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love library

作者: vicious

突然だが俺は読書が好きだ。


スポーツとかテレビゲームとかもやらないわけでもないし、下手でもない。


でも、それらより本が断然好きなのである。


読む都度、なんだか自分が成長したような気がするのだ。


この充実感がたまらない。自分の好きな雰囲気の本に出会えた時は感無量ってほどだ。


今も、夏休みにもかかわらず学校の図書室で読書中。


この時期は大学受験で図書室を利用する人がいるので、生徒および先生も利用可能なのだ。


そして俺は本を借りに来る人のために図書委員としての仕事をしている。


当番は半日交代で1人ずつなので現在カウンターは俺の独壇場。


夏休みの学校の図書室で読書できるのは良い環境なのである。


なぜなら、この暑いなか学校に行くのは少々めんどくさいが、図書室はクーラーが効いているのだ。


おかげで母さんも俺の部屋のクーラーによる電気代がかからないから嬉しいだとか何だとか。


それにしても最高。涼しい部屋で読書ってのはいいねぇ。


ちなみに今読んでいるのは『恋愛小説の最高峯』と銘打ってある小説。


男の俺がこういうのを読むのは恥ずかしいけど結構ハマる。


もちろん恋愛ものだけでなくミステリーものやSFものなんかも読む。



「すいません。これ借りたいんですけど」



おっと。たまに借りていく人がいるんだよな。


本を読んでるばかりじゃなく、仕事もきちんとしなくてはならない。


自分の本を懐にしまって貸出本を受け取ろうと相手を見たら、知り合いだった。



小野寺(おのでら)さん?」


(すめらぎ)くん?」



本を手に持っていたのはクラスメートの小野寺さん。


彼女はそこそこ顔も良く、才女であり、隠れファンも多い。


ただそれは友人に聞かされた情報であって俺自身は彼女のことをあまりよくは知らない。


知っているのは顔と名前ぐらいのものだった。


きっと彼女も俺と似たようなものだろう。



「皇くんって図書委員だったんだ?」


「うん、まあね。俺、本が好きだから」


「珍しいね。男の人ってあんまり本は読まないんじゃないかな?」


「そうでもないよ?電車とか乗ると男でも読んでるって」


「そういえばそうかも」


「それで、本を借りに来たんだろ?」


「あ、うん。これを」



タイトルからそれは恋愛小説とわかった。



「ふーん。恋愛小説……ねぇ」



俺のその言葉にちょっと反感を覚えたのか、きれいな眉がピクっとつり上がった。


しまった。余計なこと言っちゃったなぁ。



「そういう皇くんも何か読んでたよね?何を読んでたの?」



声が少し不機嫌だった。次からは言葉に気をつけよう。


それで、どんな本を読んでたっけ?


懐にしまってあった本を取り出して見ると………そういえば恋愛小説だった。



「ふーん。恋愛小説……ねぇ」



さっき俺が言った言葉を皮肉たっぷりで真似された。


何でよりによって今日に恋愛ものにしたんだろうか。



「いつもこういうの読んでるの?」


「きょ、今日はたまたま恋愛ものだけど、ミステリーとかSFも読むよ」


「……ちょっと顔が赤いよ?」



そんなに恥ずかしさが顔に出てたのだろうか。


ちょっと顔をペタペタ触ってみる。



「ふふ。冗談だよ」


「ええ!?だ、騙された……」


「ごめんごめん」



とか言いつつも、してやったり!って感じの顔をしていた。


いつの間にやら会話の主導権は彼女が握っているようだ。


でも、何故かそれを嫌だと思わなかった。



「あ、その本私も持ってるよ」


「へぇ。小野寺さんは小説とかよく読むの?」


「小野寺じゃなくて香織って呼んで欲しいな。苗字で呼ばれるのってあんまり好きじゃないから」


「じゃあ……香織さんは小説よく読むの?」


「うん。資料としてよく読むかな」


「資料?」


「実は私、ネット小説書いてるの」


「え?小説書いてるの?」



アマチュアで実際に書く人は見たことがないから少し驚いた。


ちょっと読んでみたいな。



「うん。まだまだ下手だけどね」


「……ねえ。良かったら俺にも見せて欲しいんだけど」


「え?ええっ!?」



香織さんが少し大きな声をだしたもんだから図書室にいる人がジロジロとこっちを見ていた。



「図書室で大声を出してはいけません」


「ご、ごめんなさい……。まさかそんなこと言われるって思わなかったから」


「で、俺にも見せてくれない?」


「うぅ……。どうしようかなぁ?」


「絶対に笑わないからさ」


「ホントに?」


「ホントだ」


「分かった。いいよ。でも内緒にしてね?」


「了解」


「えっと、『小説家になろう』っていうサイトで『暖かな想い』って検索して。それと同じタイトルがあるから」


「ふむふむ」


「そこから他の小説にも行けるようになっているから」


「わかった。帰ったら見てみるよ」


「あの……。もし良かったら、サイトのほうじゃなくて私のケータイに感想くれないかな?」


「ケータイに?」


「う、うん。そのほうが色々と聞けるかなぁって。……ダメ?」



首を傾げて否応を訊くその仕草に少しドキッとした。



「いいよ。じゃあアドレス交換しよっか」



その場でアドレス交換を済ませた。


『小野寺 香織』という文字がアドレス帳にあるだけで、なんとなく華があるような気がする。


見ていると少しだけ顔がほころんだ。



「じゃあ、感想よろしくね」


「まかしといて」


「絶対に笑わないでね?」


「笑わないって」


「あ。そういえば私、本を借りに来たんだけど」


「すっかり忘れてた……。この一冊だけ?」


「うん」


「夏休みだから三冊まで借りれるよ?」


「あ、そっか」



うーん、と考え込んでいる。


ふと顔を上げて、俺の頭の上方に視線を移していた。


何を見てるんだ?



「やっぱり一冊でいいよ。また金曜日にくるから」


「あ、そう?じゃあバーコードは……と」



ピッ



「はい、どうぞ」


「うん。ありがと」


「どういたしまして」


「…………」


「…………」


「そ、それじゃあ私はもう帰るから」


「あ、そう?それじゃバイバイ」


「うん、バイバイ皇くん」


「あ、あのさ!」


「うん?」


「俺の名前、亮一だから」


「……バイバイ、亮一くん」



少しぎこちない別れの挨拶をして香織さんは図書室を出て行った。


あまり喋ったことなかったけど、いきなりアドレス交換しちゃったな。


俺と気が合うみたいだし、可愛いし。


結構いいかも?


少し弾んだ気分になった。




そういえば、彼女はさっき何を見てたんだ?


確か俺の上の方を見てたよな……。


振り返って少し上を見ると、当番表が張ってあった。


次の俺の当番は金曜日だ。


同時に彼女の言った言葉を思い出す。



『やっぱり一冊でいいよ。また金曜日にくるから』



胸がトクンっと鳴った気がする。


本とは別に、図書室に来る楽しみがまた1つ増えた。


早く金曜日来ないかなぁ。


最後まで読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ついつい読み入ってしまいました♪ この小説にも出ていた『暖かな想い』も 読んでみたいなぁとおもいます(^w^)↑↑ これからもがんばってください♪
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