絵本の中の姫君
屋上、私たちは来るはずのない私の友達を待っているのだった。
「う~ん、遅いねえ…」
「も…もしかしたら、忘れちゃってるのかも?」
ああ、ごめんなさい、私の数少ない友達よ…。
「え、そうなの⁉なら僕、捜してくる!」
「え、いや、別に捜しに行かなくても明日で…」
ユウゴはピタリと止まって振り返った。
「そう?エミリがそう言うんなら良いけど」
ユウゴは納得いかない様子で戻ってきた。あアあア、かわいく整った顔を暗くしちゃって。ま、それもかわいいけど。ほんと、ユウゴは中性的美男子だよね。私の好きな顔。私の場合はユウゴが好きなんだけど。
「ん、何これ?」
私たち…否、私の頭上から一枚の紙が降ってきた。私より少し…いや、だいぶ背の高いユウゴはその紙をつまみ取った。ぴらっと紙をひっくり返すと字が書かれていた。が、ユウゴの方が高いため、私には何て書かれているのかわからない。
「何て書かれているの?」
「えっと…『絵本の中に入りませんか?』だって」
え…。
「入りたい!」
「え…?」
ユウゴは一瞬きょとんとした。
「本気で言ってるの?」
「小さい頃、よく話したでしょ?この絵本が好きだって、こうなれたらいいなって」
「まあ、言ったけどさ…」
「私は今でも思っているよ!この絵本の、お姫様みたいに…なりたいって」
ユウゴとこのような恋がしたい、というのは心の中だけにしておくけど。
「そりゃあ、僕だって思っていたよ?今でも…」
ユウゴはそのあとの言葉を飲んだ気がした。その時、絵本が光だした。
「わっ‼」「何⁉」
眩しくて、目も開けられない。
…と、そんなことをしているのうちに辺りの景色は変わっていて、ユウゴは居なくなっていた。
「ユウゴ!どこ⁉て、わあ!」
今気がついたのだが、服までもが変わっていた。淡いピンク色の、ふわふわのドレスだった。あの絵本の、お姫様のような…。
「て、ここもよく見たらあの絵本に出てくるような…?」
辺り一面緑が広がっていて、とても目に優しい。
そんな理由で和んでいたら、不意に誰かが近くで「姫様」と呼んだ。おや、さっきからずっと姫様姫様煩かったのだが、まさか私のことじゃ無いと思っていたからびっくりした。だって肩に手を置かれるんだもん。
「ユウゴ?」
だが、聞いたことのない声だった。から、まあ相手もユウゴではないのだろう。わかりきっているのだが、どうしてもユウゴが出てきてしまう。私が知っている男子はユウゴくらいなもんだから。
「ユウゴ…?ああ、隣国の王子の事ですかな?何故その名前が出てきたのかは知りませんが、あの方の名前をこの国で口にするのはご遠慮ください」
「何故?」
「何故って、姫様が幼い頃からお教えしたでしょう。隣国は黒…それも、暗黒を望む国です。我らの国は白…純白を望む国です。関わってはならない国なのです!…さあ、姫様、行きますよ。ここは隣国との境界線なのですから」
ああ、これも確か、あの絵本の設定だ。こっちは光を司る女神『光』を信仰していて、あっちは闇を司る女神『闇』を信仰している。でもたしか、別の本では…『光と闇が自分達を作り直して』では光と闇は仲が良かったはずだけど?一心同体だったんだから。…国事態の仲が悪いのかな?
「ならどうしてドレスも白じゃないの?」
「何をおっしゃいます⁉この国で白を軽々しく身に付けれるものなど居ません!出来るのは結婚式と、重要な儀式など、とても大事な日に身に付けられるのです。それに、白なら入っているではありませんか⁉」
爺(絵本の中に出てくるおじさんが爺だったから爺と呼んでいる)は私のドレスを指差して言った。…何処に?
「な!わかりませぬか⁉赤に白を加えておるではないですか。そんな有難い光様のご加護にも気がつかないなんて、なんと教育がなっていない⁉よし!姫様私とご一緒に勉強ですぞ、べ·ん·きょ·う!」
エエエエ~⁉こういうとき、ユウゴならきっとさっさと終わらせてしまうんだろうけど、私にはそんなことにもできっこない…。終わった!実はさっき、ここが隣国との境界線だと聞いて、しかもユウゴが王子なら会いに行けるのではと思っていたのだけれど、どうやら会いに行けないらしい…うう、終わった…。
「さ、勉強ですぞ!」
爺は私のうでをつかむと、歳とは思えない速さで駆けていった。私を道連れに。この時、物影から誰かが見ていることに気がついていたら、きっと、何かが少し違ったかも知れない。
こんにちは、桜騎です!今回はやっと絵本中に入れました。いや、今回は本当に時間がかかりました。タブレットのお陰で誤入力が多くて多くて。本当に疲れました。本当にイライラさせていただきました。早くパソコンをつかいたいです。とにかく、大きな画面でない、入力のキーが大きくなくて片手でも入力できるのか、パソコンがいいです。ああ、早くつかいたい…。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。