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土化粧   作者: 安芸 航
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野球部始動!

キーンコーーンカーンコーーン


 チャイムが帰りのホームルームの終わりを知らせる。四月も下旬にさしかかり校庭の桜は散り、緑の葉が鮮やかに色づき始める。夏海高校でも入学式が終わり二週間。新入生を迎え部活動も活気が出てくる。


「おーし。さっさとグランド行くぞー」

「あー待って~千尋。ほら!渚も早く行こ!」


おさげの少女がショーカットの少女の後を慌てて追いかける。さらにその後ろから、黒い髪を肩までのばした少女が距離をあけて付いてくる。


「どれくらい来てくれるかなー?野球部」


おさげの少女がショートカットの少女の顔を覗き込むようにして聞く。


「ポスター貼ったり、校内放送したりしてるから何人かは来るんじゃないかな。最悪九人はほしいね」

「九人いなかったら野球できないから」


ショートカットの少女の返答に黒髪の少女が素っ気なく答える。

三人がグランドに出るとすでに三人の姿があった。

 

「遅いですよ!日本人のよいところは時間を守ることではないのですか」


 美しい金髪を後ろで束ねた白人の少女が後から来た三人に向かって言った。


「なに言ってんだよー時間通りじゃねーか」

「千尋~知り合い?」

「クラスが一緒なだけだよ。教室でもやかましいやつでな」

「What?五分前行動もできない人に言われたくありません」


 二人が言い合いになる前に柔和な顔立ちの少しふくよかな少女が後から来た三人に問いかけた。


「あのー。三人は知り合いなのですか?」

「小学校から一緒なんだ。渚は小学校のころから。忍は中学から野球始めたんだ」


 ショートカットの少女が答えた。


「あっ!千尋。パパが来たよ」

「ここでその呼び方やめろ」


 校舎からは四十代ぐらいの男が小走りにこっちに向かっている。優しそうな目とあごひげがアンマッチだ。


「すまん。職員会議で遅れた」


 男ははっきりと言い。頭を軽く下げた。先ほどまでバラバラに話していた六人も今は男の前に横一列にビシッと並んでいる。


「知った顔も少なくはないが、まずは自己紹介だ。俺の名前は椿浩一。三年の担任で体育を教えている。そして今日から野球部の顧問をやることになった。野球は小中高大とずっとやって来たが監督としての経験はない。指導者としてはまだまだ未熟者でお前たちにはたくさん迷惑をかけるだろう。だが、俺もお前たちと一緒で夏海高校野球部の一期生だ。その覚悟と誇りは持っているつもりだ。ここは女子高だがそんなことは関係ない。野球が男のスポーツだったのはもう過去の話しだ。ここに立つからには甲子園を目指す!簡単なことではないが不可能なことではない!辛く厳しいこともあるだろうががんばっていこう!!」


 浩一が自己紹介と簡単な所信表明を行う。

 

「次はお前らの番だ。千尋。お前からいけ」

「はいっ。椿千尋。右投げ右打ち。ポジションはキャッチャーです。野球は五歳のころから始めました。もちろんここには甲子園を目指すために来ました。まだまだ未熟者ですがよろしくお願いします」


 ショートカットの少女が元気に応えた。


「じゃあ次は私の番かな。山田忍。右投右打。ポジションは外野かな?中学のころから野球を始めてその時はずっとライトやってました。私は千尋や渚みたいのに野球は上手くないけど精一杯がんばります」


 おさげの少女がちょっと照れくさそうに、しかしはっきりと応えた。


「私の名前は高峰渚。右投左打。ポジションはサード。別に甲子園にはそれほど興味はないけど男に負けるつもりはないから」


 黒髪ロングの少女が小さな声で言葉数少なめに応えた。


「私の名前はルナ・スミスです。父はアメリカでBaseballのプレイヤーでした。母も日本の元陸上選手です。二人とも私の自慢のParentsです。生まれはアメリカですが、五歳の時から日本に住んでいます。右投げ右打ちでポジションはどこでも守れます。パワーはだれにも負けません。よろしくお願いします」


 白人の少女が発音の良い英語を交えてハキハキと応えた。


「右投右打。ポジションはサード。おかわりちゃんこと石井千晶です。身長は178㎝体重は98㎏です。憧れの選手は西武の中村選手です。中学からソフト始めました。中学時代には三年間でホームランを100本打ったことが私の自慢です」


 ふくよかな少女はニコニコと微笑みながら応えた。


「最後は私ね。名前は西沢ともみ。左投左打。小学校から中学校までピッチャーしかやってこなかったの。コントロールしか自信ないけど、なんとかやってこれたわ。私は別に甲子園に行きたいとか、野郎たちに負けたくないとかはないけど、野球は大好きね」


ポニーテールでどこかボンヤリした少女が眠くなってしまうような声で応えた。最後の自子紹介が終わると浩一は六人の少女に向けてこう言い放った。


「これから二年半、お前たちは仲間としてやっていくわけだ。いきなり仲良くなんてできないとは思うが少しずつでいい。お互い信頼しあえる仲間になっていこう。そのためにもまず、試合をする!」

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