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土化粧   作者: 安芸 航
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プロローグ

 ある夏の日、世間を騒がせた事件が起きた。事件といっても殺人や強盗といったものではない。そんなものと比べたらとても些細なものかもしれない。しかし、この事件はやがて日本を変える出来事となった。

 ある一人の野球が大好きな少女がいた。小学校、中学校と続けてきた野球を高校に入っても続けるという決断をするのはなんらおかしなことではなかった。

『女子生徒は高校野球の公式戦に出られない』そんなルールがあると知っていながらも、彼女はいつか試合に出られる日が来ると信じて、誰よりも一生懸命野球に打ち込んだ。その結果、彼女はチーム一の選手となった。周りもその努力を称え、彼女が試合に出られるようにと署名活動を行った。しかし、高校野球連盟が下した判定は


『大会参加者資格は男子生徒に限る』


 この判定が彼女がどれだけの絶望を与えたのかはわからない。だが、結果彼女は試合に出た。他の男子生徒と入れ替わるという禁じ手を使って。しかし、入れ替わりは試合途中でばれてしまい、没収試合という結末で彼女の夏は幕を閉じた。

 試合終了後、坊主頭の彼女の涙は全国のテレビで放送され、世間に大きな衝撃を与えた。やがて、全国規模となった女子生徒の高校野球参加を訴える署名活動はとうとう長い高校野球の歴史を変えた。あの事件から五年。高校野球は男女のスポーツとなった。


 この事件が起きる十年前、一人の男がある高校の教師となった。

男の名前は椿浩一。小学校のころから高校まで野球を続けてきた。大学ではサークルで野球をやっていた。そんな浩一には高校で野球部の顧問になりたいという夢があった。大学で教員免許を取り、浩一は晴れて高校の教員になることができた。浩一はどんな高校に配属されるのかを楽しみに待っていた。配属先は私立夏海高等学校。吹奏楽部が全国区でなかなかの進学校。しかし、浩一の夢は配属決定の日に潰えた。

夏海高校は女子高なのだ。


教員生活は充実していた。しかし、心のどこかで野球への未練も捨てきれてなかった。そんな浩一に人生の転機といってもいい出会いが訪れた。

当時、野球場でビールの売り子をしていた佐藤麻由美。出会いは売り子をしていた麻由美からビールをかけられたことがきっかけ。お詫びに野球観戦に連れていってもらい浩一は麻由美が子供の頃野球をやっていて、高校ではプレイヤーを断念し、マネージャーになったことを知った。二人は野球を通じて仲良くなり、後に二人は結婚する。

そして、二人の間にできた娘が五歳の時、あの事件が起こった。麻由美は自分も似たような経験をしたということから、署名活動に参加したいと言い出した。浩一も、もとよりこの制度には疑問を持っていたので二人は女子生徒の大会参加を訴える活動を積極的に行った。この活動が思わぬ結果を生んだ。娘が野球をしたいと言い出したのだ。そして、娘が十歳の時に女子生徒の参加資格が与えられた。この時には娘はすっかり野球にのめりこんでいた。

娘の夢は『パパを甲子園に連れていくこと』

これは女子高の生徒達が男子との壁、差別と戦い、甲子園を目指すお話です。

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