第12話 襲いくる悪意
その先、雄輝がさっきまで立っていた場所には大きな穴が空き、そこから倒れる時に見えた黒い物体が生え、高くそびえ立っていた。
そのまま立っていたら、あの黒い何かに突き上げられていただろう。その事実は雄輝の血の気を引かせるのには十分であった。
その時、巨木に切れ込みが入る。そして、開いた。それも、何箇所も。
「気持ち悪っ」
それは眼だ。人間の顔ほどもある眼が、次々に開いていく。そして、一番上まで開いた時に巨木の先端が二人に向かって曲がった。
そこで初めて雄輝は気付いた。これは大きな蛇のような怪物だ、と。
その怪物の頭にあたる部分に開いた一際大きな眼が、二人を覗き込むように見下ろしている。
クレアは、視線を尖らせる。雄輝が最初に会った頃、集落が魔物に襲われた時にしていた、あの鋭い目つきで怪物を見上げている。
「神魔七柱の一、オデュポーン。なんで、ここに……」
クレアの声を聞いて、オデュポーンは大きく口を開く。全身が闇を思わせる黒なのに、そこだけが鮮やかに赤かった。
縦に開いた眼は爛々と輝き、横に割けた口は体の動きに合わせて揺れ動く。
まるで、こちらを嘲笑っているかのようで雄輝には気分が悪かった。




