ファルシオンと言う名の
★叩き起こされたファルシオンと言う名の有機ロボットの独り言です。
夜夢ネタに加筆したものです。
私の夢も近未来になったものですね。
「ファルシオン様!起きてください」
アルシドが四角い箱を揺すったり叩いたりしながら声をかける。
アルシドはピンクのおかっぱ頭の少年だ。
小柄で今にも泣きそうな様子が保護意欲をそそるが本人には不本意らしい。
「起きてくれないと私がアルカタにされちゃいます!」
随分と物騒な話だな。
アルにとってのアルカタは戦って死んでこいって意味で、俺ならファルカタだな。
つまり俺達有機ロボットにとっての所有破棄指示だ。
「起きてくださいってば」
まあ眠る前の記憶によれば有機ロボットは俺とアルしか残っていないはず・・・・それなのに起こす意味があるんだろうか?
昔は子供に一台有機ロボットを!とか言われ、手足となって野山を駆け回ったものだ。
子供のはしゃぐ声を思い出すと懐かしいな。
まあ俺は人型になるとゴリマッチョで、泣かれたのも今となっては良い思い出だ。
「ファルシオン様ってば!」
しつこいぞアル。
主のいないロボットなんて存在に意味はない。
寝てるに限る。
「あるじ達、戻って来たんですよ!」
まあ、あの状況で置いて行かれたのはかなり凹んだが、仕方ないとも思った。
主達の身を守るのを優先しなくてはならなかったのだろう。
それが戻って来た?
「!そうですよ!だから起きてください!」
覚醒を始めた俺の意識にアルが反応を返して来た。
それなら・・・・俺は起きる。
見た目は箱の底に短い足が六本生えて立ち上がっただけなので地味だが。
「おはようございますファルシオン様」
「おはようアルシド」
声も無事に出るのを確認。
アルの回りをてててててと歩いて見る。
手足も問題ないようだ。
そして部屋を見上げて見る。
古びているな。
これから察すると「主」は俺が仕えていた主ではないだろうな。
アルは「人間」と言う意味で「主」と言ったのだろう。
「ファルシオン様。せっかくなので人型で行きませんか?」
「それは構わないが?」
「抱っこしてください!」
しばらく見ないうちに甘えん坊になったものだな。
俺がわざと音付きの溜め息を吐くと、少し赤くなった顔で口を尖らせて睨まれた。
やれやれだな。
俺が箱を開けて形態を変えるとアルは手を振って静止してきた。
「服も作ってください。シャツとロングパンツでいいので」
そうか。
俺は自分のパンツ一枚の姿を確認して服を構築する。
意識を向けるだけで空気から布の素材を作り出し、各パーツが体を覆って服になる。
「さすがです!」
アルが褒めちぎったので頭を撫でてやる。
そのまま見上げて手を伸ばして来たので抱き上げてやる。
「やっぱりこの高い視界は良いです!」
勝手を言っているがアルはいつもマイペースだな。
「相変わらずだな」
「ファルシオン様こそです!」
良くわからないがスルーでいいだろう。
「このまま外に行きましょう!ファルシオン様」
「ああ」
・・・・俺は部屋から外に出る。
どんな世界が待っているかわからないが、なるようになるさ。
作中の名前はすべて夢の中で登場したままの状態です。