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ボツ  作者: MC:テキtowtaka
第一章 ドン底ってこんなもん?
5/10

第四話 良薬は時として牙を剥く。

「引き返したはいいものの、どうするか・・・」


そう、大和は二択を止め引き返したが、特にこれといって理由があった訳ではない。ただ「二択とかやだな。」とぼんやり思ったからだ。なんとも捻くれた人間である。そんな大和の内心を知ってか知らずか、適当に歩いている大和の目前に明かりが入ってくる。


「ん?明かりか?でも、なんでこんなところに?・・・罠とかモンスターじゃないよな?」


警戒しながら徐々に明かりに近づいていく。


「これは・・・光るコケ・・・?」


その明かりの正体とは地面や壁に生えたコケであった。とりあえず何かあるかもしれないと『鑑定』を使ってみる。



――――――――――――


『ヒカリゴケ』


ダンジョンに生えている植物。空気中の魔力を吸って生きている。抜くと光を失う。


――――――――――――



「うーん、あんまりいいものでもないな・・・引っこ抜いた後でも光るなら松明代わりに出来たんだが・・・」


だが、あるところを境目にヒカリゴケが至る所に生えているので、松明を持っていても役目を果たさないくらいには明るかった。


「これだけヒカリゴケが生えてるなら、他の食べられる植物とかもあるかもしれないし、先に進むか」


大和の予想は的中していたらしく、しばらく歩くと、コケではなく普通の草の地面に変わっていた。壁沿いにはいかにも薬草って感じの生えている。・・・そうは言っても毒草だったら嫌なので『鑑定』は使うが。



――――――――――――


『薬草』


何処にでも生えているいたって普通な薬草。食べたり、煎じて塗ったりすると体力をわずかに回復させる。


――――――――――――



良かった。薬草か・・・取り敢えず凄い量生えてるからお腹いっぱいまで食べても大丈夫だろう。俺は生で食べた。傍から見たらすごいシュールだろう。だがそんなこと気にならない程飢えに耐えきれなかった。お腹いっぱいになるまで食べたらある程度渇きもとれたし、まだまだなくならなそうだった。


だが、問題はそこではなかった。大和はただただ苦しんでいた―――――――




――――――――――――圧倒的腹痛に!!


「ああああ!なんで俺は生であんな物をガツガツと・・・!!」


そんなこと言っている間にも腹は悲鳴を上げている「ぎゅるるるぴぃぃごろぴしゃぁん(迫真)」


信じられるか?これ俺の腹の音なんだぜ?


それでも腹痛はすぐに収まった。なにせ食べたのは薬草なのだから。薬草を食べてダメージを受けるとか洒落にならん・・・代わりに全身の骨折は完全に治っていた。


ティロリン♪


『胃酸強化lv4』を獲得しました。


lv1~3を飛ばして一気に4か・・・それほどだったということか・・・


「腹痛も収まったし、よし、どこか安全そうな場所目指し「グルルゥ」・・・ん?」


大和が立ち上がって歩き出そうとした瞬間だった。背後から低く喉を鳴らす音が聞こえたのは。


「やばっ!――――がぁ!」


慌てて振り返ろうとしたが間に合わず、一瞬で間合いを詰めてきた何かに左の肩口を抉りきられる。大和はその痛みと衝撃で尻もちをつく。その致命的な隙を相手が見逃す筈がなかった。


「ガゥ!!」


「うおぁあ!」


尻もちをついたところで圧し掛かられたので簡単に押し倒され上を取られてしまう。獰猛な鋭い牙が並び大きく開いた口が顔に近づけられ、生臭い吐息が顔にかかる。そこでようやく大和が相手の姿を捉えることの出来た。


「(狼・・・!?)」


長かったようで一瞬だった時間は終わり、大きく開けられた口が首をかみ切ろうと接近してくる。


「(このまま殺されて喰われるとか・・・腹が立つからぶっ殺す!)」


相変わらず大和はどこかおかしかった。


「俺がお前を喰うん・・・が!」

「ガァ!?」


接近してきた上顎に噛みつく、狼(?)も予想外だったらしい。だがすぐに立ち直ると大和の下顎ごと嚙み千切ろうとしてくる。当然、顎の力は狼のほうが強く、鋭い牙は顎に突き刺さる。血が溢れる。強烈な痛みが襲う。でも、ここで引いたら敗北を認めることになる。そんなちっぽけなプライドが大和の心を燃やし焦がす。


―――――――――バギッ!


固いものが折れる音がした。口の中にゴロゴロと何かが転がる。歯だ。人の歯と、獣の歯。どうやら狼の牙を折ったらしい・・・自分の歯と一緒に。


「ガァァ!!」

「グェッ!ガハッ!・・・ペッ、ペッ」


これには狼も耐えきれなかったらしい。急いで口を離すと後方にさがった。大和も口から牙やら血やらを吐き出す。


無言で睨みあう


「(どうする・・・?左手は動きそうにない・・・)」


大和は切られた左手を動かそうとするも動かない。それが相手にも伝わったのだろう。狼は目にも止まらぬ速さで大和に接近しその爪で左足のすね辺りを切られる。


「ぐぁあ!」


あまりの痛みにまたも転倒してしまう。さっきの行動から学習したのだろう。圧し掛かっても牙で攻撃することはなかった。が、代わりに爪で顔を引っ搔こうとする。


――――――そう、その行動自体悪手とも知らずに。


顔面めがけて接近する左足の爪に対して、大和はガードしない。此処こそが最大のピンチであり、同時にチャンスであると直感したのだ。大和は顔をわざと左に向け右半分を犠牲にする代わりに、右手に持ったさっき折った狼の牙を狼の目に思い切り突き刺す。血が溢れ出て顔にかかるが気にしてはいられない。


すぐさま狼が退こうとするがそれを許していい訳がない。退こうと大和の上に乗せていない後ろ足に体重を移動した瞬間、大和が狼の胴体に足を巻き付け体を反転させ、逆に上をとる。


「うおおおおぁぁあああ!」


後は力いっぱい牙を押し込み、抉るだけだった。目を貫通し、脳まで牙が達したところで狼は絶命した。


「ハァ、ハァ、おわっ・・・た・・?」


大和も仰向けに寝転がる。


ティロリン♪


レベルアップしました。



――――――――――――


名前 霧咲 大和

種族 人間

適正職業 無職

lv10


体力 100

筋力 100

俊敏 100

魔力 100

物防 100

魔防 100

精神 100


――――――――――――


うおお!すげー上がった!こんなに上がるのか?普通。今倒した狼が凄かったとか?『鑑定』使ってみるか。




――――――――――――


『ハイ・ウルフ』


lv12


洞窟系ダンジョンに住み着いている、ウルフ上位種。皮を剥いで売ると結構なお金になる。


――――――――――――



へぇ・・・て!lv12!?そんなヤツ倒しちゃったよ・・・まぁ運が良かっただけか・・・それよりも傷を治さないとな。


また薬草を生でパクパク。なんとか肩の傷とかは治ったけど・・・やっぱり目はダメか・・・


大和の予想通り、先ほどの戦いで右目は完全に見えなくなってしまってた。傷自体は塞がったので血は出ていないが。


「とりあえずコイツの皮剥いで肉でも食うか。殺したんだし、有効活用しないとな・・・」



こうして大和の初めての戦闘は右目を代償に幕を閉じた。


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