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【完結】暑苦しい公爵子息から告白されました  作者: 桜海冬月
第二章

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お菓子処と進展

わたしは他にも気に入ったものやお土産をさらに数点購入するとハンスと合流して、グラーツの街中を歩き回ってお腹を減らした。

一時間もすると程よく、少なくとも間食としてお菓子を食べても差し支えない程度にはお腹が減った。


「そろそろ、向かいましょう。今から向かえば余裕をもって到着するはずです」

「はい。足も疲れつつあるので、ゆるゆると歩いてお店にたどり着く前に少しでも消耗を減らしましょう」


ハンスは広場の正面の建物に設置されている一本張りの大時計に目をやりながら言った。

もう歩く目的は大方達成しているし、お菓子を食べたあとには帰宅するための馬車に乗ることになる。

馬車に揺られるのは意外と体力を使うのだ。

時間に余裕がある以上は急ぐ必要もないのでハンスも了承して、最初の街散策と同じくらいの速度まで落としてコンフィザーリまでの道のりを進む。




「着きました。この店がコンフィザーリの店舗です」


ハンスは正面の建物を指差した。

その建物は街内の他の建物と同じく歴史を感じさせる荘厳な造りになっていて威圧感を感じるが、店先にはその威圧感を取り払うようにたくさんの人が並んでいる。

本来ならば並ぶ必要があるが貴族の特権のようなもので事前予約システムがあるので、わたしたちはもう一つの入り口に向かう。

予約者専用の受け付け口に入ると、ハンスは四角く薄いカード状になっている識別の魔術具を取り出して、受付の男性に手渡した。


「予約をしていたハンス・フラベルだ」

「フラベル公爵子息様ですね。魔術具の確認を行いますので少々お待ちください」


そういうと、男性は中心が四角く窪んだ箱形の魔術具を机のしたから取り出して机上において、ハンスの魔術具を填めた。

すると、真っ白だった魔術具が共鳴するように緑色に光り、カードの上に魔法陣が出現した。


「確認がとれました。いらっしゃいませ。ハンス・フラベル公爵子息様、パウリーナ・セブリアン伯爵令嬢様。案内はこちらのレイナが行います」

「本日、お二方を案内させていただく、レイナでございます。最初に当館内では魔術及び魔術具の使用が禁止されておりますので御了承ください」


レイナはその他にも幾つか禁則事項を述べると、わたしたちを階段に案内する。


「こちらにお座りください」


何回か上った先にあった一室に通されると、いかにも高級そうなテーブルと二脚の椅子が置かれていた。

レイナの言う通りに座ると、すぐに予約していたお菓子が運ばれてきた。


「ごゆっくりお楽しみください」


取り分け用の皿とお菓子を簡単に給士すると、そう言い残して足早に立ち去ってしまった。


「タルトレットですね」

「はい!」


最初から大好きなお菓子が出てきてわたしのテンションは急上昇だ。

どんな食材が使われているのか気になって、お菓子の隣に置かれていたお品書きを確認する。


「これはすごいです!シャトレ地方のラディーチェ高原産のバターと生クリームにキンレンクル地方のフルーツだそうです!」


ラディーチェ高原は雄大な牧場が広がっていて、その牧場で悠々と育てられた牛たちが作り出すミルクは数あるミルク生産地の中でも随一のまろやかな味わいを持っている。

それにキンレンクル地方は黄桃やミューレッドなどのたくさんのフルーツの特産地で、量こそそこまで多くないものの最高級の味を持ち、フォーンバーズ王国のみならず他国の王族への献上品等として用いられることも多い。

それ以外の品物も食べたくても簡単には手に入らない高級品ばかりが並んでいてわくわくを通り越して、座っていながら立ち眩みが出始めたほどだ。


しかし、それだけではない。

食材が高級品であることは確かだが料理人の技術も光っている。

フルーツの盛り付けの仕方が計算され尽くしたような美しさであり、一つの芸術作品のようだ。


それに、口に入れてみると分かるが、堅すぎず、かといって手に持っただけで崩れるような脆さがあるわけでなく、口に入れて少し噛むと凍っていた水が溶けたように崩れ落ちていくこの感覚がたまらない!


