第十話 人間っていいな
遅れてしまってすみません。サブタイトルに深い意味はありません。
ゴーレムがこちらに歩を進めてくる。ニーナが何やら叫んでいるが聞こえないふりをする。とてもうるさくて耳障りに思った。
ゴーレムの剛腕が振り下ろされる。
「『弾衂』」
小さく呟き、左手の甲でゴーレムの腕を軽く払いのけると、ものすごい衝撃で足元が放射状にひび割れ、土煙が立つ。ゴーレムは尻もちを付きこちらを見ているのみだった。
「『鑑定』」
ぼそりと一言。
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『ストーン・ゴーレム』
ゴーレムの上位種。とても固く物理防御力に長けているが、その反面、魔法防御力が乏しい。
体力 720
筋力 900
俊敏 300
魔力 10
物防 800
魔防 200
精神 400
スキル
『身体強化lv3』『鋼の身体lv1』『破砕lv5』
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今見てもらった通り、大和は『鑑定』のレベルが上がったおかげで、スキルも見通せるようになっていたので、スキルも奪えるようになっていた。
「ほうほう、いい防御力だ。貰うぜ」
ゴーレムに手を触れ、先にスキルを吸ってから、物防を吸い取る。当然時間がかかるわけで、ゴーレムが吸っている途中で動き始める。
「『破砕』!」
先ほど盗んだスキルの試し打ちとして、大きく振りかぶった右手をゴーレムの胴体のド真ん中に振り下ろす。圧倒的破壊が巻き起こる。ヒビがさらに大きくなり、物防が少なくなったゴーレムには十分すぎたらしく、一撃で沈んだ。
「『ステータス』」
今奪ったスキルを確認すべくステータスを表示させる。
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名前 霧咲 大和
種族 人間
適正職業 無職
lv43
体力 1323
筋力 1210
俊敏 980
魔力 830
物防 1084
魔防 795
精神 839
スキル
『鑑定lv6』『自然治癒力上昇lv6』『運気上昇lv5』『気配遮断lv2』『跳躍lv4』『夜目lv4』『胃酸強化lv11』『空歩lv4』『破砕lv1』『身体強化lv12』『遠目lv5』『鋼の身体lv2』
特殊スキル
『弾衂lv4』『強欲lv6』
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「ヤマトぉ!」
ふと情けない声が耳に入ってくる。
「うるさいなぁ」
「・・・・へ?」
「よし・・・魔石の回収も終了、と」
そう呟き、土煙から出ていく。
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ゴーレムとの戦いの後、拠点に戻って来た大和たち。
「今日からここがお前らの家だぞー!」
「「ワン!」」
もともと怪我も無かったし、ご飯も上げたので母子?共に健康だ。
「でも、魔物だよね?ペットにしちゃっていいの?」
「もともと、襲ってくるから殺してただけだ。それに、こいつらは剝ぎ取れる部位が魔石くらいしかない。あんまりおいしい獲物じゃないんだ。」
「なっ!魔石だけですごく高価なのに・・・」
「何言ってるんだ。ここで生きていくのに金なんて何の役にも立たないだろ」
「確かに・・・そうだね」
こうしてウルフの二匹を飼うことに決めた。座ると子狼が膝に乗ってきてゴロン、とお腹を向けてこっちを見ている。
「可愛い・・・こいつぅ・・・!!」
もこもこの毛並みのお腹をめいいっぱい撫でてやる。子狼気持ちいいのか、目を細めてハァハァしている。抱き枕にしよう。
「ふふっ・・・」
それを見ていたらしく、ニーナが笑う。すぐさまそれに噛みつく。
「なに笑ってんだよ・・・あぁん?」
「なんでもないよ」
そういうがとてもニコニコしている。なんだこいつ、はっきりいって気持ち悪い。
「それよりもお腹減ったんだけど」
「えっ!今から刀を取りに行くんじゃないの!?」
「なに言ってるんだよ。さっきのは偵察のつもりだったんだ、どうせ今日はいかないんだ。早くして」
「でも、やっと刀の場所が分かったのに・・・」
「どうせ刀をとるためには何かしら試練的なものが必要なんだろ?準備していくに越したことはないだろ」
「・・・ヤマトって意外と考えてるんだね」
「屋上」
そんな他愛ない会話をしながら夕飯の準備をするニーナ。その足元をうろうろする母狼。膝の上でもっと構って欲しそうにしている子狼。それを眺めていて、なぜかまぶしく思えてそっと目を細める。いつかの日に憧れた日常がそこにはあった。それを思いながら、子狼を優しく撫でた。




