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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
アリエノールのミニ留学編

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91 部屋が増えている!

 実家での夏休みも終わり、俺たちは無事に実家から王都郊外にある社員寮に戻ってきた。


「あ~、なんか帰ってきたって気がしますわ」

 セルリアの言葉に俺もうなずきそうになる。

 住んでた期間は圧倒的に実家のほうが長いのに変な話だ。


「わらわもそうだよ。ふあ~あ。馬車の移動で疲れたから、ちょっと昼寝してくるよ」

 メアリはあくびをして寝室のほうに消えていってしまった。なんで、『名状しがたき悪夢の祖』が移動ごときで疲れるのか謎だけど、別に体力があるのとかとは直接関係ないのだろうか。


「俺もちょっと疲れてきたかな。セルリア、仮眠するから三十分ぐらいしたら起こしてくれる?」

「わかりましたわ。じゃあ、ご主人様が起きるまでほかの部屋の掃除でもしておきますわ」

「別にセルリアものんびりしててくれ。料理も今日から作るのは大変だと思うし、今日は王都のお店で済ませないか?」


 セルリアは働き者すぎるので、たまに働かなくていい要素を入れないと、過労になりかねない。


「でも、こういう日こそわたくしの手料理を召し上がっていただきたくもあるのですが」

 二つの手を重ねるようにして、セルリアが言う。ちょっとしたしぐさがやっぱりかわいい。


「うっ……そりゃ、俺もセルリアの手料理食べたいけど……そうやって甘えすぎる関係ってよくないっていうか……」

「でも、わたくしはご主人様の使い魔ですから、そんなにおかしくはありませんわよ」

 ダメだ。普通に論破されそうだ。しかし、ここは心を鬼にして?セルリアに楽をさせるためにも外食に――


「うわー! なんだ、これっ!!!!!」というメアリの声が響いてきた。


 偉大な魔族が叫んだのだから、さぞかしとんでもないことがあったはずだ。俺もセルリアもすぐにメアリの部屋に移動する。


 ちなみに俺とセルリアの部屋と、メアリの部屋は別々になっている。プライバシー的な問題もあるけど、ベッドを一つの部屋にそんなに入れられないというのもある。


「意外とゴキブリが出たとかいったことかもしれませんわよ」

「そういえば、フナムシを見た時に、フナムシとゴキブリだけはダメってメアリ、言ってたよな」

 とはいえ、ゴキブリが出てもショックなので、ほかの理由であってほしいけど。


 俺がメアリの部屋を開けると、部屋の奥にドアが見えた。

 メアリの部屋の奥に部屋などないはずである。建物の構造ぐらい俺も知っている。


「あれ? どういうこと? 幻覚系の紫魔法でもかかってる……?」


「そういう様子はないし、実体もあるみたいだよ。つまり、いつのまにか、ドアが増えてるっていうことだね……」

 メアリは驚きと憤りが半々ぐらいの表情をしていた。


「わらわがいない間に、いったい誰がこんな無許可の工事をしたの……? 一か月連続で就活で圧迫面接される悪夢を見せちゃうよ」


 地味に精神を削ってくる悪夢だな。圧迫面接のきついところは、そこに合格しても、たいてい圧迫面接してくるようなところの時点でろくな会社の環境じゃないってことだ。なので、圧迫面接の時点でハズレ確定なので、テンションすら下がる。


 かつて俺の読んでた小説でも暴力系ヒロインというのが一定の需要を持ってた時代があったけど、あれはヒロインがかわいいから許されていたことだ(なお、女子が読む小説にも、女子を連れまわすオラオラ系の男キャラがいた)。

 オークをぶっ壊した顔みたいな奴が暴力振るってきたら、ただの殺戮対象にしかならないし、胸もときめかない。ハズレなだけだ。圧迫面接もそういうハズレ感がある。


 圧迫面接の話に脱線したので、元に戻す。


「あの、メアリさん、ちなみにドアは開けてみたんですの?」

 セルリアはこの中で多分一番冷静だ。

「ううん。まだ。もし、異世界へとつながってるようなものだったら、困るでしょ? ここに住んでるのがわらわとわかってて、ケンカ売ってるとしたら、向こうもそれなりの敵かもしれないしね」


 なるほどな……。そういうリスクもありうるのか。

「じゃあ、慎重に調べないといけないな」


「でも、慎重に調べるの、やっぱ面倒だから開けちゃうけどね」

 がちゃり。

「おい、結局開けるのかよ!」

 リスクを知ってても、そのまま容認するだけか。メアリだからこそできるストロングスタイルだ。


 しかし、とくに何も問題は起きなかった。

 ドアの外側には、ごく普通の、メアリの部屋とほぼ同じ様式の部屋が広がっているだけだったからだ。

 ただ、殺風景というか生活感がない。ベッドと机、簡単な魔法で点灯するライトがあるだけで、一言で言うと、宿屋の一室という印象なのだ。


「ありふれた部屋だね」

「うん、俺もありふれた部屋だと思う」

 セルリアが「外から確かめてみませんか?」と言うので、外に出て見てみたら、純粋に一室分、増築されていた。

 ひとまず、魔法でもなんでもないことがわかったが、どうしてこんなことに。


「今日、社長は出社してるはずの日だし、聞きに行ってみる」

 それが一番早い。

 ちなみに、セルリアとメアリも暇だから、ついてきました。



「あ~。そうでした、そうでした! 言うの、忘れていました。ごめんなさいね」

 ケルケル社長にごめんなさいと言われたら、俺は許すしかない。問題は理由だ。


「なんで、あんな部屋が増えてるんですか? サービスならそれはそれでうれしいですけど」

「ほら、ミニ留学制度で九月からアリエノールという方がいらっしゃるという話をしたじゃないですか」

「ああ、はいはい。この会社でしばらく学ぶことになるんですよね」


 アリエノールはモルコの森というところで代々、黒魔法使いで飯を食っている、いわゆる自営業系の黒魔法使いだ。絶妙にポンコツだけど、憎めないところがある。あと、一緒にサバトもしちゃったし……。


「そのアリエノールさんの住まいをどうするか考えたのですが、あの社員寮を増設してそこで暮らしてもらうのがいいかな~と。それで、ああいう形にしました」

「「えええええっ!」」「あらまあ」

 俺とメアリがが驚愕の声を出して、セルリアはちょっと楽しそうだった。



6月発売のダッシュエックス文庫の作業中です。お待ちくださいっ!

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[良い点] セルリアちゃん、正妻っぽくて好き…余裕あるところも好きです…。
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