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4 黒魔法の素質があった

 そして、光が収まった後には――


 胸をやけに強調した服を着た悪魔っ娘が浮いていた。


 胸を強調と書いたけど、下半身もいろいろと危ういな……。いわゆるビキニアーマーみたいなのの、布バージョン。


「あっ、召喚されてしまいましたわね。わたくし、サキュバスのセルリアと申しますわ」


 見た目と違って、礼儀正しくセルリアという女の子は頭を下げた。


「こんにちは、今、召喚したフランツと申します……」

 俺も合わせて頭を下げた。


「ああ、そんなにかしこまらなくてもけっこうですわ。あなたがご主人様なのでしょう? こちらは使い魔ですわよ」

 とはいえ、しゃべり方とか立ち居振る舞いとか向こうのほうが貴族っぽいんだけど。


「フランツさん、説明しますね。サキュバスは魔界に住む魔族の中でも、かなり上級の存在なのです。とはいえ、召喚した以上はちゃんと主人に従ってくれますので、ご安心を」


 どうやら、使い魔という立場は魔界の住人にとって恥ではないらしい。


「そうですわね。この世界で言うと、いわば学生時代のバイトぐらいの感覚ですわ」

 黒魔法の価値観、勉強になるな。


「それにしても、すごいですね、フランツさん……」

 社長は感心したというより、びっくりしているようだった。犬の尻尾が左右にぶんぶん振れている。


「一発で上級魔族のサキュバスを使い魔にするなんて、とてつもない才能ですよ! 黒魔法業界向いてますよ!」


「そ、そうなんですか……。全然気づかなかった……」

 魔法学校では使い魔召喚なんてやらないからな。生徒がうかつに召喚して、魂を要求されても困るだろうし。

 黒魔法は中途半端な知識でやると、事故の元だから扱うなという意識は学校でけっこう強かった。


「もう少し試させてもらっていいですか? じゃあ、今度はこのインプを強制送還する魔法も唱えてもらえませんか?」

 また違うページをケルケル社長は自分の尻尾を振りながら開いた。

「幹部職員しか使う必要のない、逆に言うと幹部職員などしか使えない上級魔法なんですが」


 いくらなんでも、そんなのは使えないだろうけど、やるだけやってみるか。


「ええと、リルラ・ネフ・バズズ・ラマウォガ・ヘントーラゥ……」

 使い魔を出すのと比べると難易度の高い魔法だが、どうにか唱えながら、魔法陣の中で杖を動かす。

 その間にケルケル社長は部屋の窓を開けていた。


 すると、魔法陣が発光して、開いた窓から小柄なインプが入ってきた。

 自分の力で来たというより、強引に飛ばされたという感じだった。


「あの、すいません。俺っち、なんかしましたか……?」

 インプはきょとんとして、社長に聞いていた。

「いえ、ちょっと実験をしただけです。今日は休んでてください」


「へい……わかりやした……」

 インプは変な顔をしたまま、部屋を出ていった。


「ううむ、これはかなり特殊な魔法だというのに……。マジでフランツさん、すごいですよ! あなたは業界の星になれます!」


 手を握られて、ぶんぶん振られた。

「あ、ありがとうございます……」


 まさかこんな簡単に褒められるとは思ってなかった。


「卒業したら、ぜひとも我が社にお出でください! 絶対にひどい扱いはいたしませんから!」


 まさか、黒魔法が俺に向いていただなんて……。

 俺のリアルも社会人になってついに充実するんだろうか。


 ――と、寮の食事の時間を考えたら、そろそろ帰ったほうがいいかもしれない。ここは郊外だから寮まで距離もあるしな。帰路も一時間半の道のりだし。

「じゃあ、今日は俺はこれにて失礼しますね」


「帰るというと、フランツさんは学生寮でしょうか?」

「はい、そうです。実家は遠いので、寮暮らしです。また、卒業したらすぐに来ますから」

「はい! お待ちしていますからね!」


「「ありがとうございました!」」

 なぜか声がハモった。でも、社長はしゃべってはいない。


 サキュバスのセルリアが一緒にあいさつして、部屋を出ようとしていたのだ。 


「え、君も来るの!?」

「はい、わたくし、使い魔ですもの。一緒にまいりますわ」

「えっ……学生寮についてこられるとさすがに目立つんじゃ……」

 あと、異性の立ち入りはアウトなんじゃないかな……。


 ケルケル社長が「使い魔を隠す魔法は、疲れるので今はやめたほうがいいですね~。これは呼び出す時よりはるかに高度ですし」と無責任なことを言った。


「でも、俺、黒魔法の才能はあるんですよね? やれませんか?」

「ちょっと魔界の特殊な材料がいるんです。今、この会社にはないので。すいません、せいぜいカラスぐらいしか召喚できないと思っていました……」


 これは困ったことになったぞ。


 サキュバスと帰宅したら、退学にならないまでもどんな噂を立てられるかわかったものじゃないぞ……。


「では、今日はひとまず我が社の社員寮で泊まるというのはどうでしょうか?」

 ぱんと両手を合わせて、ケルケル社長が提案してくれた。


「まだ、社員じゃないですけど、いいんですか?」

「はい。内定は出したようなものですから」


 たしかに一度社員寮を見るのも悪くはないかもしれない。近いうちに学生寮も出ないといけないわけだし。


「ご主人様、わたくしはそれがいいと思いますわ」

 二票目も入ったか。これで多数決ではそっちに確定だ。

「じゃあ、そうしようかな」



 寮までの道のりは徒歩で二十分ほど王都のほうに戻ったところ、かなり城壁に近いところらしい。

 そんなに人に出会うわけではなかったけど、かなりじろじろ見られた。


 理由は明白だ。

「やけに皆さん、こちらをご覧になりますわね」

 サキュバスのセルリアさんの露出度が高すぎるのだ……。


 ぎりぎりで大事なところはすべて見えないように設計された服を着ているが、お尻はしっかり出てるし、こういうのって見えそうで見えないほうが注目を集めるものだからな。そりゃ、素っ裸でも見られると思うけど。


「はっきり言います。セルリアさんのせいです」

「ご主人様、使い魔なんですからセルリアとお呼びくださいませ」

「はい、セルリア……」


 相手の態度が礼儀正しいので、落ち着かない。オラオラ系の使い魔が来ても困るといえば、困るのだけど。


「これから、いろいろとご奉仕させていただきますわね」

「う、うん……。よろしく……」


 美少女サキュバスの「ご奉仕」という言葉の破壊力、ヤバい。


「あっ、住所の寮はここですわね」


 社員寮といっても、長屋とか宿みたいな建物じゃなくて、こぎれいな一軒家で、もし、お金を出したら、そう簡単に学生が住めるものではなかった。

「学生寮に連絡入れてないけど、まあ、一日ぐらいの無断外泊なら四年生だし許されるかな」


 寮の家賃はすでに支払いが済んでいるし、一日帰らなかったところで、法的には問題はないだろう。学生が王都の友達の家に泊まるとか、割とあることではあるし。


 単位も揃っているので、犯罪で捕まったりしないかぎり、卒業もできる。

 極論、ケルケル社長は卒業資格がなくても採用してくれるだろうから、卒業すらどうでもいいんだけど。


 じゃあ、来月から住む家に入ってみますか。


今日も可能であれば3回更新目指したいです!

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