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4話 土下座品評会

突然サブタイでボケていくスタイル。

 マッスは俺に文句を垂れた後、登校してきたリラを呼び出した。

 その時リラは俺の同行を条件にし、マッスの呼び出しを受けた。昨日の一件が響いてしまった結果だろう。

 俺としても影から付いて行くつもりだったので了承した。マッスもそれが条件ならと渋々了承した。

 そして今、校舎の裏には俺とマッス、そしてリラがいる。


「…はなしってなに?」


 最初から不機嫌オーラ全開のリラ。

 一方的に怒られた後ではこれも仕方ない。


「…きのうは、わるかった。」


「なんていったの?」


「きのうはつきはなしたりして、ごめんなさい!」


 マッスははっきりと大きな声で謝罪した。


「……ああ、あれね。

 かんたんにゆるすとおもう?」


「…!」


 リラの怒り、というか迫力に傍観者のはずの俺も飲まれかけている。

 当事者のマッスはかなり堪えるだろう。軽く涙目になっている。


「……あれを使え、マッス。」


 完全に飲まれているマッスに小声でアドバイス。

 ハッと正気に戻ったマッスは素早い動作で膝と手を地面につける。


「もうしわけありませんでしたああああああああああああ!!!!」


 そして誠意(大声)をぶつける。

 自主練の成果か、昨日よりも大きな声を出すことに成功したマッス。


「……なにそれ?」


 それを見るリラの目は冷たい。

 土下座と言う文化が無いこの世界。その住人にそれを見せても何やってんだコイツ、である。

 そこで、俺の出番が回ってくる。


「こ、これは遠い異国に存在すると言われる幻の謝罪、ドゲーザ!

 恥も外聞もプライドも投げ捨てて相手への誠意をこれでもかと表現する!

 その姿勢は最早バカバカ(神々)しい!

 そして相手の慈しみを全力で引っ張り出そうとする執念はもっと素晴らしい(哀れ)!」


 内心に黒いものを秘めながらマッスの土下座を解説し、褒める。

 これでちょっとはリラの視線が柔らぐはず…!


「……」


 おうのう。


「………あたまあげて、もうおこってないから。」


 どこがと訊きたくなるほど冷めた声だったが、その言葉から嘘偽りは感じ取れないので本心なのだろう。


「………」


「おい、もう許してくれるってよ。」


「………」


 なんで立たねーんだコイツ。


『その姿勢になったら何を言われても動じるな、』


 ……あぁ~…


「……立て。

 許しを得たんだ、頭を上げなきゃ失礼だぞ。」


「………」


「…アイン、いこ。」


「……そうだな。」


 俺たちが立ち去った後も、マッスは立ち上がらなかった。


「アインくん。」


「なんだ?」


「ありがとう。」


「え?何がだ?」


「色々と。」


「?」


 何を言ってるんだ?

 同行してくれたことか?それ以外だと…んー?

 どうでもいいが、この後マッスは一時間目の授業に遅刻した。

 んで、また文句言われた。解せぬ。







「いっしょにめしおうぜ!」


「いいけど、アインくんもいっしょね!」


 さも当然のように俺の同行を強制するリラ。

 俺は別に良いのだが、マッスの為に一肌脱いでやろう。


「せっかく仲直りしたんだ、2人で食べて旧交をあたたたたたたたた!」


 二度目のアイアンクロー。“貴方を放さない”という強い意志が込められているような気すらしてくる。

 こりゃマジで卒業の後も……いや、そうはさせない。

 前世で経験したこともあり、幼馴染同士マッスとリラの恋愛は応援したい。


「わ、わかった!ギブ!ギブ!!」


 が、今回は折れよう。超痛い。


「それでよし。」


「すまない…マッス…」


 拘束が外れた頭を押さえながら謝る。


「……そうか。」


 マッスは少し残念そうだが、同時に諦めもある表情を見せた。同情してくれているのだろうか。


「あ、じゃああたしもいれて~」


 そこにノイが加わった。

 そう言えば昨日声を掛けてもらっていたが、結局一緒には食えなかったな。


「いいよ!みんなでたべよう!」


 快く了承するリラ。

 男子二人に決定権は無い。女は強い。

 俺の席の周りにある他人の机を寄せ、昼食の用意をする3人。

 俺も自分の席に座る。


「ねえねえ、きのうリラとマッスってけんかしてたよね?いつなかなおりしたの?」


「あさだよ!

 マッスがあやまったからゆるしてあげたの!」


 俺の活躍があってな。


「へー!

 そういえばあさ、リラちゃんとマッスくんと…アインくんもいかなかった?」


「うん、わたしがつれていったの。

 きのうけんかしてたから、またなにかいわれるのかなっておもってたんだ。

 アインくんはそのごえい!」


 俺護衛。

 …どっちかというとマッスの。


「いわねーよ!

 おれだってきのうのことはほんとうにわるかったとおもってるし、なかなおりできてよかったっておもってる。」


「それもこれも、みんなアインくんのおかげだね!」


「うん!」


「ちょっと待て、なんで俺なんだ?」


 今の流れで全部俺のおかげはおかしい。

 まあ、俺が同行の条件を呑まなければ話すらしなかったのかもしれないが…


「だって、リラちゃんとマッスくんになかなおりするようにしたのはアインくんじゃん!」


 ノイの言葉にドキリとする。

 仲裁の現場は一部を除くクラスメイトに見られていた訳だが、なんでばれてるんだ?リラもマッスも話した時は2人きりだったはずなのに…

 隠している訳ではないが、言ってもいないことを言われれば驚く。


「ちょっと、話しただけだ。

 メンタルヘルスケア的なアフターフォローの様なカウンセリングモドキだ。」


「むずかしいことばならべたってごまかせないよ、あたしのめがしろいうちは!」


「黒いうちだろ、白目剥いてるじゃねーか。」


 どこでそんな言い回しを中途半端に覚えたんだノイ(コイツ)


「みんなのまえでいってたじゃない。ほうかご、こうしゃのうらでまってるって!

 それに、リラちゃんがアインくんのべんとうをもっていってたから」

「付けて来てたって訳か。」


「そう!だからとぼけてもむだよ!」


 刑事もののドラマでも観たのだろうか。

 というか、この異世界でも刑事ものの物語があるのだろうか。異世界でも意外と人間が考えることは同じだな…


「え!?マッスにもなにかいってたの!?」

「リラにもか!?」


 2人の声はほぼ同時だった。


「…2人が仲直りできるように仕向けたのは俺だ。認める。」


「ずいぶんあっさりはくじょうしたわね!」


「別に悪いことをした訳じゃない。むしろ良いことじゃないか。」


「それもそうね…

 じんもんのけっか、アインはしろ!」


 悪意のある仲裁があるか。どうあっても白じゃないか。

 その後もたわいのない話を続けたた。

 それからというものこの4人で良く集まるようになり、どんどん仲を深めていった。

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