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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
フランツ、面接官をやる編

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189 面接の希望者

 だが、その時、カランカランと社長室にあるベルが鳴った。

 来客時に鳴るように設定されている魔法によるものだ。


「おや、誰か来ましたね。今日は全然予定など入ってないんですが」

 もしや、この流れは面接希望者!? かわいい後輩とかできるかな!?


 俺がいると社長の邪魔になるし、社長室の外に一回出ることにした。

 ついでに来客の顔も見よう。

 かわいい後輩候補、来い。かわいい後輩候補! 「先輩」って一度呼ばれたい。


 だが、俺の望みは三分後には打ち砕かれた。

 頭髪が薄くなってきているおじさんが社長室に入っていくのを見たのだ。


 あれは絶対に新卒採用じゃないな。

 仮に採用希望者だとしても、中途採用だし、実力的にもかなりのものがある人だ。

 この会社では俺のほうが一年先輩ということになるだろうけど、いくらなんでも業界歴が違いすぎて、そんな先輩風吹かせられるわけもない。どんな勘違い野郎でもそんなことできないはずだ。


 あと、そもそもかわいさはない。ある意味、まだ俺のほうがかわいいぐらいだ。

 現実を見よう。そろそろ、仕事に行く時間だ。


 俺はごく普通にその日の仕事場所に向かって、インプを使役した。沼の補修作業などが最近多い。

 内容によっては、インプだけでなく、ワイトも呼び出した。ワイトは現場での仕事というより、インプの管理をお願いする。業務範囲が広いと俺だけでは目が届かないからな。


「もう、ワイトまで労働力として使えるだなんて、ご主人様はとことん偉大ですわ。何度でも惚れ直してしまいますわ!」

 業務中、セルリアが目をキラキラさせて俺を褒めてくれた。

 そうだ、こんなかわいい女の子が横にいてくれるんだから、かわいい後輩とか高望みすぎる。今のままで、もはや幸せの頂点だ。


「人間、謙虚な姿勢も大切だよな」

「黒魔法的には貪欲なぐらいでもいいですわよ」

 黒魔法の価値観だとそうなるか……。


 やがてインプだけでなく、ワイトも戻ってきた。俺よりずっと身長が高い。かなり高度な魔族だ。向こうも俺がまだ入社一年目だと話すと驚いていた。

「あちらの湿地帯の管理業務ですが、無事に終わりました。こちらが書類です」とワイトから帳簿を受け取った。

「ありがとう。今後とも、頼む。まだ若くて頼りない面もあると思うから、まずいことがあったら言ってくれ」

「いえ、サキュバスを使い魔にしているような方なら、そこは信頼していますよ」

 ワイトはにかっと笑ったが、見た目は人間的には少し不気味だ。

「あなたみたいな人がいるなら、十年は新しい社員もいらないんじゃないですかね」

 それはまぎれもない褒め言葉なんだろうけど――

 やっぱり俺に後輩なんて夢のまた夢だなと実感した。


 さて、会社に一度戻るか。



 会社の扉を開けると、すぐ真ん前になぜか社長が立っていた。


「フランツさん、すごいことが起こりましたよ!」

「すごいこと?」

 ケルケル社長の尻尾が動いているから、機嫌がいいのはわかる。

 よほど早く俺に告げたいんだろう。でなきゃ、こんなところで待機していないはずだ……。


「なんと、面接を受ける人が現れたんです!」


 実のところ、そんなに驚かなかった。

「それって朝のおじさんですよね」

 人が増えてうれしくないわけじゃないけど、俺の立場としてはほとんど先輩が増えるのと変わらない。

 コミュニケーション、上手くとらないとな。世代が違うから、そこのギャップを埋めないと。やたらと飲みに誘ってくる人だと、ちょっと厄介だな……。


「いえ、面接を受けるのは女性です」


「え、女性…………?」

 もしや、おじさんに見えたあの人は、おばさんだったのか? たまにおじさんかおばさんかわからない人っているからな……。


「ちなみに若い女性です」

 ということは、今日の朝来たおじさん(らしき人)ではない。


「あっ、フランツさん、少し表情が柔らかくなりましたね。やっぱり、そのあたりは男の人は正直ですね~」

 ケルケル社長にからかわれてしまった。ここに鏡はないけど、少なくともおじさんよりはいい。年齢的に自分より上の人が入ってくるとやりづらいのだ。


「ご主人様は女性は大好きですから。わたくしが胸を張って断言いたしますわ!」

 セルリア、そこはあまり断言しないでほしい。恥ずかしい……。


「てっきり、朝方のおじさんが中途採用の希望者だったのかと思ったんですが、全然、別枠の話なんですね。ついに『新卒採用ぐ~るぐるナビゲーション』に記事を載せた成果があったんですか」

「いえ、あのおじさんも関係があるんですよ」

 まだ話がいまいち見えない。


「あの方はいわゆる支援施設の職員さんですね。若者を一人採用してくれないかと相談に来たんです。まあ、魔法使いのお仕事の希望じゃなくて、事務員として雇ってくれないかというお話なんですが」


「支援施設……?」

 俺が少し不思議そうな顔をしていたとしたら、何の支援をする施設か社長の言葉だけでは判然としなかったからだ。

 それがケルケル社長にも伝わったらしかった。


「ああ、学習支援施設です。あのですね……ちょっと重い話になっちゃうかもしれませんが……ほら、学校でイジメに遭うことだってあるじゃないですか……。それで、学校に行けなくなった子に勉強を教える施設の人が朝のあの方なんです」

「なるほど……不登校ってやつですよね……」


 無論、イジメの問題が学校でよく起こっているとは聞いたことはある。が、自分は直接被害を受けることも、見ることもなかった。

 これは魔法学校という学校のシステムによるものだろう。

 魔法学校は授業の多くが選択制なのだ。

 だから、必然的に移動教室が多くて、クラスによる一体感みたいなものはない。


 逆に言えば、魔法を習ったりしない、普通の学校は大半の授業が同じクラスで行われるから、クラス内のコミュニケーションが大切になる。

 集団になると、友達だって作りやすいだろうけど、孤立したりイジメに遭うリスクも高くなる。


 ちなみに王国では学校を出ていないと絶対に就職できないというわけじゃない。最初から学校に通っていない人間だっていくらでもいる。

 とはいえ、雇用主も最低限の読み書きや計算ができる人材を求めることが一般化しているから、学校の卒業資格やそれに準じた試験の合格証を求める会社も増えていた。


マンガUP!さんにて、コミカライズ5話更新されました! 今回もかなり黒海苔がついてますw

そして、ニコニコ静画さんでも4話が更新されております!

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