強力な視線
教室に入ってきたのは、20代後半の女性だった。俺は彼女を見て少し違和感を感じた。俺はそれが何か気づくのはもう少し後のことになるのだった。
「私は君たちの担任になった森本彩だ。これからよろしく頼む」
「これから君たちは入学式に出てもらう。それが終わったら、一度教室に戻ってきて明日の授業について説明させてもらう。その後は各自、家や寮に帰ってもらう。わかったか?」
「はい!」
とクラスの全員が声を上げて返事した。
「あとは入学式の時に新入生代表をするものたちは職員室まで来い」
と彼女は自分の自己紹介と今日1日の予定を説明した。先生の話を聞いた限りでは大変なのは明日からなのだろう。
それより俺はまず用事片付けなくてはいけないと思い、席を立ち上がった。すると丈が俺に話しかけて来た。
「どうした?トイレにでも行くのか?」
「違うぞ。俺は新入生代表だから先生のところに行かなきゃいけないんだ」
と答えるとなぜか丈はS級モンスターを見た時の勇者みたいな顔をしていた。どうしてそんな驚いているんだと聞こうと思ったが、それより先に丈が口を開いた。
「お前本当に新入生代表なのか?」
「そうだと言ってるじゃないか」
「お前の入試の点数てもしかして...」
「5教科全て満点だが、それがどうした?」
丈は思考が停止しているのか、一向に質問に答えてくれない。数十秒ほど経って、ようやく思考が再起動したらしく、ようやく答えてくれたのが、
「いやお前って頭良かったんだなーって思っただけだよ」
となんかとてもバカにされた気分だが、まぁこんなの勇者時代のバカにされ方と比べれば足下もにも及ばないがな。
「俺は職員室に行くから。また後でな」
「わかったよ。後でな」
俺は友達との会話終えて、教室を出ようとするとまためんどくさいのに捕まってしまった。
「龍君、一緒に職員室行こうよー」
そう俺はまたもや葵に捕まってしまったのだ。そのうえ葵は自分の体重を俺にかけてくるので、自然とお互いの体がくっついてしまうのだ。
そんな状況を見ている周りの人たち(主に男子)はあまりよく思わないらしく、俺に向けられる視線が一段と強くなってしまった。そんな強力な精神攻撃に耐えられるわけもなく、
「さっさと行くぞ」
と強引に葵を体から離して職員室に向かったのだった。