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【完結】暑苦しい公爵子息から告白されました  作者: 桜海冬月
最終章

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標的は・・・わたし!?

突然の大きな魔獣の出現によって場は大混乱に陥った。魔獣の正体はフェンリル、子供の頃に童話などで一度は聞いたことがあるような有名で人々からは恐れられる魔獣だ。

生き残っていた下位の魔獣は我先にと逃げ惑い、その中でもスチィーワの様な強めの魔獣たちは窮鼠猫を噛むと言ったようにフェンリルに突っ掛かる。

しかしその決死の行動も虚しく、フェンリルによってまるで体毛についた砂ぼこりを払い落とすような軽い動きによって一匹残らず薙ぎ払われる。


フェンリルがこちらを向いた。

わたしや御者たちこの場における非戦闘員はこちらを見据えているフェンリルの眼光に威圧されてしまい動けず、騎士たちでさえも恐怖にとりつかれてほとんどが動けない。

辛うじて威圧から逃れたアンリエットと成人騎士が騎士が復活するまでの時間を稼ぐべく行動を起こした。


「ハンス様、御者とパウリーナ様を戦闘区域から引き離してください!魔術師とリアーナは行動を再開し次第こちらの援護をするように。他の騎士はハンス様達の護衛に専念せよ!」

「アンリエット!了解した。もしも、手助けが必要であれば何時でも申し付けろ!ここにいる他の学生騎士より俺の方が強い」

「そうならないようにしたいですが、ハンス様の手を借りることになる可能性が高いです。なので、動ける用意だけはしていてください」


ちょうどフェンリルとの戦いを軸になって行っていて会話を片手間にできる状況にないアンリエットに代わって、成人騎士の一人が返答する。

本来、護衛対象が戦闘に参加することは良いことではなく、護衛の騎士にとっても護衛対象を戦闘に助力させることは不名誉かつ褒められたことではないが相手が相手だけに、そのようなことは言ってられないのだろう。


ハンスと復活した騎士2名が御者をわたしのいる馬車を含めて二つに放り込み、馬を動かした。

馬を操れる人間が二人しか動けないため、より遠くまで全員を避難させるためにはこうするのが最善なのだろう。他の馬車を捨て置くことにはなるが、馬車はお金でまた購入すれば良い。

馬に関しては馬車を引けない騎士がうまく餌で釣って引き寄せているようだ。


「パウリーナ様、御者をするのは手慣れておりませんので大きく揺れると思いますが我慢してください」


ハンスが馬車の壁を介してわたしを気遣った。

浮わつく場面ではないのは理解しているが先程恋人になったばかりのハンスの気遣いを受けて、わたしは胸が僅かに高鳴る。


ありがとう、と感謝の意を表しようと思って口を開きかけたがわたしは一度思い直して口を閉じた。


ここは毅然とした対応をしなければいけない。


「大丈夫ですから、わたしのことは気にせず前方に集中してください」

「······はい」


毅然した対応を心がけすぎて避難がましい口調になってしまった所為でハンスがしゅんとした。


フェンリルとの戦いを終えた後で弁明と慰撫をした方がいいだろうか?


うん、そうしよう。


わたしが壁越しのハンスの扱いを考えている間にも馬車は進んでいく。馬を可能な限り全力で走らせていることもあって、フェンリルとの距離はぐんぐんと開いて······いかない!?


「ハンス様、フェンリルがこちらに向かっているようです。目視で確認しているわけではありませんが、フェンリルの足音との距離が開いていません!」

「本当ですか!?アンリエットたちはどうなっていますか?私には後ろを確認する余裕がないので教えてください」


ハンスは残してきた騎士たちに何かあったのではないかと不安に思っていることが手に取るように分かる声色でわたしに状況報告を頼む。


馬車の背面には外を見るための窓が設置されていないので、わたしは馬車の扉を開けてシュテルンを槍を変化させて馬車の隅に突き刺して固定し、左腕と槍を結びつける。

そして落ちないように細心の注意を払いながら、扉の隙間から後ろを確認する。


アンリエットとリアーナ、成人騎士たちがフェンリルの進行を妨げるべく必死に弓矢や剣による攻撃を、魔術師はトラップ式の魔術具を使って動きを止めようとしているが、フェンリルは多少の傷を負いながらも歩みを続けている。


「どうして?」


事実を確認してから一番に思った。

アンリエットたちを倒しきってから動くのならばまだ分かるが、倒さずにしかも攻撃を受けながら反撃せずにこちらに来る意味がわからない。


馬車に乗っている、護衛している面々はフェンリルに対する攻撃をしたこともないため、憤怒を買って狙われているはずもない。


わたしだけじゃわからないから、とりあえずハンスに報告しないと!


