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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
アリエノール、王都に出店編

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301/337

301 特別区の説明

おかげさまで300話を超えました! 皆様の応援のおかげです! ありがとうございます!

コミカライズ3巻はGW明けの5月11日に発売します!

「ケルベロスの社長よ、そのガンバレ補助金というのについて詳しく話してほしい」

 アリエノールが空いている椅子を持ってきて座った。

 店側の人間の態度としては、ちょっとおかしいが、夜も遅い時間に来ているのでほかの客はもう帰っている。許容範囲だろう。


「はい、喜んで。ですが――」

 社長は俺のほうに視線を向けた。

「まずは王都の特別区について説明をしないといけませんね。フランツさんも学校で習ったそうですので、お手伝いいただけますか?」

 なんだか、学校の授業みたいになってきた。

 ケルケル社長は先生っぽさもあるのだ。


「わかりました。多分、説明できるかなと」

「では、適宜、解説をお願いしますね。さてと、王都というのは人口が非常に多いので、行政の一部をいくつかの特別区に分けているんです。なので、王都といっても実は複数の都市の集合体という側面もあるんです」

「そういえば、このあたりのエリアはあまり私が想像していた王都とは雰囲気が違うな」


「地方の人間が王都だと聞いて考えるのは、ほぼ確実に中心部だからな。俺も地元から魔法学校に入学するまではそこしか頭になかった」

 王都の中の王都、最も華やかな場所、それが王都の中心部だ。

 ここは行政的には都心部特別区というものに含まれる。いわゆる地方から来た人間が観光で訪れるのは、この都心部特別区と考えていい。


「俺が通っていた王都国際魔法学校の校舎は文教特別区という場所だった。名前のとおり、学校などが集中しているところだ」

「つまり、フランツは王都の民といっても、王都の中心にいたわけではないのだな。なんちゃって王都民だったか」

「余計なことを言うな。基本的に合ってるけど……」


 かつては何もない荒野が広がっていて、学校など広い面積の建物を作りやすかったことによるものらしい。その頃は王都の隅も隅という扱いだったようだ。王都の都市部が拡大した今では隅っこなんて印象まではないが。


 俺はカバンから紙を出して、紙を出した。

 すごくおおざっぱに王都の図を描く。

 そこに線を引いていく。


「だいたい、王都はこんなふうに分割されるんだ」

 ・王城周囲特別区

 ・都心部特別区

 ・副都心特別区

 ・文教特別区

 ・市場特別区

 ・北部特別区

 ・南部特別区

 ・ベッドタウン特別区

 ・王城拡張地域特別区


「――っていうことで、王都は九箇所の都市の集まりとも言える」

「フランツ、お前、こんなことまで知っていたのか。さすが我が好敵手だけのことはあるな」

 アリエノールは驚いているが、王都に住んでいた身としては一般常識の範囲だ。


「ちなみにアリエノールがお店の出店許可証を提出したのも、ベッドタウン特別区の役所のはずだぞ。だから建物の規模もちょっと小さかっただろ」


「マ、マジか!? モルコの森があるシズオグ郡の郡役所と大差ない大きさだったから、王都といえどもたいしたことはないなと思っていたのだが……。よくよく考えたら、こんな狭い面積で郡役所と同じサイズというのは、恐ろしいことだぞ……」


 アリエノールは変なところで屈辱を受けていた。

 俺も地方出身だからわからなくもないけど。そうなんだよ、王都と地方ってスケールがあまりにも違うんだ……。


「なお、ベッドタウン特別区の人口はシズオグ郡の三倍ぐらいはいると思う」

「えっ!? こんな狭い範囲で三倍? モルコの森の人口の三倍の間違いではないのか?」

 この反応、俺も魔法学校で人口のデータを見た時に似た反応を示した。王都に人口集中しすぎなんだよ……。


「あらあら、これならフランツさん一人で全部説明ができそうですね」

 社長におだてられた。

「いや、俺ができるのはあくまでも特別区の話だけですよ? 補助金については何も知らないですからね?」

 今のところ、俺がしゃべっているのは一般常識の範囲内だ。


「アリエノール、俺の今の説明は少しズルいところがあって、ベッドタウン特別区は人口だけなら王都の中でも相当多い。だからシズオグ郡より多くても不思議はないんだ」

「むっ。はなやかな王都の中心部はもっと人であふれているではないか。祭りかと思ったほどだぞ」

 その発想も地方民あるあるだ……。


「それは各地――王都内の周縁部も含めた各地から来てる人数が多いからだ。王都周囲特別区や都心部特別区は有名だけど住んでる人口は少ない。家賃もびっくりするほど高いしな……」

「ちょっとした事務所を借りたら銀貨毎月四十枚だなんてこともありますね~」


 社長の言葉に、アリエノールがふらふらともたついて、空いている椅子に座った。

「もはや額が悪徳ではないか……。私の実家のカーライル黒魔法商店なんて毎月タダだぞ……」

「いや、それは実家だからだろ! 王都の中心部に持ち家がある奴なんてほぼいないからな!」

 ネクログラント黒魔法社も郊外に社屋を構えている理由がよくわかる。


「だが、なんでいくつもの特別区に分けているのだ? 特別区同士が対立したりしたら面倒ではないか?」

「大昔は特別区なんて概念はなかったらしいけどさ、人口が増えてくると、全部を王都の中央役所で担当すると、業務量が多すぎて無理だってことになったんだ。で、細かいことに関しては特別区の役所で対応できるようにしてるわけ」


 王都はほかの地方と比べ物にならないほど、重要な案件もたくさん取り扱う場所だ。

 そこで、地元民のちょっとした事務手続きまで、同じ役所でやっていたらきりがないのだ。


「私の店舗を出す申請が細かいことというのが納得いかんが、まあ、ヒヨコにはフェニックスの考えはわからんとも言うしな。許してやろう」

 アリエノールには悪いが、飲食店の開業がどうのこうのっていうのは、絶対に些細な内容に属するぞ。


「今、アリエノールが覚えていればいいのは、ここがベッドタウン特別区に含まれるってことだ。ていうか、お前も住所の記入で書いてるはずなんだがな……」


「特別区の住所など書かなくても、通りの名前でだいたい届く。古参兵通りとドワーフ商人筋の交差するあたりの偉大な『レストラン アリエノール』と言えば、食材も来るのだ」

 たしかに住所をいきなり通りの名前とかからはじめる奴はいるよな……。


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[気になる点] 誤記:紙とペンを出した 俺はカバンから紙を出して、紙を出した。
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