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15話 願いは近い

こちらに投稿したのはかなり久しぶりですね。

新作の筆を進めながら、色々と考えたのですが…

…『転生したけど人生やり直す気は無い』は打ち切りとさせていただきます。

現在進行中の小説と同時進行で書く自信、グダグダと書いて行ける自信が無いと言うのもありますが、書きたい新作のアイディア、というか設定が沸いてきてしまって…まあ、そっちは書くかどうかわかりませんが。

と言う訳で、いきなり想定していたエンディングまで飛びます。前話から6年ほど経っているということでお読みください。

このような措置を取ってしまった事、本当に申し訳ありませんでした。

 冒険者ギルドの扉を閉じる。

 もう俺がここに来ることは無いだろう。何故なら――


「もう、この旅も終わりかぁ…」


「なんでも終わりはあんだろ。それが今ってだけで。」


「おやマッスさん、随分とアインくんに染まってきましたねぇ~?

 ちょっと嬉しそうなのは恋敵が居なくなるからですかぁ?」


「ちげーよ! 俺だってできんならアインと別れたくねーっての!」


 ――この旅はもうすぐ終わるから。

 随分と賑やかになったものだ。始めは俺とリラだけだった旅も、旅先でマッスと再会し、ノイと再会し…4人全員そろった。

 …小学校(エメン)時代に戻ってきたようだ。体は皆大きく成長しているが。

 あれから紆余曲折を経て、俺は昔聞いたおとぎ話に従って二柱の神の試練を受けながら元の世界へ帰れる方法を模索していた。

 苦節六年。元の世界へ帰る方法は見つからなかったが、とうとう二柱の神の試練を突破し――ついに今、最高神に願いを叶えてもらおうとしている。

 思えば色々なことがあった。

 先祖に魔法使いの才能が無く、魔法使い狩りから逃れた魔法使いの末裔と戦ったり、地竜がアースドラゴンだと思って戦ったら実はミミズでしたってオチだったり…

 …でも、それは今日で終わる。

 とうとう、俺はここまでたどり着いた。

 全ては前世に帰る為。秋華(前世の彼女)にまた会う為──


「…どうしたの、アイン?」


 ──そのはずだった。

 しかし、俺は迷っている。

 秋華とはもちろん会いたい。でも、リラと会えなくなるのも嫌だ。

 …前世の世界に行った後、この世界に戻れるとは限らない。

 俺はリラが好きだ。リラも俺を好きだと言うことは知っている。

 だからマッスは自分の気持ちを押し殺してまで俺とリラを応援してくれてるし、ノイもさっさとくっついちゃえ、と言っている。

 でも…


『嶺二…』


 でも、秋華のことを忘れることは出来ない。

 目の前に最高神の神殿(目的地)があると言うのに、その扉を開くことが出来ない。踏み出すことが出来ない。

 16年も燻ぶらせてきた願いなのに。

 ずっとずっと、20年以上思い続けた人が待っているはずなのに。

 俺は――


「…ねえ皆!

 せっかくだし、この街を見て回らない!?」


 …気を遣わせちゃったか。

 しばらく立ち止まっていると、リラが一つの提案を持ちかけてくれた。


「お、良いなそれ。」


「それは素晴らしい提案! 果報は寝て待てってね!」


 ノイは相変わらず諺の使い方がずれてるな…

 その後の話し合いで全員散り散りになって町の探索をし、夕食前くらいの時間に最高神の神殿の前に集合、全員そろってから入ることにした。

 俺は皆と別れると、真っ直ぐ図書館へ向かった。異世界に渡る方法が書かれた書物を探すためだ。

 最高神に前世の世界に行くという願いを叶えてもらう直前というタイミングではあるが、もしかしたら前世の世界に渡った後にこの世界に戻ってくる方法もあるかもしれない。まあ、期待はしていないが。

 俺はいくらかの本と、ついでに…


「…?」


 神の試練を行う原因となった絵本、『神様の奇跡』を手に取った瞬間、若干の違和感を感じた。

 一つ前の村で同じ絵本を見たが、表紙が少し違う。心なしか少し厚いような気もする。

 だが、あまりにも小さな違和感。俺はまあいいかと違和感を放り出し、机に積み重ねた。


「やっぱり、ここに居た。」


「…リラ。」


 新しい街に行くたびにこうして図書館に向かっていれば、俺がここに来るという予測は容易につけられるだろう。

 そのまま隣の椅子に座り、口を開いた。


「……アイン。

 神様へのお願いって、本当にただ世界を見てみたいってだけなの?」


「……」


 …リラには別の世界というのに興味があるとだけ言っていて、前世の世界に帰るという目的どころか、前世の話すらしていない。最高神へのお願いと言うのも『色々な世界を見てみたい』だ、と言い続けていた。

