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土化粧   作者: 安芸 航
24/28

合宿〜3日目〜P.M編

 昼食休憩が終わると夏海高校は再びランニングに向かった。そして、白雪学園と鯉ヶ窪高校の試合が始まる。4試合目のお題はノーアウト2塁からイニングを始めるというものだった。送って、ワンナウト3塁から始めるもよし、ヒットが出れば儲けものと考えて右打ちするか、一か八かエンドランをするか。ワンナウト満塁よりも作戦のバリエーションは豊富になる。そうなってくると野球脳の高さが勝敗を分ける。

 鯉ヶ窪高校は堅実に送り丸子、貴音のポイントゲッターで確実に1点ずつとっていく。対する白雪学園は初回小春のヒットでチャンスを広げると翔子のタイムリーなどで一挙5点を奪う。しかし、2回3回4回と点が入らなかった。

5-5の同点で迎えた5回裏、ノーアウト2塁で1番小春を迎える。その初球、小春はバットを横に倒し、セーフティバントを試みた。サード住笠の好守により間一髪でアウトにする。白雪学園のしかも小春のここに来て初めてのバントでサヨナラのランナーを3塁に置く。2番の田中を三振に打ち取りツーアウトまでこぎつげるも続く打者の3球目の球、キャッチャーが後ろにそらしている隙に3塁ランナーが帰りサヨナラを決めた。

罰走から帰ってきた夏海高校の部員達は両膝に手を付いて息を切らしている。


琴「ああーー吐きそう...」

大「あれ?樹里ちゃんは??」

純「トイレに駆け込んでったよ」

渚「あらら。こんなんじゃ冬合宿やっていけないよ」

琴「うわっ、やっぱり冬合宿ってそんなにきついんですか??」

忍「そりゃあもう...気絶、嘔吐。終わったときには女を捨ててたわ」


 続いてのゲームは守備を毎イニング違うポジションに就かせないといけないという特別ルール。


葵「うちってピッチャー出来るのともみと瑞樹、ルナしかいないわよね」

千「それよりキャッチャーは...私と樹里、ルナと千晶はやったことある程度。この試合に勝つためにはあと一人キャッチャーが必用。出来そうな人は?」

「「・・・」」

大「私やってみるよ!!」

琴「ひろちゃん!さすが!!」

千「よし!出来るかじゃない。やるってなら練習あるのみだ」

大「はい!!」


 疲れた身体に鞭を打ち、大海のキャッチャー練習が始まる。そして、白雪学園との本日二度目の戦いが始まる。

 先攻は夏海高校。白雪学園のマウンドには西川小春が上がる。


忍「あの子、ピッチャーも出来るんだ...」

晶「すごい身体能力だからね。けっこういい球投げてるよ」


 先頭の葵がバッターボックスに入る。その初球。


審「ストライーク!!」


 外角に直球がズバッと決まる。


純「速いっ!」

琴「綺麗な真っ直ぐ」


そして2球目。カキーン。快音を残して、センターの前に運んだ。2番千尋。いきなり初球、葵はスタートを切った。悠々セーフ。


葵「いい球は投げるけど、クイックがまるでなってない」

西「あんだとこらー」

千(そろそろ、心の声を口に出してしまう癖なおさせた方がいいかもな。乱闘になる)


