絵本
――――……昔々、ある国に美しいお姫様がいました。お姫様はとてもとても優しくて、とてもとても賢いお姫様で、みんなから慕われていました。
ある日。お姫様は国境近くのお花畑にお花を摘みに来ていました。召使がそばにいることで、大変不自由な思いをしていました。もっと自由に遊びたい!と思ったお姫様は、摘んだお花を風にのせて、飛んで行ったお花を召使に取らせにいかせ、逃げてしまいました。
召使はお姫様を必死で探しましたが、お姫様は賢くて、上手に隠れているので見つかりません。大慌てで召使はお城に知らせに行きました。
こうして、お姫様は束の間の自由を手に入れたのです。そしてお姫様は、もっともっと国境に近いお花畑に行きました。そこには、さっきのお花畑よりも凄く美しいお花が咲いていました。
お姫様は夢中で摘みました。
摘んで、摘んで、たくさん摘んだ頃にはもう、日が暮れていました。
召使はいつまでたっても戻ってきません。それもそのはず。お姫様はお花を摘むのに夢中になりすぎて、国境を越えてしまっていたのです。そのことに気付いたお姫様は急いで戻ろうとしましたが、ふと、草むらからこちらを覗く目と合いました。驚いたお姫様は動けなくなりました。
「だ…誰なの!?」
その時。ばっと草が飛び散り、たくさんの兵たちが飛び出してきました。
「止まれ!!動くな!!貴様は何者だ!?」
とても乱暴なその兵たちは、お姫様を捕まえました。この兵たちは、国境を守る隣国の兵だったのです。
お姫様の国は光の神様を信仰する国、隣国は闇の神様を信仰する国でした。だから、この兵たちにとって、お姫様は敵なのです。
お姫様の手首は結ばれました。あまりに抵抗するお姫様にしびれを切らした兵たちは、お姫様を打とうとしました。
その時、とても涼やかで静かな声が聞こえました。
「待ちなさい」
兵たちはいっせいに振り向きました。
「その娘を放してやりなさい」
兵たちは起こりました。
「ですが王子!この娘は敵国の姫なのですよ!」
と。それに王子は、
「では、私に少し話をさせなさい」
と言いました。
兵たちは少し離れた所で王子様を見守りました。そして、お姫様と王子様はお花畑のなかに座り込みました。
しばらくして、王子様は話しました。
「君は、何でここにいたんだい?」
と。これにお姫様は、
「こっちのお花の方がとてもきれいだったからよ」
と答えました。
「私たちの国は光の神様を信仰しているのに、何でお花がきれいではないのかしら。光なら、太陽みたいなものだからお花をキラキラ輝かせることくらい簡単だと思うのに…。私は小さいころから、この国のお花はどこの国よりもきれいだって教わったわ。でも、嘘ばっかり。国境に近づくにつれてどんどんきれいになっていくんだもの」
お姫様ばっかり話しているのに、王子様は全く怒らずに、にこにこと笑ってお姫様の話を聞いていました。
お姫様はたくさんお話しました。夢中で、この国と自分の国のお花の違いを話しました。王子様はにこにこと聴いていましたが、やがて、口を挟みました。
「つまり君は、国境近くの花畑から、こちらに来てしまったんだね?」
「ええ、そうよ」
「そうか。君は、我が国に忍び込もうとしていたわけじゃないんだね?」
これに、お姫様は目を丸くしました。
「一国の姫が…しかも長女なのに、忍び込むだなんて、ありえないわ」
お姫様はきらきらの笑顔で笑いました。
「私、この国は何も悪くないと思っているの。ただ、信仰する神様が違うだけじゃない!それも、ただ違うだけじゃないのよ。一心同体の神様の片方を信仰しているだけなのに、仲が悪いなんておかしくないかしら?だって、べつに教えが全く違うなんてことはないのでしょう?暗黒を望むなんて、そんなの嘘だわ。いえ、違う。みんなが望んでいるのよ。だって、私たちは日が昇れば騒ぎ出すし、夜が来れば寝るのよ!?だから…みんな望んでいるのに。…何で…何で、こんなに喧嘩してしまうんでしょうね?」
お姫差の言葉の最後は泣いていました。
「信仰が違う神では、やはり仲が悪くても仕方ないんだ。みんな、敵はわるいやつだと思っている」
王子様は、幼いお姫様をあやすように言いました。
「そんなの、みんな嘘だわ。だって、あなたはこんなにもいい人なのに…」
王子様はお姫様を抱き寄せて言いました。
「じゃあ、こうしよう。私たちが大きくなって、国を統一することになったら、結婚して、国を大きくしよう。合併だ。きっと、いつまでも宗教間でも争いは収まらないだろうけど、それでも、出来ることがあるはずなんだ」
「うん」
「それじゃ、約束だ。いつか光の国の姫君が大きくなるまで、覚えていてね?」
「うん」
王子様はお姫様を離しました。
「じゃあ、それまで、さよならだ」
お姫様は王子様に背中を優しく押され、走り出しました。後ろを振り返らずに、ずーっとずーっと、走り続けました。
しばらくして、あの召使が見えてきました。
「サリー!」
「姫様!!」
二人は抱き合いました。
「サリー。逃げ出してしまってごめんなさい」
「目を離してしまって・・・しまってごめんなさい!」
そうして、お姫様達はお城へ帰っていきました。
それからのお姫様は、国境近くへは近寄らなかったけれども、ずーっと窓の外を眺めていることが多くなりました。何故か、頬を赤く染めながら、ずーっと、隣国のほうを見ていたのでした。
やがてお姫様は大きくなり、幸せに暮らしましたとさ。
―――おしまい―――
こんにちは、桜騎です!今回はエミリとユウゴが気に入っている絵本の内容を書きました。本当は、この話を思い出していたエミリをその後に書きたかったのですが、文字数に余裕がなく、次にしました!なので次は、いきなりエミリの、この話に対する感想になります!
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!