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8話 死亡フラグ

 

「「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」


「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 叫びを廃屋に散らす3人。

 無言で滝のような冷や汗をかく俺。

 皆パニックに陥っていた。

 軽い気持ちでこんなところまで来て、こんなに生々しい物を見るとは思っていなかったのだろう。


「死体が無いのは不幸中の幸いだったな…」


 魔法使いの遺体は回収されたのか、骨すら見当たらない。

 そんな物があったら3人とも卒倒し、俺も大きな声で叫んでいただろう。


「いや!いや!早くここから出る!」


 泣きながら血の付いたカーペットを踏み散らして外へ向かうノイ。

 その足元が不自然に膨らんでいる。


「待て!踏むな!!」


 走るノイを突き飛ばし、膨らんでいる床を越えさせる。

 ノイは床を越えることが出来たが、代わりに俺の体がそれを押してしまった。


「ぐぅっ!」


 腕に大きな針が刺さる。

 幸い骨から外れていたが、強い痛みが襲ってきた。


「あぁ、アイン…」


「早く出て行け!俺も行く!」


 かすれた声を出すノイと後ろでパニックになっているリラとマッスに呼びかける。

 リラはいつの間にか倒れていた。失神してしまったらしい。


「マッス!リラを担いで行け!

 触り放題のチャンスだぞ!」


「ハッ!

 アイン!こんなときになに言ってんだ!!」


 パニックから立ち直ったマッスがリラを担ぎ、穴が空いた部屋の壁に走る。

 ノイは既に出ていったことを確認している。後は俺だけだ。


「フンっ…!」


 針を引き抜こうとするが、かなり深く刺さっているのか、子供だから力が出ないのか抜けない。


「アイン!」


「いいから行け!俺も後で追いつく!

 リラは任せたぞ!」


「さっきからリラ、リラって人をからかいやがって…

 ああわかったよ!」


 少し立ち止まるが、俺の言葉を聞いて外へ出た。

 後は俺だけ…


「……力が…出ない…」


 刺さっている腕から全身に痺れが広がっていく。

 毒入りだったか、こりゃ、また、死ぬ…のか…な……

 ………







「……ぁ…」


 小さなうめき声が聞こえた。

 それが俺のものだということはのどの震えですぐに分かった。


『気が付いたようじゃな。』


 次に聞こえたのはさっきの幽霊の声。

 目をゆっくり開けると、月明りが差す暗い部屋が見えた。壁に穴は無い。


「俺は、生きて…」


『心配するな、生きておる。

 それと、この部屋に罠は無い。部屋から出れば罠だらけじゃがな、フェッフェッフェ…』


 腕の傷も治っている。痺れは少し残っているがすぐに回復しそうだ。


『貴様らの行動を見ておったが小僧、お主は賢いのう。

 状況に左右されぬ冷静な思考に、扉を開ける際の的確な指示…歳に見合わぬ素晴らしいものじゃった。』


「そいつは、どうも…」


 意味が分からない。

 さっきまでこの幽霊は俺たちを愚かな侵入者とみなし、容赦なく排除しようとしていた。

 なのに腕の怪我は治され(この状況では幽霊が直したとしか思えない)、行動を賞賛された。全く持って幽霊の意図が読めなかった。


『混乱しておるようじゃな。

 しばらくそこで状況を整理すると良い。』


 ぼやけた輪郭が消える。残されたのは俺だけだ。

 痺れも今の会話の間に大分取れ、動けるようになってきた。

 部屋を見渡してみる。

 目の前の壁にあるのはドア。ここを開ければこの部屋から出られるのだろうが…出ていけば罠だらけの廊下に出る。痺れが抜けきっていない今出るのは危険だ。

 この部屋には罠は無いと言っていた。どこまで信用できるかは分からないが、その言葉通りならドアノブに罠は仕掛けられていないだろう。まあこっちは後だ。


 他にあるのは泥まみれの木箱と、部屋の隅にある机と、その上にあるろうそくが刺さった燭台。

 ご丁寧にマッチまである。

 罠は無いという言葉を信じ、マッチに火をつけろうそくに火をつける。

 ……爆発はしないようだ。実はろうそくじゃなくてダイナマイトと言うことは無かった。

 明かりができたので更に部屋を見てみる。

 すると机に引き出しがあることに気付いた。

 引き出しを開けてみる。


「………本?」


 剣も火も飛び出してこず、あったのは2冊の本。

 片方には日記と表紙に書いてあり、もう片方の本の表紙は泥だらけで題名が見えなかった。

 まずは日記から読むとしよう。この廃屋の罠を攻略するヒントがあるかもしれない。

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