8 決闘を申し込まれた
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よくわからないうちにクラス最強のリア充になったらしい。
ただ、まだ俺に納得のいってない奴が残っていた。
にらまれているのを感じる。
ドルクというたしか田舎貴族の五男だ。土地はもらえないらしいが、コネでそれなりにいい会社に就職が決まってるはずだ。
庶民の俺からしたら、いろいろと勝ち組だ。といっても、当人からすれば、どうして長男じゃなくて五男なのかと思ってる可能性もあるだろうけど。
「たしかに黒魔法には使い魔を呼び出す魔法もある! しかし、魔法学校の生徒ごときが呼び出せる代物じゃないはずだ」
「うん? ドルク、それはどういうことだ?」
なんとなくケンカを売られてるのはわかったし、売ってくる理由もわかった。
偉大な使い魔を連れてきてるってことは、お前らより俺のほうが魔法使いと優れているって言ってるようなものだからな。それを受け入れられない奴もいるだろう。
「この僕も白魔法を使って、ホワイトゴーレムを動かすことができる。そのゴーレムと君の使い魔の決闘を申し込みたい!」
ホワイトゴーレムというのは、名前のとおり白いゴーレムだ。操作に適した石がちょうど白さの目立つ石であることによる。
物によっては体長十メートルにもなるものもいて、労働力・軍事力としての活躍が期待できる。
「決闘って、そんなの困る……」
「いいや、受けてもらう! 今まで僕のホワイトゴーレムはこのクラス随一のものだった。だが、君の使い魔のせいで、その地位も揺らいだも同然だ! 君は挑戦を受ける義務がある!」
たしかに大きなゴーレムを動かせるだけの実力があれば、就職先は事欠かない。
「わかりました! 受けて立ちますわ!」
セルリアがそう宣言した。
「ご主人様がここで決闘を逃げれば、ずっと恥として記録にも記憶にも残ります。ここは戦うしかありませんわ!」
「でも、危ないって!」
対ゴーレム用の魔法なんて特化したものは習得してない。
俺は学校の成績は良かったけど、それは全部もろもろ含めてのことで、戦闘に特化した能力などない。
人並みに火やら風やらを起こすことはできるけど、そんなものでゴーレムを沈黙させることは、無理のはずだ。
「ご主人様、恐れることはありませんわ。必ずお守りいたしますから」
「いや、セルリアが危ないんだって! ケガしたらどうするんだ!」
セルリアはしばらく、あっけにとられたようにぽかんとした顔をしていた。それから、なぜか涙目になった。
もしかして、ひどいこと言ったかなと不安になった時には飛び込まれて、抱き締められていた。
「ご主人様、本当に優しいんですのね……。ご主人様の使い魔でわたくし、よかったですわ……」
「いや、おおげさだって……。そりゃ、使い魔のケアぐらい考えるって」
「数百年前の黒魔法使いの方は使い魔を消耗品程度にしか考えないことも多かったと聞いていますわ」
昔の黒魔法使いには、とんでもない奴もたくさんいたんだろうな……。
完全にこっちの空気になって、ドルクは決闘を申し込んだものの、なんかおいてけぼりになっていた。ちょっとかわいそうだ。
フランツ、リア充だから爆発しろよ、なんて声も飛んでくる。
今の俺がリア充であることは否定のしようがない。
「それで、ドルクさんでしたっけ? あなたは決闘に何を賭けますの?」
そうか、決闘には何かを差し出すルールがある。共通のものを二人が争ってるなら、勝者がその権利を得ればいいだけの話だけど、今回はそういうのとも違うし。
「僕は貴族の五男で、一代限りの男爵だ。この権利は譲渡可能だから、これを譲ろう」
男爵は爵位では一番下で、そのままでは世襲できない。五男というドルクの微妙な立場が反映されている。
「いいですわよ。では、こちらが勝ったら…………ご主人様、何かございます?」
「いや、俺、たいして金もないし、特別な家柄とかじゃないから、土地とかもないし」
ケチなのではなく、ないものはないのだ。
「わかりましたわ。では、三日間、ドルクさんの使い魔になるというのはいかがでしょうか?」
セルリアが堂々とそう宣言した。
ドルクが生唾を呑んだ。
あいつ、絶対エロいこと考えただろ!
「わ、わかった……。では、それでいいだろう……」
外野から「ドルク、お前、ムッツリだろ!」「結局、体目当てかよ!」「貴族ほど性癖がおかしいのよね」みたいな声が響いてくる。
本人は「うるさい! そんなこと一度も言ってないだろ!」と顔を赤くして言っていたけど、だいたい図星だと思う。
「なあ、セルリア、大丈夫か……?」
俺としては、とにかくセルリアのことが心配だ。
絶対にドルクの使い魔になんてできない。セルリアの身を守るのは俺の義務だ。
「結論から言えば、絶対大丈夫ですわ」
セルリアは自信満々に言った。
「それにこの決闘、受けて立つと言ったのはわたくしですし、わたくしがご主人様の名代として戦いますわ。ご主人様はあくびでもしながら見物しておいてくださいまし」
いや、負けたらセルリアがとんでもないことになるのに、あくびは無理だろ。
「じゃあ、今日の放課後、決闘だ! 会場は魔法学校のグラウンドで!」
魔法学校にも体育の授業はあるので、グラウンドもあるのだ。魔法学校といっても、ずっと暗い部屋で、鍋にトカゲの尻尾やカエルの目玉を入れているわけではない。
「とっとと決着がつくのはいいことですわね」
セルリアもあっさりうなずいた。
もう、なるようになれ。
明日も2回更新目指します!