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【完結】暑苦しい公爵子息から告白されました  作者: 桜海冬月
第二章

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衆目からの逃亡と急な帰還の始まり

「告白の返事について話されたような気がしたのですが聞き間違いでしたか?」


ハンスがわたしの目を真っ直ぐと見詰めて尋ねる。

一瞬、わたしが何を言っていたのか自分事ながら理解できなかったが一度落ち着いて言動を振り返ってみると、とんでもないことを言ったことを認識する。

いや、返答を先延ばしにしていたのだから、返事をしたこと自体にはなんの問題もない。

ただ、タイミングがあまりにも酷すぎた。


ここは繁華街なのだ。貴族も一定数訪れている街なので道が広く作られており、他人と肩が擦れ合うほどの狭さはないが人通りは田舎町とは比べられないほど多い。

当然、聞き耳を立てられていなくても誰かの耳には入るし、それが貴族限定で使えるコンフィザーリの予約を利用していた人の話であれば、なおのこと注目されている。

つまり、先ほどの軽く口を突くように出た告白の了承の返事はたくさんの人が聞いていたと言うことだ。

実際に、辺りを見回してみるとコンフィザーリに出来ている順番待ちの長蛇の列や周囲を歩いていた人たちの視線はこちらに向けられている。


「と、とりあえず城門まで急いで戻りましょう!馬車に乗らなければいけない時間まであまりのこっていません!」

「え?まだまだ予定時間までは余裕があったはずです。······それよりも先ほどの言葉の意味の方が気になります」


わたしは頬を紅潮させながら叫ぶようにそれでいて他の人にはあまり聞こえないように言ったが、その努力は実らずハンスは普通通りの声の大きさ、つまり常人の感覚で言えば大声で話し始めた。


「そんなことありません!護衛の皆さんも早めに来ているでしょうから急いだ方がいいと思います!」


今日のハンスは周りや相手のことにも注意を向けるようになって空気も読めるようになったと思っていたが、どうやら勘違いだったらしい。

自分達がどのような状況に置かれていてどんな衆目を向けられているかに気づく気配すらない。

折角のわたしの潜み声もすべてが無駄になって、むしろ注目を集めている。


「とにかく、城門まで急ぎましょう!」


どうしようもなくなったわたしはハンスを半ば引き摺るようにして衆目を切り抜けて城門に急いだ。




わたしたちはできる限り人通りの少なそうな道を迂回しながら城門へと向かった。

予定よりも早い時間帯の帰還になるので護衛たちが二人くらい集まっていたら御の字だと思っていたが、城門にたどり着いたときにはアンリエット以下全員が揃っていた。

聞けば、騎士たちは交代でわたしたちを護衛していて、わたしたちが城門に戻る予定時間よりも30分ぐらい早く集まるようになっていたらしい。

そして、先の騒動があったときに、ちょうど離れたところから周囲に紛れて護衛をしていたアンリエットとリアーナがまだ街に残っていた他の護衛たちを集めていたようだ。


「幸いにも、帰路につこうとしていた人が多かったので、なんとかお二方が到着なさる前に準備を終えることができました」

「急がせてしまったようで申し訳ありません」


アンリエットの表情には疲れの色が見えていて、予定が早まったことを知らせるために東奔西走してくれていたのが手に取るようにわかったので、わたしはアンリエットたちに謝罪した。


「謝る必要はありません。私は護衛としての任務を果たしただけです」

「アンリエットの言う通りです。私たちの仕事は主の意思を汲み取って先回りして準備することです。······さっきは間が悪かったのです」


アンリエットとリアーナがわたしを励ました。

特にリアーナはわたしを安心させるためか、公私をきっちりと分けて仕事中は無表情であることが多いにも関わらず、笑顔を隠そうともしない。


「それに、プルデンシア様に報告すべきことも出来たのでむしろありがたいくらいです」

「報告すべきこと·····ですか?」


わたしが問い返すとリアーナは楽しむような口調で簡単に説明した。


「お店の前でパウリーナ様が全く意識することもなく自然に出てきたような口調でハンス様の告白を了承する宣言をなさったことです」


リアーナによると、わたしにはふとした瞬間に心の内で真に思っていることがふらっと飛び出すというよく判らない癖があるそうだ。


また、少し話は変わるがこの発言によって、リアーナが笑顔だった理由にたどり着いた。

リアーナはまだ仕事モードに入っていない。

もし、仕事モードであればこのようにからかうような話題どころか必要最低限以外の会話をしない。


そんなことを考えていたわたしだったが不意に一抹の不安を抱いた。


 この話がお姉さまに伝われば事あるごとに話題を掘り返されてしまうんじゃない?


まずい、それだけはなんとしても避けないと!


「リアーナ!その話をお姉さまに報告するのは止めてください!それが無理ならせめて伝える情報を端的にかつ最小限にしてください!何でもしますから!」

「しょうがないですね。プルデンシア様に報告するのはパウリーナ様がハンス様の告白を了承する姿勢を見せたということだけにしましょう。ですが、言質は取りました。······そうですね、今度一緒に領都にあるオートクチュールやブティックで私の着せ替え人形になってもらいましょう」


わたしが小さかった頃、リアーナはわたしに色んな服を着せて遊んでいた。リアーナ曰く、わたしは服の着せがいがあって楽しいらしい。

しかし、わたしが歳を重ねるにつれて嫌がるようになったので学園に入ってからは、そのようなことをして遊ぶ事はなくなった。

嫌がるようになった理由はわたしにもはっきりと解らないが、おそらく思春期に入って恥じらいが生まれたのだと思う。


「······分かりました」


わたしとしては限度さえ弁えてくれれば、お姉さまに情報が渡らないようにするために着せ替え人形に徹することも吝かではない。


「では、交渉成立ですね」


リアーナが満足そうに頷いた。

これで他にフェリシス公爵家や学園に関係する人がいない限り、お姉さまに情報が行くことはないだろう。


「では、そろそろ帰路につきましょう。今から帰り始めればそこまで遅い時間帯になる前に学園の寮に戻れるはずです」

「そうだな。帰宅時間は少しでも早い方がいい」


アンリエットの提案にハンスが賛成をする。

わたしも夜が更ける前に帰れた方がいいので反対しなかったが、ハンスの知らなかった一面をまたひとつ見ることができた。

わたしに対してはいつも丁寧な口調で話していたが、友達にはラフな話し方をしているようだ。


わたしは行きと同様にハンスにエスコートされて馬車に乗って、護衛たちもそれぞれ持ち場についた。


「ハンス様。御話もあるでしょうから、我々護衛は距離を通常よりも大きめにとって先導、後備えを致します。防音結界の魔術具を起動させてください」

「分かった」


馬車が動き始めて、わたしたち一行は帰路についた。

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