「お味はどうですか?」


質問の形態を取っているがわたしの表情を見て大方のことは把握しているようだ。

まあ、そうだろう。美味しくなかったり、期待よりも下回っていておそらく今わたしがしているような満足げで幸福感溢れて顔を綻ばせていることはない。


「とても美味しいです!予約してくださってありがとうございます。高級なお菓子は何度も食べたことはあったのですが、ここのお菓子はそれらとは比にならないくらい美しく美味しいです。期待通り、いやそれ以上の美味しさです!」

「喜んでくれてよかったです」


わたしの常識の中にあったタルトレットの味を大きく越えていったそれを噛み締めながらゆっくりと余すことなく味わう。


「次はどれにしますか?」


ハンスはわたしと感情を少しでも共有するためか、同じお菓子を食べているようだ。


「では、次はこのフィナンシェに致しましょう」

「フィナンシェ、ですか?」


どうやらハンスはフィナンシェのことを知らないもしくは食べたことがないらしい。


「はい、フィナンシェとはマドレーヌに少しだけ似ていますがマドレーヌと違って、長方形の形をしていることと卵白だけが使われていること、アーモンドバターが入っていることが特徴です」


ハンスにどれがフィナンシェなのかを教えると、わたしは早速手に取った。

味の決め手となる焦がしバターは丁寧に作られていることがわかる一番美味しく見える色合いで、香ばしさも去ることながらコクが素晴らしい。

そして、外はサクサク中はしっとりとしていて二段階の楽しみを味わえる。

隠し味が入っているのか最初はほろ苦さを感じたけど中央を味わうにつれて甘くなってくる。

たぶん、通常のフィナンシェよりも砂糖を少し少なめにしてあるようだが最初の苦さがちょうどいいアクセントになっていつもと同じくらいの甘さを引き出している。

わたしは飲めないけどコーヒーと一緒に食したら最高だと思う。


「柔らかく口に入れた瞬間に溶けていくような感じでとても好みの味です」


ハンスもお気に召してくれたようだ。


他にもわたしたちはクレープやシュークリーム、クッキーなどを食べた。

どれも食材が高級なだけでなく、料理人の腕のよさが光る逸品で味だけでなく、食感や後味が考え込まれて作られたことがわかるものだった。

その中でも特に驚いたのがクッキーである。

クッキーと言えば本来簡単には噛めない固さが特徴のお菓子だが、ここのお菓子はしっとりとした食感で一瞬戸惑った。

でも、それ以上に驚いたのはクッキーのなかに封じ込められていたチョコレートだ。

チョコレートによって中心の近くは絶妙に柔らかくなっていてとてもクッキーを食べているとは思えない不思議な感覚にさせられた。


予想を遥かに越える満足感を得ることができた。




食べ終わってコンフィザーリを出て、集合場所に向かっていたとき


「少し早いですが、今日一日どうでしたか?」


横を歩いていたハンスは斜め前に出て、わたしの目を見つめながら尋ねた。


「とても楽しかったですよ。無理をしてまでコンフィザーリに連れてきてくれてありがとうございます。他にも今日で今まで知らなかったハンス様の意外な一面をたくさん知ることができてよかったです。告白の返答をする前に相手のことをよく知ってからとお姉さまに言われていましたが、今日で大分知れましたし、了承をしてもいいと思っています。······いたっ!」


なぜかハンスが急に立ち止まり、わたしはそのままハンスに軽く追突した。幸い、痛みは全くなかったがどうして急に立ち止まったのかわからずに困惑する。


「その言葉は本心ですか?」

「?はい、もちろん」


何を言っているんだろう。今日の感想で嘘をつくわけがない。·······ん?わたし、さっき何て言った!?


次回はこの続きからです。学校も塾もあるので厳しいかもしれませんが、出来れば明日更新したいとおもいます。


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