 3球目を千尋は反対方向にはじき返す。セカンドの頭上を越え、先制タイムリーツーベースになる。さらに渚もつなぐ。打線が繋がり、結果この回は小春から4点を取った。


瑞「球速もコントロールのキレも悪くないのにどうして簡単にはじき返されるのかしら」

千「あの子の球、素直すぎるわね。あー見えてピュアな子なのかもね。ピッチャーは少し性格ひん曲がってるぐらいがちょうどいいのよ。ともみみたいにね」

と「腹ん中真っ黒なキャッチャーに言われたくないわね。瑞樹はそのまま綺麗で誰にも打たれない真っ直ぐを磨きなさい。私たちみたいになっちゃダメよ」


 夏海高校が守備に就く。先発メンバーはいつもと同じ。ただ、1つ違うのはセカンドに真純が入り、ショートに真琴が入っているということだ。初回、ショートに一本簡単なゴロが飛んだが真琴はこれを難なく捌き、初回の攻撃は3人で終わった。2回裏はピッチャーに葵が入り、キャッチャーをルナが務めた。葵は肩も強いことから、球は速かった。しかし、キャッチャーが構えたコースをつい口に出してしまう癖があり、仲田に初っぱなから特大ホームランを浴びるなど、3失点。3回表に1点を取り、5-3とリードする。3回裏は渚と大海のバッテリー。急造キャッチャーにしては大したものでキャッチャーフライの落球はあったもののランナーを一人も出さずに回を終えた。渚は持ち前のセンスでシュート、スライダーを駆使し、打者を封じ込めた。4回裏は瑞樹、樹里のバッテリー。最終回はルナ、千晶のバッテリーが共にランナーを出すものの要所を締め、無失点に抑えた。5回表にルナのホームランで追加点を挙げた夏海高校が6-3で白雪学園を下し、本日初勝利を納めた。


西「よーし!いっちょ走ってくるかー!!」


 小春は元気に駆けだしていった。それにつられ他の白雪学園の部員達もグランド外に出て行った。


忍「元気な子だねー。あんだけカレー食べてたのに」

葵「無限のパワーですね」


 そして、長かった合宿3日目も残すところ最後の試合を迎える。最後のルールは、投手が変化球を使ってはいけないというもの。


千「今回はともみに先発してほしいんだけどみんないいかな?」

晶「普通に考えたら球速の速いルナがやるのがいいと思うのだけど...」

千「たしかに。でも、変化球が得意なともみにこそ変化球を封じた投球術も身につけてほしい!!」

ル「千尋がそこまで言うのなら仕方ないです!私は外野でバッティングに専念します」

千「ありがとう...ただ、バッティングだけに専念しないで外野の守備も頼むな。指名打者じゃないから」


 後攻の夏海学園はともみがマウンドに上がり、足場を作っている。


と(変化球頼り...私の真っ直ぐはそんなに千尋に信用されてないって訳ね・・・)


 初回、1番バッターが打席に入る。初球はクロスファイヤーで左バッターの外に投げ込む。2球目は一転して内角。3球目はインコース高め。バッターは1球も振ることなく三振に倒れた。続くバッターは好打者の丸子。初球は胸元にズバッと真っ直ぐ。2球目は膝元に決まった。5球投げてまだボール球は1球もない。丸子に対しての3球目は外角高めややボール球を打たせてファーストフライ。続く3番バッターも真ん中低めのボール1個分外れたボールを打たせてセカンドゴロ。これを難なく真琴が捌きスリーアウトチェンジ。

そして2回、貴子との勝負。またしても腰に当たりそうな所に投げ込む。初球は外れるも2球目はインコースでストライクを取る。そして、3球目もインコース。追い込んでからの4球目。またしてもインハイ。なんとかバットに当てるも打球はバックネットに当たる。


貴(どれだけインコースに投げ込むの。当ててもいいって思ってるんじゃないのかしら。ここまで来たら一か八かバッターボックスのホームベースギリギリに立って...)


 勝負の5球目は緩い弧を描いてキャッチャーミットに吸い込まれる。


審「ストライークバッターアウト!!」

貴「スローボール!!」

千「ナイスボール!!」(外角には構えてたけどスローボールのサインなんか出してねーぞ)


 後続も打ち取り、2回の守備を終わらせる。そして、その裏の攻撃。ルナが宣言通りレフトへのホームランで先制点をもぎ取った。そこからのともみは圧巻だった。走者を一人も出さない投球。


菊「スローボールだけじゃない。ストレートに見える球も少しずつ球速を変化させてる」

貴「それじゃ曲がらない変化球じゃない...」


 ともみは5回を投げ、球数47球、8奪三振、与四死球0、被安打0。完全試合を達成した。打線も鯉ヶ窪高校エースの黒井の直球を中盤にかけ、捉え始め、6-0で勝利した。


と「どう?やっぱり私の真っ直ぐだけじゃ不安???」

千「嫌みかよ...サイコー!!」

瑞「コントロールと真っ直ぐのキレだけでここまで抑えてしまうなんて...すごいです!」

忍「あと、性格の歪みから生じる球の歪みもあったからな」

と「いいかげんにしないと今度バッティング練習の時当てるわよ」

忍「ひゃ~怖い怖い」


 長かった合宿3日目が終了した。夕食時はみんな疲れていたせいか、いつもより口数も少なく、寝床に入った。

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