きっと、どれだけ後悔して懺悔しても。時間はムカつくけど、進むんだよね
「なんで、俺が蒼葉遠夜だったんだろう。前の身体は、十夜のなのに。勝手に身体貰ったからバチがあったんだね。もし、身体を勝手に貰わずにいたら、辛い思いしなかったのかなぁ」
そんなことない。遠夜が遠夜であったから、七星は惹かれた。守らないとと思っていた。
遠夜の中の人格は、仮であろうが我から遠夜を守ろうと必死だったんだ。きっと、海月もそうだ。
好きだけど、愛してるけど。守りたい。でも、今の遠夜にどう接すればいいのか。
恐らく悩みに悩んだ結果。分からなくなったのだろう。遠夜と距離を置いてしまった。
その結果、遠夜は嫌われたと思い何もかも憎んで恨んでしまった。
「こんな話、してごめんね。でも、十夜には言わなきゃいけないと思って」
我の肩に額を押し付け、遠夜は最後にそう言った。
「遠夜が、謝る必要はない。我は、遠夜の片割れだ。片割れが悩み悩んでいれば、解決したい。それに、遠夜のことならなんでも知っていたい」
「ふふ。ありがとね」
我から離れた遠夜は、少しすっきりした顔で笑っていた。まだ、何か残っているだろう。
でも、無理に全部聞くつもりもない。遠夜が話したかった時に聞く。それだけ。
曇天の空が薄っすらと晴れていく。もうじき、夜のとばりが降りるだろう。
「遠夜、帰ろう」
立ち上がり、愛しの片割れに手を差し伸べる。今の遠夜には居場所がある。
安全な場所。そこが、今度こそ奪われてなくなったら。遠夜は、完全に壊れる。
だからというわけではない。儚く脆い彼を慈しみ守る。それが、肉体を持って生まれた我らの使命ではないのだろうか。
⌛
季節はずんずん進んで、ただいま初夏です。はい、暑い。進級した我と遠夜は同じクラスだ。
進学校のくせに、クーラーなんてない。だが、いい点もある。
それは、遠夜が薄着なことだ。だが、だがな? 暑いからといって人前で脱ごうとするな。
遠夜曰く「前世は、傷だらけの身体で人前で脱げなかったからつい」なんて言った後に、てへと笑う遠夜。
危うく許しそうになった。なんだ、てへって。そんじゃそこらの女どもより可愛かったぞ。
録画、録音、激写、全てしたかった。だが、あまりの可愛さに我は鼻血を出して倒れたらしい。
うん、仕方ない。
で、そんなことがあったので遠夜に薄着は許可しつつ人前で脱ぐのを禁じた。
「とーおーやー。暑い……。ふぇえ」
ふぇぇ……?! 待って、可愛い。
頭がショート寸前。
危うく鼻血を出しそうになりながらも、我は無言で下敷きで遠夜に風を送る。
「ふわぁ、気持ちいい……」
「そ、そう、か。よかったな」
腕が疲れようとも、お姫様に風を送る。凄く気持ちよさそうにしてるからな。
クラスメイトが羨ましそうに見てても、ダメ。これは、我の仕事。
まもなくして、予鈴が鳴る。ちっ。憩いタイムが。