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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
アリエノールのミニ留学編

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92 アリエノールのミニ留学

「「えええええっ!」」「あらまあ」

 俺とメアリがが驚愕の声を出して、セルリアはちょっと楽しそうだった。


「最初はこの本社の地下にある空き部屋でも使ってもらおうかとも思ったんですよ。私が住んでるところですね~。あるいは住み込みで働いてるクルーニャさんの部屋の隣とか。とにかく、部屋はいくつかあったので」

 この本社はもともと砦だからな。地下室も含めて部屋の数は豊富にあるのだ。


「けど、同じ建物だと、一日中外に出ないことが頻繁に起きちゃいますよね。それ、健康にもよくありませんし、せっかくミニ留学というぐらいなんですから、いつもと違う街の空気も吸って見聞広めてほしいんですよ」

「一理ありますね……」


 職場と住んでる場所が一緒だと気持ちが休まらなくて、心が病みがちになるという話も聞いたことがある。気持ちの切り替えは難しいだろう。


「それに、どうせなら仕事外の時間も、同期の仲間とふれあっていただくほうがいい経験にもなるかなと。ということで一緒に暮らしていただくことになりました!」

 ふれあってという表現で、また余計なことを思い出してしまった。アリエノールとはさんざん物理的にふれあったからな……。また、顔を合わすの、気恥ずかしくもある。


「わかりました……。不安はなくはないですけど、一時的なものですし、そこは我慢したいと思います……」

 部屋も完全に個室が与えられてるし、アリエノールの性格上、まったく出てこない可能性もあるけど。


「うふふふ。みんなで楽しみましょうね~」

「はぁ……。なんか変なのが来るんだね……」

 セルリアとメアリの反応は対照的だったけど、とにかくアリエノールが来るのは決定した。



 そして、九月。

 アリエノールが使い魔のカラスである『青鴉せいあのリムリク』とともに会社にやってきた。


 あいつ、また大言壮語を先輩たちにも吐いて空気を悪くしないかなとびくびくしていたが、杞憂だった。


「シズオグ郡のカーライル黒魔法商店から来ました、アリエノール・カーライルです……。不束者ですが、どうかよろしくお願いします……」

 社長とファーフィスターニャ先輩の前で、無茶苦茶緊張していた! 借りてきた猫状態!


 そっか、アリエノールは目上とはっきりわかる人間の前ではとことん下手に出るタイプなんだな……。体育会系の環境だとこういう奴、割といる……。


 カラスのリムリクが「アリエノール、アホー、ダケド、イイヤツ、ユルセー」とフォローだかなんだかわからないことを言っていた。

「お前は余計なことを言うんじゃないのだ!」

 アリエノールがぽかんとリムリクを叩いた。なんだかんだでいいコンビに見える。


「ファーフィスターニャだよ。よろしく」

「社長のケルベロスのケルケルです。短い間ですが、よろしくお願いいたしますね」

 会社側のメンバーはこういうことは慣れているのか、余裕があるな。


「は、はい……粉骨砕身、滅私奉公の精神で頑張ります……」

 こいつ、キャラ違いすぎるぞ……。


「そんなに根を詰めちゃうと三日できつくなっちゃいますよ。息は長くやりましょう。さて、アリエノールさんはフランツさんと研修先で一緒でしたよね?」


 アリエノールがちらっとこっちを見て、顔を赤くした。

 絶対、今、いろいろ思い出したよな。俺もそうだからわかる。

「はい。お、お世話になりました……」


「しばらくの間、アリエノールさんはフランツさんについて、この会社のお仕事を学んでいってください」

 ケルケル社長の笑みに、アリエノールは「ひゃ、ひゃいっ!」とちょっと噛んで答えた。



 そんなわけでアリエノールは俺に付き添う形になった。

 大丈夫なのかという気もするが、あくまでも仕事の範疇だし、こいつも真面目にやるだろう。


「ふははははっ! まさかお前とまた会うことになるとはな! 今度こそお前をぎゃふんと言わせてやるぞ」

 大丈夫かな……。それと、今時、ぎゃふんって言う奴はいない。


「このミニ留学でお前が強くなった理由を調べ上げて、お前に負けない黒魔法使いになってやるぞ!」

 おっ、意欲があるのは事実らしい。

 俺が黒魔法使いとして調子よくやれてる理由って、有力な黒魔法使いの子孫だった関係もあるんだけど、言わないほうがいいかな……。


「わかった。じゃあ、しっかり俺から技術でも盗んでくれ」

 俺はセルリアと一緒に郊外の森を歩いている。

「言われなくてもそうしてやるのだ! さあ、最初はどんな忌まわしく恐ろしい内容だ? それと引き換えにお前は力を手に入れているに違いない!」


 森の先の畑に到着した。


「この畑をインプを呼び出して耕す」

 しばらく、アリエノールはぽかんとしていた。

「畑を?」

「耕す。しっかり耕す」


 まだ、アリエノールはぼうっとしていたが、やがてぽかぽかこっちを叩いてきた。


「お前、ふざけているだろ! アリエノール様に強くなる秘訣を教えないつもりだろ! ずるいぞ!」

「いやいやいや! ほんとにこういう仕事なんだって! だいたい、毎日、邪神と何か契約するような仕事ばかりやってたら、身がもたないだろ!」


 セルリアは一歩下がって、「微笑ましいですわ~」とずっと楽しそうにしている。一応、主人が叩かれてはいるので止めてほしい。痛くはないけど。


「それはそうだが……王都の黒魔法使いって、もっと華やかなものではないのか……? びしっと最新の流行のローブを着て、業界用語を使いまくってるのを想像していた……」

 こいつ、王都に変なあこがれ、もって上京してきたな。

 リムリクが「イナカモノー、イナカモノー」と煽っている。このカラス、主人より賢い可能性がある。


「ほら、インプを召喚して、仕事するぞ」

 まず、俺がインプを呼び出して畑仕事を頼む。

 このあたりはいつもの流れだから、すぐに進む。


 一方、アリエノールが呼び出したインプは目つきも悪い、いかにもやる気なさそうな連中だった。

「さあ、お前たち、畑を耕すのだ!」

「へいへい。そんなデカい声出さなくても聞こえるっての」「やりゃあいいんだろ、やりゃあ」


 なんかガラの悪いインプたちだな……。

 そして、仕事も雑だった。


「ご主人様、あれは同じ『インプ召喚』ではなく、別の魔法の『ダメダメなインプ召喚』ですわ。魔力もあまり使いませんが、インプもろくに魔力をもらえないため、やる気のあるインプは全然来ないのですわ」

「そっか、『インプ召喚』ですら使えない奴は使えないんだな……」

 俺は恵まれていたらしい。それは最初からクリアしていたので、そこに壁はなかった。


アリエノールは書いていて楽しいです! 6月にダッシュエックス文庫さんより発売します! よろしくお願いします! おまけも収録予定です!

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