10話 初戦闘
あらすじ
主人公アインは、夏休みの初日にリラとマッス、ノイと共に曰くつきの廃墟にやってきた。
廃墟に入った一行は閉じ込められるが、アインは罠に嵌りつつも他三人を脱出させることに成功する。
アインは廃墟の幽霊によって廃墟のある部屋に運ばれ、その部屋にあった禁忌である魔法の使い方が書かれた本と日記を読む。
部屋を出たアインは本にあった通りに魔法を使い、部屋から脱出。廃墟からの脱出を試みた。
廊下を進んでいくと、様々な仕掛けが待ち受けていた。
魔力を細かく制御して流すとか、魔力を体の一部に集めて進むとか…壁の張り紙にあるヒントを元に進んでいった。
こうして進んでいるうちに魔法の特訓でも受けているようだった。他に進む方法が無いため従ってはいるが。
途中の壁に隙間が無いか探したが、入れないほど小さなもの、瓦礫等により埋まっているものばかりだった。
中には補修したものと思われるところもあった。あの幽霊ここの補修までしてるのか…大変だな。
…ん?さっき手すり抜けてなかったっけ?まあいいか。
それはともかく、ようやっと廃屋の入り口が見えた。
今度は…ん?
張り紙が無い。
『早かったな、ここがゴールだ!』
ぼんやりとした白い霧が現れ、幽霊の輪郭を作る。
「待ち伏せか…」
『どうせ来るだろうと思っておった。
小僧がここから出るにはここから出ていくしか無いからのう。
しかし、ワシは小僧をここから出したくない。』
「何故だ?
この廃墟が無くなるかもしれないからか?」
『廃墟ではない!
肉体は朽ち果てようが今も我が同志達の魂がここにおる!』
「じゃあ幽霊屋敷だな。
どうあれ、ここを放置するわけには行かない。ここのことは大人達に報告する。」
『勝手にせい。誰にもここは壊させん。
ここには大量の罠がある、ワシもいる。これまで何人も退けてきた…これからもそうじゃ。』
「……いつまでも持つとは思えないけどな。」
『言っておれ。
どの道、小僧はここから出られん。』
「…お前、何のつもりだ?」
『何がじゃ?』
「何故俺を閉じ込めようとする。
いや、それだけじゃない。俺を閉じ込めた部屋に本を置いて魔法の使い方を教えたり、通路の仕掛けで実際に魔法を使わせたりしていた。
まるで俺に魔法の練習させてるみたいだ。」
『……さあてのう。
しかし、ここまで来られたというのならおおよそ魔法を使えるようになったのじゃろう。
…ふむ、小僧にもチャンスを与えてやろう。』
「チャンス?」
『ワシを倒せば小僧は自由にするがいい。しかしワシが勝った場合はここからださぬ。』
「……」
…ここから俺を出したくないのなら、何故そんなチャンスを与える?
親切心とは思えない。言動が支離滅裂だ。何が狙いなのかさっぱりわからない。
『ほれ、かかってこい。』
指をクイクイと動かし、挑発を行う幽霊。
ここで戦わなければ恐らく出られない。すり抜けて外に出ようとしてもドアノブに魔法が掛けられているし、さっき出て行った扉を含め他の扉は板が打ち付けてある。
覚悟を決めろ。
自分に言い聞かせ、幽霊を見据える。
幽霊は物理的に触れることは出来ない。
廊下は罠だらけ。さっき引っかかった糸の位置も分からなくなってしまった。
となれば、可能な限り動かず幽霊と戦う必要がある。
魔法だ。
今覚えた禁忌を使うしかない。
幽霊に魔法が効くのかどうかは分からないが、それでも試すしかない。
「はあっ!」
的を撃ちぬいた時と同じように手のひらから雷を放つ。
しかし、紫電は幽霊に回避を許してしまう。
避けられた紫電は壁にぶつかり、小さな焦げを作った。
『基礎はばっちりじゃの。』
余裕の笑みを浮かべる幽霊。
そのいけ好かない顔面を狙うように何発も雷を放つが、ひょいひょいと軽く避けられるだけだ。
『ほれほれ、その程度か?』
「くそっ…!」
魔法初心者の俺ではこれが限界だ。当たるまで撃つ、それしかできない。
だが、魔法を撃ちすぎるのもまずい。泥だらけの本にあった。
『魔力は有限。無駄撃ちは控えるべし。
魔力が尽きれば気を失い、無防備となる。』
と。
『小僧の幼稚な攻撃にも飽きてきたわい、そろそろ反撃といこうかの。』
そう言うと、幽霊は手をこちらに向ける。
まずいと直感的に悟った俺はその場から飛びのくと、俺が居た場所の床に穴が空いていた。その周囲は濡れているように見える。
しぶきのいくらかが俺に飛んできたことから、恐らく高圧の水でも放ったのだろう。
『避けたようじゃな。次じゃ。』
罠を覚悟して必死に動き回る。
俺が走ればその後ろの床は尾を引くように穴が空いていく。
「うわっとぉ!?」
しまった、さっき引っかかった糸が…!
その場で転び、ずざっと顔で滑る。
顔の痛みに耐えていると、右手が何かボロボロの物を触ったような感覚がした。
『命運尽きたのう!』
幽霊は俺に手を向ける。
その手から魔法が放たれれば、俺は負ける。いや、死ぬ。
絶体絶命の状況下で、俺は――
『……ぬ?』
――笑っていた。
俺の左手の先から黒い煙が上がっている。
『煙……なっ、何をしておる!?』
そして、赤く燃える炎が見える。
幽霊の爺さんにとって、この廃墟は大切な物。
火事でも起きれば消化を優先させるだろう。
――大きな隙を作って。
魔法で消化している幽霊に左手を向け、雷を放つ。
『ぬうああああああああああああああああ!!』
何度も、何度も。
やがて幽霊は地に落ち、倒れ伏した。
『小、僧…見事であった…
その容赦が無いほどの機転、憎らしいほどに素晴らしかったぞ…』
幽霊は明滅を始める。
俺も魔力を使いすぎたせいか、意識が遠のいてきていた。
魔力が無くなっても眠るだけ。死ぬ心配は無い。
とりあえず、命の危機は脱したというわけだ…
『だが、覚えておけ…
小僧の魔法には無駄が多い…正しい魔法の使い方、いつか覚えておくのだな……』
「悪いが…もう魔法を使うつもりは無い。
せっかくのご指導だが、無駄にさせてもらう。」
『そうはいくかの…?
魔法使いは、まだ生き残っておる。用心すること、じゃな……』
「何?
おい爺さん、どういうことだ!爺さん!」
それに答える前に幽霊は消滅する。
薄れゆく意識の中、天井の隙間から差し込む弱い朝日と誰かの声を聞いた。
ここではお久しぶりですね。
三作目の執筆でほったらかしてましたが、例によって気まぐれで更新しました。
…読んでる人いるかなー




