めから参戦すべきところでしたが、生憎事故に巻き込まれて馬車が使えなくなってしまい、走って追いかけているうちに見失ってしまいました」


コルネリウスはわたしの前に跪きながら謝罪するが、今はそれに構っている状況ではないので話を進めることにする。


「コルネリウス、来ているのは貴方一人ですか?」

「いいえ、わたしの他にも護衛長以下計六名の騎士が行動を共にしていて、彼らには既にフェンリルと交戦していた騎士への助力をさせています。そして、状況を把握した時点で伯爵への報告を、おそらく今はフェリシス公爵とフラベル公爵への情報が渡り、救援部隊が派遣されるでしょう」


騎士の中には上級騎士が三名いると聞いてわたしたち三人はほっと息をついた。

上級騎士が三名もいれば他の騎士と協力してフェンリルを抑えることが出来るだろう。

執事として有能であることを証明するように救援要請等の先んじて行えることはしているらしい。


「ところで、先程までお三方が話されていた作戦ですが我々も手伝わせていただいて宜しいでしょうか?」

「ああ、もちろんだ。作戦には実行が難しい部分もあるから、作戦の補修に協力してほしい」


わたしたちは先程できた作戦を軸にしながらも、実行可能なように、かつ成功率の高いように修正する。

その結果、騎士称号を持つとは言えど下級のコルネリウスが魔術師二人の護衛をして、ハンスとリアーナがわたしの護衛につくことになった。

他の騎士たちはセブリアン伯爵家の護衛長のブルーノとアンリエット、フラベルの成人騎士の片方をそれぞれリーダーにした三隊に分けてフェンリルの体力を徐々に削っていき、ある程度削った時点で三者が示し合わせた上で同時に最大火力の攻撃を放つ。

併せて魔術師たちもそれぞれの一番得意な魔法で攻撃することになった。

わたしたち囮組は逃げ回りつつも小さな魔術具を物資の続く限りフェンリルの進行方向に置き続け、わたしの魔力を僅かに込めた魔石を使ってフェンリルが攻撃を避けにくくするのが役割だ。

この作戦の要はわたしがフェンリルに捕まらないことと本気で狙われないことで、少しだけ魔力を込めた魔石を投げるのもカモフラージュの役割を担っている。


作戦を纏めたところでハンスが一度わたしたちとは違う方向に立ってそこそこの力を込めた投げ槍をフェンリルに突き刺す。

その間にアンリエットが作戦を共有して、コルネリウスが魔術師達の護衛に動き、リアーナとハンスがわたしの護衛をするためにこちらに集まって魔術具と魔石の準備をする。



フェンリル討伐作戦が本格的に開始した。


ちなみに魔石はアンリエットたちが回収したものを使っています。

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