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我らの宝物  作者: 朝風由紀菜
1/10

地獄より怖いものはあるらしい。

 蒼葉遠夜に手を出してはならない。

 何故って?

 地獄にいた方がマシだと思う報復を受けるからだ。



 ⌛



 カーテンを閉めず開け放たれた窓から、朝日が差し込む。眩い光に目を細めながら十夜は目を覚ました。

 腕の中の片割れの寝顔を見つめる。何か幸せな夢を見ているのかもごもご口を動かしては笑っていた。

 ああ、本当に。遠夜は可愛い。本当に同じ母体から生まれ出たのか疑問を抱くほど。

 サラサラのダークブラウンの髪は肩ほどまで伸びている。少女かと見間違うような顔立ち。

 雪の様に白い肌。紅い唇。華奢な身体。

 大きな瞳の色は、万華鏡のように何色にも輝く。

 コロコロ変わる表情は見てて飽きない。時計に視線を遣ればいい加減起こさなきゃいけない時間だ。

 ああ、もったいない。

「遠夜。朝だ。起きろ」

 細い肩を折らないように優しく手を置いて揺さぶる。小さく呻いて、遠夜は目を覚ました。

 ふわふわとする視点が、徐々に我に当たる。我を視界に収め遠夜は、ふんわりと笑った。

「おはよう、十夜」

 男にしては少し高く甘い声。本当に、遠夜は可愛い。全てを魅了してしまう。


 さて、そんな幸せな朝の時間。身支度を終え朝食を終えた我達は高校に向かうために外にいた。

 遠夜を乗せるため自転車を駐輪場から持ってくる。

「いい? 私の言うことを復唱してね? 知らない人には着いていかない。クレープ奢ってあげるって言われても断ること」

「う、えっと。知らない人にはついていかない。クレープ奢ってもらってもついていかない」

 次男の講義を遠夜は受けていた。これ、毎朝の光景なんだよな。これをしないと長女の海響みおんは後をつけてくるし。

 なので、毎日毎日繰り返す。

「違うでしょ。遠夜。奢ってあげるって言われても、だよ」

「ついていかないよ」

 ようやく終わった講義。遠夜は、我のとこに来れば自転車のかごに鞄を入れた。

 先に我が自転車に乗れば、遠夜が後ろに乗る。腰に回される腕。落ちるなよと思いながら、ペダルをゆっくり漕ぎ始めた。

 坂道を上る。遠夜は凄く軽いので落ちないのか毎日不安だ。

 そういえば、今日はテストだったかな。

 数十分、自転車を漕いで、高校に着く。駐輪場で自転車を停めて遠夜が降りたのを確認して彼の手を引く。

 ふらふらしている片割れは、すぐにどこかに行ってしまう。離さないようにと手を握って下駄箱に向かう。

「あ」

 先に下駄箱を開けた遠夜が何かを見つけたのか声を出した。そちらに視線を遣る。

 ちょこんと遠夜の内履きの上に置かれた手紙。ああ、ラブレターか。

「この人十夜と間違えてるね」

 なんて言う片割れはかなり鈍い。

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