絵本の中のお姫様
「この絵本、私好き!」
「うん、僕も」
おっとり男子のユウゴと、少しわがままな私、エミリ。二人の仲良し幼馴染が小さいころよく話した、恋の絵本。いつか、こんなふうになれたらなと話したことがあったっけ。
私はそんなことを思い出しながら、見ていた絵本をベッドに置いた。確かに、小さいころは絵本の中のお姫様になりたいと思っていた。今聞けば、かわいい夢だと思う。今も少しはなりたいなんて思っている。だけど私は現在中2。そんな夢があると親に知られたら、一日中叱られるだろう。
「はぁ…」
私はため息をつきながら絵本を元の場所に戻した。勉強机の引き出しのもっと奥、親が見ない所。それはまるで、私の心の奥にある、かくされた思いのように明りのない所に入れられる。
私はその知られてはいけない思いを引き出しにしまうと、学校に行くために着替えた。
「行ってきます」
あまり元気のない声で私は家を出た。
あまりにいきなりで現実感がわかないのだが、その後わずか三分で事件は起きた。急にカバンが重たくなって、開けてみたら、さっき片付けたはずの絵本が入っていた。
「うそっ!何で…?」
一回、自分があまりに絵本の姫を望みすぎるから幻覚が見えたのだろうと思った。だけど重さがある。ページもじっくりと見たけど、どこにも違いはなく、あの本だった。
私はしばらく沈黙したまま絵本とにらめっこ。
すると、後ろから声がかかった。
「エミリ、何そこで突っ立ってんの?」
いきなりの声に跳びあがるかと思った。それほどびくついた。私の後ろにはいつの間にか、中世的な美男子、ユウゴが立っていた。
「べ、べべべべ、べつに?」
私はとっさに絵本を背中に隠す。…が、手元が狂って地面に落とす。さらに、私の声は裏返る。
「なんだこれ?」
ユウゴはその絵本を拾おうとした。私はとっさにその絵本を踏みつける。とたん、私の目からは悲しみの涙が流れる。ああ、私の夢を、踏みつけてしまった…。隠すためなら仕方ないのだが、その私の努力の報いは無いのか、ユウゴはそれが何かを気付いてしまった。
「あ、それ、僕たちの好きだった絵本?何でここにあるの?今日…何か紹介でもする授業あったっけ…?」
ユウゴは絵本を見て、授業の紹介スピーチ的な何かを考えたらしかった。例えば、国語的な何かとか…。ここでうなずいたら、ユウゴとは同じクラスなため、嘘がばれてしまう。私は必死で考えた。
「ち、違うよ!なんか、友達に小さいころ好きだった絵本の話をしたら、その友達、興味を持ったらしくて…」
私は何とか良い嘘をついた。
ふつう、ユウゴも好きだったから絵本の事を隠さなくてもいいのでは…?と考えるだろうが、ユウゴはさっき、「好きだった」と言った。過去形だった。絵本が急に現れた何て言いたくなかった。ユウゴが今、この本の事を好きでなかったら、私がこの本を持っていることに疑問を抱くだろう。「まだ、あの絵本持ってる…」的な感じで。ああ、それは嫌だ…。私、ユウゴに変な目で見られたくない!そうして、私は勝手な妄想を繰り広げ、ユウゴに話す事を拒否した。
「そっかぁ…」
ユウゴはしばらく黙って、目を細めた。そして私を見ると、口を開いた。
「僕も、その絵本紹介したい!!」
「え…」
「だめ?」
「いや、だめじゃないけど…」
…今更、嘘でしたなんて言えるわけない。だって、今この絵本があるためにその理由を話したのだ。それが嘘となれば、別の…本当の理由を聞いて来るに違いない。絵本がいつの間にかここにあったなんて言って、ユウゴに変な誤解(すごいオカルトマニア的な)ふうに思われたくない!ユウゴは…ユウゴは…小さいころからの片思いの相手なんだから!
そんなふうに頭の中でいろいろ言葉を並べてたら、ユウゴは嬉しそうに言った。
「じゃ、いいね。いつやるの?」
訊かれてすぐに思いつくのが放課後、屋上にて。それだったら友達は帰っていると思うし、忘れたのかな?で済むと思ったから。
そしてそれを告げると、私はユウゴと一緒に登校した。
こんにちは、桜騎です。今回は絵本を使ったお話です。今までには書いていない話を書いてみました。しかも、無駄な勢い付きです(笑)意味がわからない部分があったと思います。そこは質問してください。すみません!
お知らせ…というよりも、ごめんなさい的な何か…
テスト期間中は更新できません。次は春休みにパソコンいじる許可が出ました。…親から。それでも、親がいないときは書かせていただきます。ということでよろしくお願いします。読んでくださった方、ありがとうございました。