255 魔法学校の同窓会
今回から新展開です! 章タイトルはネタバレ防止のため、もう少し進んでからつけます!
休日、俺は家でスーツを着た。
ちなみに二十歳にもなったので、少しだけ奮発してよいものを買った。
「うん、よくお似合いですわ♪」
セルリアは両手を合わせて、笑顔で褒めてくれる。
ただ、セルリアはなんでも褒めてくれるようなところがあるから、まだこれだけだと安心できないんだよな。
「メアリはどう思う?」
「わらわはナイトメアをあやすのに忙しいから」
たしかにメアリの膝の上には猫のナイトメアが丸くなっている。
メアリは俺に膝枕を要求する一方で、ナイトメアは膝に載せるんだな……。どことなく不公平な気がする。まあ、体のサイズが全然違うからしょうがないけど。
「別にナイトメアの世話をしながらでも、俺の格好ぐらい見られるだろ」
ちらっとメアリは俺を一瞥した。
「うん、まあ、いいんじゃないの? すっごく無難だよ」
「はっきり言って褒められてる気がしない……」
例として適切かわからないが。妻に子供が生まれたら、妻の愛が完全に子供に向いてしまったような感じを受ける。
「いやいや、無難なのはいいことじゃん。奇抜に見えてもよくないでしょ。悪目立ちしないんだったら正解だって」
「それは、そうか……」
「いいスーツというのはね、たいして自己主張をしないけど、よく見るととてもすっきりしてかっこよかったり、その人の体にフィットして、疲労感がずっと小さくなったりするものなんだよ。その用件をそれは満たしてると思うよ」
見事に言いくるめられてしまった気がする。
実年齢だけだと、メアリのほうが圧倒的に上だもんな。
「わかった。そしたら、これで行ってくるよ」
今日はセルリアもメアリも留守番だ。いや、俺がいない間にどこか行ってくれても何も問題はないが、とにかく俺は一人で行かないといけない。
厳密に言うと、セルリアを連れていくのは「使い魔だから」で通る気もするけど、セルリアを見せびらかしてるようにしか受け止められないだろう。そんなふうにセルリアをアイテムみたいに扱いたくない。
あと、ほかの参加者にとてつもなく妬まれそうだし……。美少女に嫉妬されるなら、まだうれしくもあるけど、男に嫉妬されるのなんて、損しかない。
というわけで、俺は母校の近くにあるお店に向かった。
店の前にはこんな看板が置いてある。
<王都国際魔法学校 第百二十四期生 同窓会>
そう、今日は同窓会なのだ。
中に入ると、隣のクラスにいた女子と、かなりいい会社に就職してうらやましがられていた、同じクラスだった男子が受付をしていた。
俺は招待状を出す。
「フランツです」
受付の両方から「あっ、あの黒魔法の会社に入ったっていう……」「サキュバスと愛欲の限りを尽くしているというフランツか」と似たような反応をされた。
否定したくはあるが、まあまあ正解な気もするので、対応に困る……。
「そこは、そ、それなりに……節度を守って……」
適当にお茶を濁して、中に入る。
節度を守ってるのかな? 我ながら自信がないけど、きっと昔の黒魔法使いはもっと無茶苦茶なこともしてただろう。うん、きっとそうだ。
パーティーは立食形式だ。俺の自宅での成人式もそんな感じだったが、もちろん人数はこの同窓会のほうがはるかに多いし、会場も広い。
俺が入っていくと、まず、声をかけてきてくれる子がいた。
「お久しぶり、フランツさん。元気にやってる? といっても、前に元気にやってるの見たばっかりだけど」
「リーザちゃん!」
寮母のリーザちゃんもいる。成人式以来だ。
リーザちゃんも赤いドレスを着ている。ドレスのせいか、色っぽく感じる。
「どうにか黒魔法にもなじんできたかな。比較対象が少ないからわかりづらい面はあるんだけどさ」
「フランツさんは真面目だから、入っちゃえばどこでもどうにかなるの。学校で勉強した白魔法がそこまで役に立たないのはちょっともったいないかな。まっ、魔法と関係ない職場に勤める人もいることを考えれば全然いっか」
「それがね、白魔法がかなり役立ってきてるんだ。白魔法を使えるとか、黒魔法業界の中では異端だからさ。まだ発展途上ではあるけど、白魔法を本格的に組み合わせていければって考えてる」
灰色魔法のことまでは話さないでいいか。リーザちゃんを混乱させちゃいそうだし。
「リーザちゃん、同窓会の出席状況はどんな感じ?」
「そうだね。まだ開会前だから、はっきりとはわからないんだけどね、就職がなかなか決まらなかったり、成績が悪くて苦労してた人ほど来てない印象があるかな」
リーザちゃんはわずかに顔を曇らせた。
あっ、話題として不適切だったか……。でも、そんな致命的というほどでもないのか。
ソントがいないか探してみたが、姿が見えない。あいつ、地元に帰ってるから、会場も遠いしな。
あいつ、地元ではどうしてるのかな。メシが食えてればいいんだが。
でも、トイレがある廊下のほうから、まさにソントがやってきた。
顔色も公園でうなだれていた時と比べると、ずっとよくなっている。
「ソント! 元気にしてたか!」
「フランツ! どうにか地元で働いてるよ」
しばらくソントと話したが、今は郵便の仕事をしているという。
白魔法を活かせる仕事ではないにしても、生活も安定しているようでよかった。
「実家があるおかげで、気分も落ち着いたよ。悩みもあまり溜め込まなくなったし」
「親との関係が悪くないなら、実家に戻るっていうのは、アリだな」
ひとまず懸案の一つが解決した。
自分のことじゃないにしても、気になるものは気になる。自分が関わってしまったからな。
やがて司会役の同級生が前に出てきた。
「皆さん、本日は楽しくやってください! ちなみに、同窓会でカップル成立、そこからの結婚というコースもよくあるそうですから、昔、好きだった人に想いを伝えられてない方は思い切って告白しちゃってください!」
司会のどこまで本気かわからない発言に笑いも飛ぶ。
俺はセルリアのことを案の定、いろんな奴からからかわれたり、本気でうらやまれたりしたが、おおむね楽しく過ごすことができた。
一人寂しく、隅にいるなんてこともなくてよかった。
いざとなったらリーザちゃんとしゃべれるけど……。
だが、同窓会も進むに連れて、多少しんどそうな奴もわかるようになってきた。
しかも、そいつが秀才としてクラスでも有名な奴だったりしたから、なおさらだ。




