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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
アリエノールのミニ留学編

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93 教えることで学ぶ

「ほら、フランツのインプみたいにしっかり働くのだ! 召喚したアリエノールが恥ずかしいではないか!」

 どうにかアリエノールがインプを働かせようとしていたが、インプに鼻で笑われていた。


「だって、もらってる魔力が違うだろ」「向こうみたいなインプ出したいなら、ちゃんとした魔法を使えよ」

 言いたい放題だな……。

「くそ……。正式な『インプ召喚』はまだ使えないのだ……」

 これ、けっこう大変かもな。


 仕事自体は俺の召喚したインプで問題なく進みそうだし、ちょっとアリエノールのフォローをするか。


「なあ、まともなほうの『インプ召喚』の練習するか?」

「うっ……。は、恥ずかしいところを見せてしまったのだ……。しかもさらに恥ずかしいところを見せるのか……」


 おそらく、黒魔法使いが周囲にいない環境だと、今の魔法で誤魔化すこともできたのだろうな。幼い頃に覚えた簡単なタイプの魔法をずっと使っていたのかもしれない。


 そういうことってなくはない。子供の時に我流でフォークとナイフの持ち方を覚えてしまうと、大人になっても矯正は難しい。少なくとも無意識では無理だ。しかも、なまじ使えていないわけではないので、余計に強い意志がないとなおらない。


「けど、どこかで勉強しておかないと一生使えないままだぞ」

「……わかった。教えてくれ……」


 俺は詠唱の発音の仕方や魔法陣の描き方などをできるだけ、ゆっくりと教えていった。俺も教え慣れているわけじゃないから、手探りの部分もある。


「こ、こうか……?」

「それ、円の部分がカクカクしすぎてる。それじゃ、別の魔法陣になっちゃうから、もっとやさしくカーブを描くようにしろ」

「うん。次こそ成功させてみせるのだ!」


 アリエノールは物覚えがいいほうではなかったが、真面目ではあった。何度もひたむきに杖を動かして、汗もかくぐらいだった。まだ九月は暑い。


 なんていうか、たまには教えるのも悪くないな。

 俺が唯一の新入社員で、無論俺の後輩なんていなかったから、教える相手もいなかった。しかし、いざ教えるとなると、そこで初めて気づくことも多い。


 魔法の詠唱一つでも意味もあまり気にせず発音しているけど、先人が効率を重視して作ったことがよくわかったりなんてこともある。


 これ、ケルケル社長は俺の成長も見越して、アリエノールを俺につけた可能性があるな……。社長なら、その程度のことは考えていそうだ。


 二時間もすると、「インプ召喚」もほぼほぼ成功するようになった。少なくとも、「ダメダメなインプ召喚」とは別の魔法になっている。


 ちゃんと召喚したインプがアリエノールに礼をした。


「おっ、これはいけたんじゃないか!? やった、やったのだ!」

「よくやったな、アリエノール。これで成功だ!」


「うん、ありがとう!」

 ぱっと、にこやかにアリエノールが笑みを見せた。正直、わずかにあどけなさが残っていたりして、ものすごくかわいかった。もし魔法学校でこんなふうに下級生に微笑まれたら、絶対付き合おうと告白したことだろう……。


「お、おう……。どういたしまして……」

 アリエノールも俺の顔を見て、少しやりすぎだったと気づいたらしく、うつむいてしまった。


「しまった、お前に素で礼を言ってしまった……。こんなの自分らしくない……」

 あくまでも俺はライバルの設定なのに、そこに上下関係がつくような対応をしてしまったことを後悔しているんだろう。


「ここは、黒魔法的な返礼をしなければな……。か、顔を上げろ、フランツ!」

 言われたとおり、顔を上げた。逆らったら、また文句を言ってきそうだし。


 すると、いきなりアリエノールの顔が近づいてきて、唇を奪われた。

 でも、その唇はすぐに離れたけど。


「こ、これが黒魔法使いらしい返礼なのだ……。互酬が正確に行われないと、て、天秤がおかしくなるからな……。黒魔法使いとして、それはよくないのだ……」

 モロに照れながら、アリエノールが腕組みして弁解めいたことを言った。

「わ、わかった……」


 あれ、アリエノールってこんなにかわいかったっけ……?


 そのあと、休憩時間にセルリアが俺にぼそぼそとこう言った。

「ご主人様、あのアリエノールという方、黒魔法的誘惑術だけ、とてつもなく高度なんですわ……」

「なんだ、その偏ったアビリティは……」


「黒魔法的誘惑術の難しいところは、狙いすましたキャラ作りでも、レベルが落ちてしまうのですわ。あくまでも、本人も気づいてないほどの無防備なところから誘惑を行うのが最上なんですの。それをあの方、見事にやってのけていますわ……」

「それは理解できなくもない……」


 あんな態度をとられて、意識するなと言われても無理なのだが、本人はあくまでも強がっているし、そこにウソはないんだよな。


「あの、これ、そこそこ本気で申しますが、アリエノールさんと婚約するのもいいかもしれませんよ?」

 直球ですごいこと言われた。

「それ、セルリアに言われるの、複雑だな……」

 俺はセルリアを間違いなく好きだし、それをセルリアもわかっているはずだ。もちろん、セルリアがそう言う理由もわかる。


「サキュバス的には愛人ポジションぐらいのほうが仕事している気になりますし、わたくしも逆に燃え上がる部分もあるんですわ。それでもご主人様を愛し抜ける自信ぐらいはありますし」

 そうなんだよな……。ある種、サキュバス的な愛の観念って人間の夫婦感より広いというか、おおらかなのだ。


「まだ入社一年目だし、もう少し落ち着いてから考えようかな……」

 いくらなんでも性急すぎるので、ここははぐらかす!


「はい。実を言うと、そう言ってくださるご主人様を見るのは、それはそれですごくうれしいんですわ」

 そこで天使の笑みを見せてくれるセルリア。こっちはこっちで、かわいすぎる。


 黒魔法使いだし、いっそ、五人ぐらいと結婚できないのかな……。


6月発売の本の作業もかなり進んでおります。表紙など発表できるようになりましたら、公開しますのでお待ちください!

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