「ハンス様、アンリエットたちは無事なのですが異常な点がひとつだけあります」


わたしはハンスの返事を待たずに間髪を入れず次の言の葉を紡いだ。


「フェンリルはアンリエット達の攻撃に晒されているにも関わらず反撃の様子を見せずにまっすぐにこちらに向かってきています」

「反撃していない······ですか?······リューク、トルステン。アンリエットから直接話を聞きたい。アンリエットと交代をして来てくれ。交代するときは穴が生まれやすいから一度大きな攻撃を加えて、その隙に交代するように!」

「「はっ!」」


名前を呼ばれた騎士たちがアンリエットと持ち場を入れ替わるべく、フェンリルのいる後方に投げ槍に変化させたシュテルンに魔力を込めながら近づく。


「馬車が大きく揺れる可能性があるので、馬車の扉を閉めてください。そして全員、何かに掴まるようにしてください」


ハンスの予告通り馬車が強く揺れる。

岩などに当たった時の縦揺れではなく横揺れだったので、先程ハンスが指示していた攻撃の際の大きな攻撃の余波を受けたのだろう。


程無くして人が走る足音と共に叫び声が聞こえる。


「ハンス様、呼ばれた理由はリュークから聞いています。これは私の推測でしかないのですが、馬車に乗っている誰かの魔力に反応しているのではないかと思います。恐らくはハンス様かパウリーナ様の魔力です」


アンリエットの話を聞いて納得した。確かに狙いがわたしたちの魔力だったなら、逃げていく私たちを見失わないように追いかける理由もつく。


「もし、そうであればわたしの魔力が狙われている可能性の方が高いと思います。わたしにはシャトレ一族の聖霊力の残り香がありますから」


聖霊力とはシャトレ公爵家や一部の人間にのみ流れる魔力に似て非なる力のことで、本来土地に注ぐことで魔獣の発生を抑えるいわば魔獣の天敵だ。

しかし、それが魔力と混合された場合は魔獣にとってはとても魅力的な餌になると聞いたことがある。

まあ、誰でもそうなるのではなく聖霊力と魔力の混合には一定以上の量の魔力、聖霊力を保持していることとその魔力が魔人系の由来であることが条件だ。


「そんな······」


ハンスが悲しそうな声を上げる。

わたしは一応騎士の講義を受けてはいるけど何度も言っているように実戦能力はギリギリ騎士を名乗れるレベルのもので到底フェンリルに狙われて生き残れるものではない。


「ですが、パウリーナ様の仰ることを加味すれば全てに整合性がつきます。ハンス様の魔力は我々騎士とほとんど同じ性質のものですから。·····では、確認をしましょう」


そういってアンリエットはポケットから小さな魔石を取り出した。


「下位の魔獣の襲撃の際に回収した小さな魔石です。パウリーナ様、念のためにハンス様もそれぞれ魔力を込めてください。フェンリルにぶつけて、その反応を計ります」


他社の魔力に染まった魔石は魔力を抜かれた魔石に魔力を注ぐよりも効率は劣るが、小さな魔石なので飽和しないように気を付けて叩き込めばすり替えられる。


魔力を込めた魔石をアンリエットに渡して、アンリエットがそれをフェンリルに向けて投げつけた。


「結果はどうでしたか?」


わたしは馬車の所為で後ろが見えなくなっているので、アンリエットに一応結果を尋ねる。


「パウリーナ様の予想通りの結果になりました。これでは、逃げても逃げ切れませんね。なので、パウリーナ様はここで下車して囮として手伝ってください」


アンリエットが予想外の言葉を口にした。


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