 それでも、俺が何かを隠しているというのはバレていたらしい。そういう予想をしていなかったわけではないが。


「正直に答えて。」


 その目は嘘は通じないと言っていた。

 目を逸らすことすらできない。緊迫とした空気がしばらく流れ。

 やがて俺は、積み重ねた本を手に取り、目を通し始めて告白した。


「…俺の願いは世界を見ることじゃない。

 異世界に行くことだ。」


「……それくらいわかるよ、いつも探して読んでる本を見たら。

 アインには行きたい世界があるんじゃないの?」


「…ある。」


「そこに行ったら、私達とはもう会えないの?」


「……」


「戻ってこられないの?」


「……」


「戻ってくる気は無いの?」


「…いや……いや、なんでもない。

 多分、戻ってくることは出来ないと思う。」


「アインはそれでいいの?」


「………」


 良くない。

 出来ることならこの世界にも居たい。でも、前世の世界にも帰りたい。

 言えなかった。言いたくなかった。

 それはまるで、リラを、秋華を、裏切ってしまうようで。


「……いい。」


 そんな時、口をついて出たのは心にもない言葉だった。

 しまった、と思うも遅い。


「……そう。」


 既にリラの目は伏せていた。

 だが、前言の撤回は出来なかった。どうすればいいのかわからなかった。


「………」


 リラは無言のまま、図書室を後にした。

 俺は追いかけることも出来ず、積み重なっていた本を再び手に取った。

 その内容は、さっぱり覚えていなかった。







「…リラとアイン、妙に落ち込んでるな…」


「これから悲願達成だっていう時に、なんでそんな顔してるの?」


「「……」」


 集合時間には全員間に合った。

 後は神殿で最高神に願いを言うだけだ。

 もう、それ以外のことは考えないようにしていた。

 この世界のことも、リラのことも。

 そもそも、ここまできてどうして迷わなきゃならなかったんだ。16年間の苦労を台無しにするつもりか。

 やっぱり無しで、なんて言ったら事情を知らなかったとはいえ付いて来てくれた3人にも申し訳が立たない。

 …騙しているのだろうか。俺は。

 本当の目的を隠して。居なくなることを黙って。

 俺は…誰から見ても最低なのだろうか。


「……」


 歩みを止めるのは止めた。

 そう考えている間にも、俺の手はその扉を開け、俺の足は前に進んでいる。

 他の皆は後ろについて来ている。マッスも、ノイも、リラも。


『そなたが神の試練を超えしものか?』


 神殿、というよりも協会のようだった。

 入ってすぐに多くの長い椅子と祭壇が見えた。

 先の声は祭壇に近付いた時に聞こえてきた声だ。脳に響くが、何故か周りに反響しているような気はしない。テレパシーのようなものなのかもしれない。


「うおっ、なんか聞えて来た…」


「びっくりした…」


「……」


 後ろの3人にも聞こえていたらしい。

 恐らく、これが最高神ウストの声…

 神の声を無視するわけにもいかないので、返答する。


「はい。俺たちが自然神ジゼン、技術神ワジュの試練を超えた者です。」


『そなたの願いは?』


「俺の願いは…俺の、前世の世界に行くことです。

 前世の世界で、恋人だった秋華にもう一度会いたい。」


 それは、神への願いであり、懺悔でもあった。

 振り返ってはいないが、後ろに居る3人はきっと驚いているだろう。

 俺が前世の記憶を持っていた事。

 俺が前世の恋人に会いたいと思っていた事。

 その事は、誰にも話していなかったから。


『…分かった。

 と言いたいところだが。』


「…?」


『自然神と技術神の試練を受けたというのに、我のみ試練が無いとでも思ったか?』


「―――!?」


 第三の試練?

 おかしい、あの絵本にはそんなことは…


『そもそも、そなたの願いを叶えたとして我に利点は無い。』


「じゃあ、あのおとぎ話の時は…なんの利点があったんだ?」


 神を相手に不遜な物言い、だが、繕う余裕は無かった。

 死ぬ気で試練を突破してきたのに。

 もう少しで秋華に会えるというのに。

 また、立ちはだかるのか。


『この街のお伽話は読んでいないのか?』


「……」


 読んではいたが、覚えていない。いや、内容自体が頭に入らなかったのだ。読んだとも言えない。


『…まあいい。では、最後の試練を言い渡そう。』


 …ここまで来たんだ。

 なんでも来い、絶対にその試練を――







『そのリラと言う少女を贄として差し出せ。』






 ――――――

もう少し続きます。

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