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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
悪夢の祖が出てきちゃった編

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38 悪夢の祖の面倒を見る

 こうして、メアリと暮らすことになりました。


 メアリはずっと枕を抱き締めながら浮いてやってきた。


「枕が替わると全然眠れないんだよね。一応、いろんな枕を試してるんだけど、結局、低反発のこれに落ち着くんだよ」


「たしかにマイ枕を持ちながら旅する人っているから、そういうやつですよね」


「うん、そうそう」


「それと、その姿は普段着なんですか? 寝る時用なんですか?」

 メアリの服装はいわゆるベビードールなのだ。

 しかも、服が透けているタイプで、肌とかうっすらと見える。これ、もし、枕を抱くのをやめたら、下着が見えちゃうんじゃないだろうか。


 メアリはまだ子供っぽいから別にいいのかな。

 いや、むしろ、危ないのか……。

 変な趣味の男が寄ってくると困るな……。メアリが危険なのではなく、ムカついたメアリがじゃあ、王都滅ぼしますとか言い出すと困る。

 見た目年齢としてはぎりぎりで大人の仲間入りもできるってあたりだから、余計にヤバい。いっそ、十歳とか六歳とかなら、まだよかった。


「今の君の質問はどっちも正解。わらわはいつでも眠れるように生きてるから、常にこの格好なの」

「なるほど。できればその上から、もう一枚ぐらい着てもらえるとうれしいんですけど」

「ダメ。わらわは長年の経験則で、これが一番眠るのに最適と判断したの。そこは譲れない」


 俺の知ってる女子って、露出度高い子が多いんだよなあ。セルリアとか、下着の上からコート羽織って活動してるトトト先輩とか。


 まあ、偉大な魔族が王都で買い物するとか言い出さないから、そこは大丈夫だろう。


「ところで……君、いいにおいがするね」

「え、まだ体臭がきつくなる歳じゃないと思うんですが」

 まあまあショックな発言だ。これでも十代だぞ。もうすぐ十九歳になるので、十代もラストに近づいてるけど。


「いいにおいって言ったの。ちょっと、お兄ちゃんぽいかも」

 こんな危険な魔族にも家族っているんだな。どんな家庭だったのか謎だ。


「あの、せっかくですし、今日はメアリさんの歓迎会を兼ねて、王都の立派なお店で食べませんか?」

 いきなり王都行くフラグが立った!

 そっか、メアリよりはるかに露出度高いセルリアはメアリの格好に違和感を覚えないのか。


「セルリア! まずは家に慣れてもらうのがいいんじゃないかな……? うん、俺はそう思う……」

 もう、夕方に近い時間だし、露出度下げたほうが安全だと思う。

「ふうん、王都ね。それじゃ、行ってみようかな」

 行く流れになってしまった!


 王都に着いた頃にはほぼ日も暮れていた。


 セルリアの姿に関しては王都ではかなりみんな慣れてきたらしいのだが、メアリがいるせいで、また視線を浴びることになった。

「あれ、夜の商売なのかな?」「いや、寝る時の格好で出歩いてるんだろ」

 こんな声が聞こえてくる。どうにか変な誤解は受けずにすんでいるらしい。


 ちなみに翼のほうはそんなに気にされてなかった。王都はいろんな種族がいるからな。


「王都か。それなりににぎやかだねお、お兄ちゃ……いや、なんでもない」

 メアリは首を小さく横に振った。


「あとで寝具置いてる店も行ってみたいな。もう閉まってる時間かな」

 まあ、メアリのほうはとくに問題を感じてないから、いっか。


 まず、寝具店に行ったら、メアリはものすごい真剣な顔つきで、枕を一つずつチェックしていた。匠の目をしていた。


 店主から「有名な枕職人の娘さんでしょうか? あの眼力は素人のものではないです」と聞かれたぐらいだ。


「う~ん、惜しいんだけどな。これじゃないんだよな。まだ、マイ枕を超えるものにはなってないね」

 そのあと、メアリは店主と話をしていた。店主が「勉強になりました!」と頭を下げていた。『名状しがたき悪夢の祖』が枕に詳しいなんて、絶対世界中のどの本にも書いてないだろうな……。


 メアリが羊料理が食べたいと言ったので、羊とヤギで有名な店に連れていった。

「なかなかおいしいね。うん、合格、合格!」


 それなりにメアリの機嫌がよくなったので、よしとしようか。


 あとは帰宅して眠るだけだ。

 空いている部屋はまだあるし、生活にはそんなに問題はないだろう。


 メアリは「まあまあの部屋だね」と言って、こっちがメアリ用ということに設定した部屋にあっさり入っていった。


「ベッドは明日買ってこようと思うんですけど、それでいいですか?」

 今日は時間的に運んでもらうのが無理だった。

「ああ、いらない、いらない。枕があればそれでいいから」

 偉大な魔族の割に、そのあたりはあまりこだわらないらしい。


「思ったより、生活を脅かされることはないようですわね」

 セルリアもほっとした顔をしていた。ちなみに二人でお風呂に入っている時の会話だ。セルリアに背中を洗ってもらっている。


「うん。社員寮が広くてよかった。やっぱり独立した部屋だけで三部屋もあるのは助かるな」

「せっかくですし、あの方からいろいろ学べればと思っていますわ」


 そして、風呂から出て俺とセルリアはいつものように眠った。メアリはお風呂入ってないけど、寝てるみたいだし、起こさずにおくことにした。起こしたらすごく怒りそうだし。


 だが、夜中、ゆさゆさと誰かにゆすられた。


 目を開けると、メアリが横に立っていた。


「やっぱり寝つけない……。すぐ悪夢がやってくる……」

 これ、本人にとっては厄介な能力だな。


「それで、ちょっと試したいものがあるんだけど……」

「ああ、ベッド使いますか? 別にいいですよ」

「ううん、そっちじゃなくて」


 ぽんぽんとメアリは俺の膝を叩いた。


「フランツが膝枕やってみてよ」

次回、膝枕をします!

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