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12話 年上の前で兄貴分

 

「よし!この本に決めた!」


「っていうかそれしか読めないんでしょ、ノブ兄ちゃん。」


「う、うるせーやい!」


 夏休みの中、俺とリラ、マッスはノイの家に遊びに来ていた。

 ノイには二つ上の兄、ノブと一つ下の弟、ノラが居る。その2人も居る家で遊ぶことになったので自然とノイの兄弟も遊びに混ざることになった。

 それで、どうやらノブは俺たちに兄貴面をしたいらしく、家にある絵本の読み聞かせを申し出てきた。

 そのまま勢いに圧しきられてノイの弟を含めた五人で読み聞かせを聞かされることになってしまった。

 精神的には俺の方が兄貴分なんだけどな…まあ、付き合ってやるとするか。俺も前世で似たようなことはあったし。


「んっんー!じゃあ、心してきけよ!」


 一つ咳ばらいをすると、絵本を一ページめくる。絵本には幸せそうな家族が二ページいっぱいに描かれていた。

 タイトルは神様の――――よく見せてくれなかったので分からない。テンパって見せるのを忘れていたのだろう。


「むかーしむかし、あるところに――」


 …ビーンという男がいた。

 ビーンは恋人はいないものの、両親と一人の妹と共に幸せに暮らしていたそうだ。

 しかし、ある時ビーンは旅人の女性、ハピンと恋に落ちる。

 村に滞在することにしハピンはビーンと共に過ごし、互いに惹かれ合った。

 数日後、2人は再会の約束をして涙ながらに別れた。

 その一年後、その村に向かっていたハピンは事故で亡くなった。

 亡骸となったハピンを見たビーンは数日枕を濡らし、その後自然を司る神ジゼン、技術を司る神ワジュにまた恋人と逢いたい、と強く願った。

 あまりにも強い願いを聞いた二柱の神はそれぞれ試練と言い難題を突きつけ、こう言った。


『それらを達すれば祝福を授ける、我々の祝福を授かったら最高神の神殿に行け、さすれば願いを叶えてやろう。』


 ビーンはその試練を必死にこなし、ついに二つとも達成して神々から祝福を授かった。

 そして最高神の神殿で最高神“ウスト”に会い、願いを叶えた…

 …要約するとこんな感じだろうか。

 緊張もあってか、ややたどたどしいところもあったが…まあ、九歳くらいの子供にしては上出来だろう。


「そして、ビーンは幸せにハピンと暮らしましたとさ。」


 最後のページにはビーンとハピンが笑顔で食卓を囲む様子が描かれていた。

 少しジーンとしてしまった。恋を経験していたからか、死を経験したからか、もしくは子供になってしまったからか、元々涙もろかったのか…まあ、なんでもいい。理由なんて探せばいくらでも出てくる。

 でも、なんとなく絵本で、それも子供の前で涙を流す事に羞恥心を覚えた俺は涙をこらえ、他の五人を見る。


「うっ…うー…」


 話を聞いていたリラは涙を流していた。

 …感受性高いな。平穏に村で暮らしてきた六、七歳の子供には死という概念が遠い。だからその分理解が難しいところもあるはずなのに。


「…もうききあきた。」


「だよねー」


 対して姉弟2人は冷めている。

 何度も(ノブ)の練習台になったのだろう。飽きとは残酷なものだ、どんなに良い物でもうんざりするものに変えてしまう。


「へへっ、おれの語り部も上手いだろ?

 おれ、エメンを出たらぎん遊詩人になるんだ!」


「え?かぎょうを継ぐんじゃないの?」


 ノイの家は農家をしている。

 長男が継ぐという日本の古臭いしきたりのようなものもありそうだなとか勝手に思っていたため、俺は少し衝撃を受けた。この世界ではその辺自由なのだろうか。


「んなことするかよ!それは父と母の前だからそう言っただけ!

 おれは前からぎん遊詩人になりたかったんだよ!」


「…ノブにいちゃん、いなくなっちゃうの?」


 それを聞いたノラは寂しそうだった。

 何度も読み聞かせをしていることから面倒見が良いことはなんとなくわかっていたが、結構慕われているらしい。


「心配しなくてもたまに戻るからな!

 その時は手伝いでもなんでもやってやるよ!」


「言ったね?おとうさんとおかあさんに言っちゃうよ!?」


「おう!何とでも言え!おれが出て行ってからな!」


 …仲のいい兄弟だな。

 前世も今世も一人っ子の俺としては少し羨ましい。

 ……ん?


「んがが…」


 マッスの野郎寝てやがった。

 おい、恋愛物語(参考書)だぞ。聞けよ馬鹿者。


「……リラ、確か暖炉があったよな?」


「うん、そこにあるけど…」


「炭を持って来てくれないか?人数分。」


「はーい!」


 リラが喜々として持ってきた炭は五つ。

 それを受け取った俺は兄弟たちに向かってこう言った。


「お絵かきしようぜー!

 腹出して寝てるコイツがキャンバスだ!」


 その夜、俺の部屋に面白い模様を付けた侵入者が怒鳴り込んできた。

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