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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
黒魔法業界の新人研修編

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71 好敵手とのサバト

「よく来たな」

 背後から声がかかって振り向くと、アリエノールがいた。


「夜が明ければ、またたもとを分かつことになるわけであるが、お前との因縁をそのままにしておくわけにもいかんと思ってな」


「まさか、最後に勝負しろとか言う気か……?」

 それだと面倒だけど、そんな気がしてきた。ほかに誰もいないしな。

 研修生全体でのイベントじゃなくて、アリエノールが一人で企画したことだろう。使い魔禁止というのもセルリアを加えないためだと思う。


 びしっと、アリエノールは俺のほうを指差した。

「よいな、フランツよ。必ず、王都に戻ってもこれまで以上に研鑽けんさんを積み、大魔法使いになるのだ。そう、この私、アリエノールの好敵手として恥ずかしくないようにな!」


 あれ、これって……。

 意訳すると、「王都に戻っても頑張れよ」とエールを送られてると認識していいよな?


「この私も、名門の家を絶やさぬよう全身全霊を尽くす。親は『もう田舎の黒魔法使いも自分たちの代で畳むことになるかな、これからは白魔法覚えてどこかの企業に入るかな』などと言っているが、そんなことはさせん!」


 これは意訳すると、「家族経営の黒魔法の仕事、地元でまだまだ続けていくぞ」ということになるだろうか。


「私はモルコの森でまだまだやっていく! あっさり都会に屈するつもりはない! むしろ都会からど田舎にある私の工房に客がいちいちやってくるようにしてやる! 田舎に来ないと買えない黒魔法の商品をばんばん売ってやる!」


 これはアリエノールなりの決意だ。

 土着の黒魔法使いも経営は厳しいんだろうけど、それでも必死にあがいてやるとアリエノールは言っているのだ。


 そこで、アリエノールは俺から視線を横にそらした。


「実を言うと……研修で上手くいかないから、もう私も違う仕事につくべきかと、ほんのわずかに……のみの足ほどには思った。しかし、お前に田舎の黒魔法使いならではの生き方があると教えられた気がした……。ま、まあ、私の知性でそれに気づいただけだから、礼を言う気はないが……」


 いや、それ、もう礼を言ってるに等しいぞ!


「黒魔法を使って、いろんな山の獣を捕獲する仕事をすれば、猟師の数も最近減っているし、商売にできるかもしれない……。獣を集めれば生き胆を使った黒魔法の商品も作れるしな……」


「新しいビジネスチャンスがつかめそうなんだったら、本当によかったよ」

 個人経営だと、自分で創意工夫をしていかないといけないから、それはそれで大変だな。俺は一応、勤め人だからな。


「別にお前に心配される義理などないが……伝えるだけ伝えておこうと思った。お前がこれを私の礼ととろうがとるまいが、そこはお前の勝手だ!」

 顔を真っ赤にしているのが、夜の闇の中でもわかる。

 どんだけツンデレなんだよ! もう、素直に一言「ありがとう」って言ったほうが早くないか!?


「わかった。俺のほうで勝手に解釈するよ」

「そうか。うん……そうだな……」


 一歩、二歩、アリエノールが俺のほうに近づいてくる。なんだろう、握手でもしようっていうことか?


「それじゃ、サバトをはじめるぞ」

「え、サバトってもうこれで終わりじゃないのか?」

 もともとオリエンテーリング的なものの黒魔法的な呼び方だと思っていたのだけど。


「サバトといえば、に、肉欲の夜を捧げねばならんだろうが……」

 アリエノールがそのまま身を寄せてくる。

 あれ、これって……。


「黒魔法使いらしく、乱れねばならんからな……。もちろん愛とかそういうのはないぞ。むしろ愛も何もないところで乱れることこそ、真実の愛を標榜するような白魔法やその信仰する神への冒涜となるのだ……」

「意図は、理解した……」


 アリエノールの体がふるえているのがわかった。あんまりいじめちゃダメだ。


「まずは髪を撫でろ……。ゆっくりとだぞ……。やさしくとだぞ……。こういうのは雰囲気が大事だからな……」


 そのあと、長時間、冒涜的なことをしました。

 黒魔法使いなので、こればっかりはしょうがない。業務のうちだ。


 しかし、研修の施設の裏手でこういうことをするのって、ばれたら反省文コースなんじゃないだろうか。会社にも苦情がいったりすると、社長の顔にも泥を塗ることになるから、まあまあ気をつかいはする――と思ってたのは最初だけでそういうことは忘れていた。


「ふぅ……サバトはこんなものでよいな」

 夜が明け始める頃に、やっとアリエノールはそんなことを言った。

 落ち着き払った表情でアリエノールは服を着はじめる。

 そこをじっと見るのはおかしいので、俺も目をそらしながら自分の服を着ることにした。


「なあ、アリエノール、お前の連絡先教えてくれないか。ほら、お前だって同期のつながりはあったほうがいいだろ……」

 ちゃんと理由を言わないと、この状況だと下心があるようにしか聞こえないよな……。


「一回しか言わないからな……。シズオグ郡のモルコの森だ。王都を西に百五十キーロほど行くと、フーディー郡に着く。さらに北へ三十キーロほど行けばシズオグ郡だ……。郡都からモルコの森行きの馬車が一日三便出ている。終点でカーライル黒魔法商店がどこか聞けばすぐわかる……」

 思ったより詳しく教えてくれたな。これ、また会わないとまずい気がする。


「お前の居場所も教えろ……。呪いの品を送る時に必要だからな」

 俺は自分の住所を伝えた。


「では、また会おうな好敵手よ!」

 手をさっと振って、アリエノールは去っていった。


 なんというか、長い一日だった。



 その後、俺はそうっと部屋に戻った。

 セルリアの横のベッドに入る。


「お楽しみでしたか?」

 さらっと言われた。


「あっ、うん、はい……。ばれてたんだな……」

「ご主人様、なかなか今日はポイント高かったですわ。最終日に抜け出してなんて、サキュバスとしても感心しますもの! さすがわたくしのご主人様ですわ!」


 そこを評価されるのも変な気分だけど……。


研修編は今回でおしまいです! 次回に続きます!

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