13話 進路
一ヵ月ぶりです。
このまま六歳編(仮称)を続けたら終わらない気がするのでちゃっちゃと旅に出ます。
と言う訳で、今回は前回から四年。エメン卒業後から始まります。
『ねえ、アイン。』
『どうしたリラ?』
ガヤガヤと騒がしい教室。
もうすぐ先生が来てホームルームなので全員席には座っているが、その喧騒は全く衰えていなかった。
今朝卒業式は終わったはずなのに―――なるほど、夢か。
『アインはエメンを出たらどうするの?』
そんな中、前の席に座っていたリラが訊く。
『俺は…旅に出ようと思ってる。』
『えーっ!?旅!?どうして!?
アインは私達と居たくないの!?』
このオーバーなリアクションも今朝見たとおりだ。今朝の夢か。
『そう言う訳じゃない。
でも、俺は旅に出たいんだ。
いろんなものを見て、いろんなことを知って、いろんなことをするために。』
俺の口も、俺の意思に関係なく今朝と全く同じ言葉を紡ぐ。
『だったら私も付いて行く!マッスにもノイにも言う!
皆一緒なら楽しいよ!』
『確かに楽しそうだけど…駄目だ。
旅っていうのは危険な物なんだ。いつ何が起きてもおかしくない。
俺は皆をそんな目に遭わせたくないんだよ。
…そんなに寂しそうな顔をするな、二度とこの村に帰ってこないって訳じゃない。
俺が帰る場所はここだし、いつかは戻ってくるつもりだ。
だからお前達は俺が帰る場所で待っててくれ。俺が帰ってくるまで。』
『――――――』
ゆっくりと目を開ける。
外は暗いが、完全な闇ではない。月明りのおかげである程度は見える。
俺は用意していた荷物を背負うと、靴を履いて窓の外へ身を投げ出す。
今日はこの村を発つ日だ。
エメンを卒業した俺は進路を冒険者にした。
理由は冒険者として旅に出て、元の世界へ戻る手段を探る為。リラには世界を見て回りたいと言ったが、全くの嘘では無いものの俺の目的からはややずれている。
旅には一人で行く予定だ。皆には準備があるから卒業式の二日後に出ると嘘をついたので、卒業式の夜の今、誰も見送りも付いて行く準備も出来ていないだろう。
騙したようで罪悪感があるが、これも皆を危険な目に遭わせないためだ。
「とはいえ、緊張するな…」
家族以外には誰にも言っていない旅立ち。
それを邪魔されないよう、誰にも見つかる訳には行かない。
人に見られれば不審者として追いかけられることも考えられる。もしそれがあの3人であれば準備ができていなくても付いて来るだろう。それは避けなければならない。
周囲を警戒しながら、物陰に隠れつつ村の出口まで進んでいく。まるで潜入系のゲームでもやっているようでドキドキする。
…まあ、誰も出歩いてないけどな。深夜だし。
誰も居ないのにコソコソしているのが虚しく、馬鹿らしくなってきた俺はやがて普通に歩き始める。
「げっ…」
村の出口を見た俺は近くにあった家の壁に隠れる。
「ん?」
「今何か…」
「足音だ!」
目敏い奴らだ…流石、四年も俺と一緒に居ただけのことはある。
出口に居たのはリラ、マッス、ノイのいつもの三人。
あの場所以外は魔物や獣対策の為に高い柵があるので出られない。いかに三人の注意を逸らして出て行くるかがポイントになりそうだ。
今、三人は俺の足跡に気付いてこちらに向かってきている。この家を周って行けば出られるか?
いや、戻ってくる時に見つかる可能性もあるな…もっと遠くまで離れさせないと厳しそうだ。
とりあえず、今この場所を調べられるとバレるので家の角に移動して隠れる。
「気のせいだった?」
「気のせいじゃないよ、コレ。」
「足跡か…こっちに続いてるな。」
……詰んだ気がする。
柵に捕まって移動しても普通に歩いている向こうの方が早いし、足跡を付けずに歩くことは出来ない。
浮いていければと思うが、魔法はもう使わないと決めている。
足跡だけで時間を稼ぐか?
それではダメだ。こちらは三人から隠れていて忍び足でなければならないが、向こうは別に誰かから隠れなければならないわけではない。足跡を走って追ってきたらすぐ見つかる。
走って逃げるか?
音を立てたら自分の居場所を宣言するようなものだ。当然向こうも走って追ってくるだろうし、三人を振り切るのは難しい。
別の場所にいると錯覚させて逃げるのが一番だろうが…確実に足跡は使えないだろう。
やはり音か。
月明りである程度は見えるとはいえ、それでも夜なので暗い。遠くの足跡や影の中の足跡はよく見えないはずだ。
丁度向こうの家の影に積まれた薪がある。あれに石でもぶつけて派手に崩せば行けそうだ。
手ごろな石を掴んで投げる。
カッ…
「そっちか!?」
…俺のノーコン。
大きな石に当たったおかげで注意は逸らせたが、積まれた薪には当たらなかった。
っていうか、仮に当たっても崩せたのか疑問だ。
「あれ?いないよ?」
…今の内だな。
三人が石に気を取られている隙に村の出口を飛び出し、森に入る。
この森は獣や蛇等の危険が少ないことは知っているため、毛布代わりに持ってきた大きな布に被さって眠ることにした。




