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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
黒魔法の会社に就職しました編

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21 一か月で一番うれしい日

月間2位、週間5位ありがとうございます! これからもよろしくお願いいたします!

「私がファーフィスターニャさんを採用した理由もおわかりいただけましたよね」

「はい! 痛いほどによくわかりましたよ! まあ、あんな人を雇わない会社なんてあるわけないと思いま――――あれ?」


 自分で言ってて、俺はおかしなことに気づいた。

 社長の表情からして、社長もわかったらしい。


「たしか……ファーフィスターニャ先輩は全然採用されずに途方に暮れていたところをスカウトされたとか……」

 そうだ、先輩はちっとも内定がとれずに苦しんでいたのだ。

 おこがましいけど、まるで俺みたいに。


「そうなんですよ。困ったことに、あんな破格の逸材が面接態度がよくないなんて理由で落ちまくっていたなんて信じられませんよね~」


 社長はにこにこした表情のまま、「はっきり言って憤りを覚える前に失笑ものですよね」と言った。

 俺は社長が心の底で、何かに怒りを覚えているのを感じた。


「現在の企業の採用システムはたしかに合理的に作られていると思いますよ。明らかに問題のある人を面接ではじくことも必要なことです。企業も組織ですから、組織を乱す人材を採用するわけにはいきません。ですが――」


 社長は笑ったまま、使い魔であるゲルゲルの頭を撫でている。

 笑みが絶えない分、怖さがあるな……。


「――面接が不得意なだけの偉大な才能を取りこぼしまくるのは見ていて楽しいものじゃないんですよねえ。むしろ、そういう人を見つけ出すのが、むしろ採用担当者のお仕事でしょう? 面接の上手さだけで点数をつけて合否を決めるんだったら子供でもできますよ」


 た、たしかに!

 この人、実は白魔法における守護天使みたいなものじゃないだろうか。

 非の打ちどころもなく、完璧すぎるだろ!


「スペシャリストというのは、たいていどこか変なものです。人当たりのいいジェネラリストもそれはそれで立派ですし存在意義もあるのですが、スペシャリストが冷遇される社会は悲しいですね」


 スペシャリスト――まさにファーフィスターニャ先輩のことだ。


 幸い、先輩は社長に出会えたけど、すごい才能があるのに変人だったりコミュ力が異様になかったりして、社会に出るチャンス失って消えていった人なんて、これまでの歴史に無数にいたんだろうな……。


 それを考えると、本当に怖くなってくる。


「この会社は中小企業ですし、私も社長だと威張れるほどの実績もありませんが」

 社長は自分の瞳を楽しそうに指差した。

「人を見る目だけは自信がありますよ」


 うわあ……いろいろ卑怯だ……。

 これは惚れる……。こんなデキる社長に抱かれたい……。いや、厳密には黒魔法継承式で一回抱かれてるけど。


「もう、社長、社員数三千人とかにして、その理念で王都の業界全部覆ってくださいよ」


 そしたら、王都で働く人の笑顔も絶対増える。

 ケルケル社長はくちびるに手を当てて、思案していた。


「う~んと、それができればいいんですけど、組織が大きくなりすぎると、悪い影響が出ちゃうんですよね~。組織って生き物なんですよ。組織が大きくなると、組織のために人を使おうとしちゃうんです……」


「この組織というモンスターをいかに管理するかという問題は、ほかの魔法業界でも解決できてないワン。ひどいところではモンスターに魔法使いのほうが食い殺されてるワン」


 ボール追いかけてたこの使い魔もやっぱり賢いんだな。発言の偏差値が高めだ。


「たしかに、組織が大きくなりすぎると、不祥事を覆い隠そうとしたりしますよね。告発した奴をクビにしたりとか」


「そうなんですよね。私としては組織は人のために存在してないと無意味だと思ってますから、その価値観でやっていくには母体は小さいほうがいいということもありまして」

 極論、会社に働いてる人間が一人しかいないなら、自分のためになることだけを目的に動けるもんな。


 ていうか、新入社員が社長とこんな話をできるのも少人数の会社こそか。


「この会社が大きくなるように、俺も努力します」

 ちょっと生意気だったかもしれないけど、ここは正しく気持ちを伝えたかった。

 わずかに、ケルケル社長の顔が赤くなった。


「わ、私もフランツさんの決意に負けないように……頑張りますね……」

 もしかして、照れてるのかな。だったらうれしいけど。


「あ~、私も偉そうなこと言っちゃいましたね……。そもそも、少人数なのはなにより黒魔法業界が不人気なせいなんですし……。少数精鋭の方針で徹底してるっていうのは後付けみたいなものなとこありますし……あ~、恥ずかしい! 青臭いこと言っちゃいました!」


 社長は両手で頭を隠すしぐさをした。同世代よりちょっと幼いぐらいの女の子の容姿によく似合っていた。

 年齢のほうは五世紀らしいけど。


 ほんと、この会社に入ってよかった。

 残り物には幸運が眠っているとかいうことわざがあった気がするけど、まさにそれだ。


 とっとと、微妙な会社に内定が決まっていたら、この会社に出会うことも、名前を知ることもなかったかもしれない。


「でも、フランツさん、今日はちょうどいいところに来てくれましたね。お渡ししないといけないものがあったんです」

「渡すものですか?」

 なんだろう、自分専用のいい杖でもくれるんだろうか。


「どうせならセルリアちゃんにも来ていただいたほうがいいですね。呼んできていただけますか?」


 俺はほかの部屋で待っていたセルリアと社長室に戻ってきた。


 いったい、なんだろう。二人でもらうものって。

 セルリアもまだわかってないらしく、きょとんとしている。


「お二人とも、一か月よく働いてくださいました。今日は給料日なんです! はい、銀貨の入った給料袋です!」

 あ、そういうことか!


 ケルケル社長に渡された給料袋はずしりと重かった。

「約束どおり、フランツさんの初任給は銀貨四十枚です」

 相場の約二倍!


「セルリアちゃんには銀貨十五枚ですね」

 それ、実質、フランツ家の収入と一括で考えたら、銀貨五十五枚か。


 すごすぎて、勝ち組とかいった言葉で表現するのが馬鹿らしくなってきた。

「ボーナスってちなみに出るんですか?」

「はい。期待しててくださいね」


 一年も働いたら、親に払ってもらった魔法学校の学費も余裕で返せるな。まあ、セルリアの給料を俺が使う前提で考えたらおかしいから、俺だけの稼ぎで考えるけど。


 親孝行をお金で考えるのも変かもしれないが、将来的に確実に親孝行ができそうだ。


はじめて給与明細もらった日はたしかにテンションあがった記憶があります。次回に続きます!

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