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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
フランツ、実家に帰省編

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85 フランツが黒魔法に強い秘密

 そこから先の展開は、ある程度予測がついた。

 俺の先祖は結局、国家を滅ぼそうとしていたことが知られて、あまたの魔法使いたちの協力により、ついに捕縛され、処刑されたという。

 捕まる直前とおぼしき殴り書きみたいなもので、資料は終わっていた。


「だが、吾輩はこの記録を子供に託した。いつか吾輩の末裔がこの世界を闇で覆い尽くすことであろう、吾輩は末裔すべての中に宿っておるのだから――おしまい」

「そっか……。ツッコミ入れるところが多すぎて大変なんだけど、まあ、昔の人間だから徳が高いなんてことあるわけないしな」


 この資料が厳重に隠されていた理由もわかった。超危険人物の一族と思われても危ないからな。


「いやあ、過去にとんでもない奴がいたんだな。しかもメアリの兄とつながりまであったなんて」

 俺としては、それで話はすんだ気になっていた。


 しかし、メアリはまじまじと俺のほうを見つめている。


「こんな奇跡みたいなことがあったんだね……わらわ、これは運命だと思うよ……」

「そうだな。まさか俺の先祖がメアリの兄を召喚しただなんて――」

「いや、それもあるけど、それじゃない」


 ほかにどこに驚くところがあるんだろう。先祖がシスコンなところだろうか。

 少なくとも、俺には妹がいないからシスコンでは絶対にないぞ。


「ほら、わらわ、以前フランツに『千年前に国家滅亡を企てて処刑された伝説的な黒魔法使いの末裔』って設定にしといてってお願いしたよね」


「ああ、新人の俺に召喚されたって知られたら、メアリの格が落ちたように思われるもんな」

 召喚当初、入社して間もない俺に呼び出されたことに、メアリは少なからずショックを覚えていた。それもやむをえない。


「フランツ、わずかなズレもなく『千年前に国家滅亡を企てて処刑された伝説的な黒魔法使いの末裔』だったんだね……」

「あっ、ほんとだ! すごい偶然だな!」

 俺の一族に魔法使いなんていないと思ってたけど、かつては大物がいたんだ。


「偶然なんかじゃないよ。運命なんだよ! わらわとフランツは出会う運命だったんだよ!」

 すごく、うれしそうにメアリは俺に抱きついてきた。


 たしかに、こんなところで奇跡を感じられたなら、もう、それは運命と呼んでもいいかもしれないな。


「素晴らしいですわ! 愛は二人を結びつけるのですわね! 愛より強固なものはありませんわ!」

 俺たちの横で、セルリアが感動しているのか、ハンカチで目元をぬぐっていた。セルリアは恋愛ネタに関するものを見ると楽しくなるらしい。


「愛かどうかはわからないけどね……。ほら、運命にもいろいろあるし……」

 メアリは言葉で直接言われると、そこそこ照れるところがある。


 その時、もう一つ、運命としか思えないようなことが起きた。


 ――そうだ、お前には欲望を乗りこなすだけの素質があるのだ。吾輩の血を引くのだからな。吾輩はほんの一部、お前の中におる。吾輩は末裔たちの中に遍在しておるのだ。


 頭にその声はたしかに聞こえた。


 ああ、無人島で聞こえたあの声はご先祖様のものだったのか。

 実家に戻ってきたら、いろんな謎が解けた。俺が黒魔法に素質があったのも、ご先祖様の影響が少なからぬあるはずだ。

 すべて知った気になってた自分の家だけど、調べてみるもんだな。


「でも、ちょっと気になることがあるんだよね」

 メアリがもう一度、資料をぱらぱらめくり出した。


「このフランツのシスコン先祖、お兄ちゃんを召喚したまではいいんだけど、そのお兄ちゃんを使って、とくに破壊活動をしてる感じもしないんだよ。王都を滅ぼしに行くなんて記述もとくにないし」

 なるほど。何を具体的に企てたかわからないということか。


「それは超極秘の作戦だから、そこに書いてないだけなんじゃないか。見つかったら、ただじゃすまないことだし、記録に残さない気もする」

「でも、それにしては妹への偏愛ぶりまで書いてるよ? これも見つかったら、つらくない?」

「それは…………知られてもいいと割り切ってるぐらいにシスコンだとか……?」


「せっかくだし、この資料、もうちょっと読んでみるよ。ポエム部分も読んでみたいし」

 千年前の先祖は他人とはいえ、先祖のダメダメな部分を見られるみたいで、ちょっときつい。



 昼からはセルリアもメアリも家でごろごろしてもらった。俺もその日は家から出なかった。

 こういうのって、実家にいることが親孝行みたいなものだし、そこは別にいいだろう。


 ちなみにセルリアは母さんのミルキから料理を習っていた。

「ほら、セルリアちゃん、こうやって小麦粉の皮に包んで、油で揚げるのよ」

「あっ、なるほど! これはおいしそうですわね!」


「ふふふ、セルリアちゃん、筋がいいわ~」

「頑張って、家庭の味を習得いたしますわ!」

「あらあら~。いつでもできちゃった結婚してくれていいのよ。孫になら何千回おばあちゃんって呼ばれても許せる自信あるし」


 もう、完璧に嫁として迎える準備してるな……。


 ちなみに親父はセルリアをじろじろ見ていると母さんに言われて、買い物に行くことを命じられていた。親父の威厳が下がるのが止まらないのだが。


 一方、メアリはずっとテーブルであの先祖の資料を読んでいた。


「そんなに熱心に読んで面白いものか?」

「こういう古い記録を読むと、その人の人となりがわかってくるんだよ。ちなみに、今のところ、妹が好きでたまらないということしか伝わってこない」

「それだったらしっかり読む込む前から確定的に明らかだから!」


 ちなみにこのことは親父も母さんもまったくの初耳だったらしい。家系図でもそんな人間はいないことになっているし、俺の一族は黒魔法使いがいたという記録をなかったことにしたのだろう。


 でも、わずかでも自分や先祖が生きてきた証を残したいという気持ちもあったんだろう。それで、末裔の誰かが厳重に封印して置いておくという手をとって、そのままになっていたんだ。


「じゃあ、ちょっとポエムの泣ける部分、朗読してみよっか」

「……うん、好きにしてくれ」

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